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お願いごとをしてはいけない rw+4,307

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初めてここに書き込みます。作り話ではありません。

怖かった、というより、今でも頭の底に澱のように残っている出来事です。

母方の祖母は、ひどく信心深い人でした。

群馬の祖母の家へ遊びに行くと、よく私の手を引いて、裏山の裾にある小さな神社へ連れていきました。

祖母はそこを「金比羅さま」と呼んでいました。

丸太の鳥居に、破れた障子。濡れ縁もところどころ抜け落ちていて、子どもの目にも、きちんと管理されている神社には見えませんでした。

それでも祖母は、何度もそこへ通っていました。

七つか八つの頃だったと思います。

ある日、祖母が言いました。

「今日は特別だよ」

いつものように境内まで行くと、祖母は社殿の裏へ回りました。

そこには、人ひとりがやっと通れるほどの細い道がありました。

昼間なのに薄暗く、苔のついた岩の脇を抜け、登って、下って、また登る。子どもの私にはずいぶん長く感じました。

やがて突然、視界が開けました。

そこだけ、不思議なくらい明るかったのを覚えています。

山の斜面に沿って、円形の石段が何段も積まれていました。ローマのコロッセウムを半分にしたような形、と言えば近いでしょうか。

その段々に、小さな位牌のようなものがびっしり並んでいました。

笹の葉。短冊。折り紙の飾り。仏花。

そして、色とりどりの風車。

風が吹くたびに、それらが一斉に回りました。

私は妙に嬉しくなって、手を合わせようとしました。

その瞬間、祖母が鋭い声を出しました。

「ここは、お願いごとをしてはいけないよ」

驚いて見上げると、祖母は笑っていませんでした。

「ここには、とても強い神さまがいる。お願いすれば、きっと叶う。でもね」

少し間を置いて、祖母は言いました。

「必ず、見返りを取るんだよ」

それから、その場所へ連れていかれることはほとんどありませんでした。

もう一度だけ行った記憶があります。

そのときも石段はあり、風車は回っていました。

中学生になって間もなく、祖母は事故で亡くなりました。

突然のことでした。

何年かしてから、祖母が亡くなる前の家の事情を知りました。

母の兄、つまり私の叔父は、自動車整備の会社を辞めて独立していました。けれど不況で経営がかなり苦しくなっていたそうです。

ところが祖母が亡くなった頃を境に、叔父の工場は持ち直しました。

その話を聞いたとき、真っ先に思い出したのが、あの場所でした。

もちろん、偶然かもしれません。

祖母が何かを願ったという証拠もありません。

それでも、子どもの頃に聞いた言葉が、どうしても頭から離れませんでした。

――お願いすれば、きっと叶う。

――でも、必ず見返りを取る。

二十歳を過ぎた頃、久しぶりに群馬へ行く機会がありました。

私は一人で、あの神社へ向かいました。

道に迷いながらも、荒れた社殿まではたどり着けました。

そこは記憶とほとんど変わっていませんでした。

だから当然、その裏に道があると思っていました。

ありませんでした。

境内を回り込み、木の間を覗き、岩の位置まで確かめました。

けれど、人が通れるような道はどこにもありません。

草に埋もれた、とか、崩れた、とか、そういう感じでもありませんでした。

最初から、そこに道などなかったように見えました。

何周しても同じでした。

後日、母や叔父、祖父、いとこたちにも聞きました。

あの神社の裏に、円形の石段が並んだ場所はなかったか。

風車や短冊がたくさん供えられている場所を知らないか。

誰も知りませんでした。

「そんな場所、この辺にはないよ」

それ以来、私はあの山へ近づいていません。

今でも、山道を見ると、ときどき思い出します。

石段。

短冊。

一斉に回る風車。

祖母が、あの日だけ見せた真剣な顔。

私はもう、あの場所を探すつもりはありません。

ただ、ひとつだけ怖いことがあります。

この先、生きていれば、どうしても叶えてほしい願いを持つ日が来るかもしれない。

そのとき私は、本当にあの場所を探さずにいられるのか。

最近は、そればかり考えます。

あの場所がまだどこかにあることより、

いつか自分のほうから探してしまうかもしれないことのほうが、怖いのです。

[出典:272 本当にあった怖い名無し 2010/03/14(日) 00:49:05 ID:P5ay6fVK0]

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