短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

呪い返し~いじめ報復【ゆっくり朗読】7607-0106

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知人の娘さんが友人から聞いたと言う話。

珠美さんは地方の公立高校に通う普通の高校生だったらしい。

二年生に進級した春、新しくクラスメートとなった英子からイジメを受けるようになった。

それまで珠美さんは英子と話をした事もなく、イジメの原因にも当初心当たりはなかったそうだ。

しかし、英子がクラスの中心的存在であったため、ゴールデンウィークを過ぎた頃には珠美さんに話しかける女子はクラスにいなくなっていまう。

それでも、珠美さんは学校を一日も休む事なく体育祭、試験、修学旅行、そして文化祭を孤高(ここう)を守ったのだった。

珠美さんの毅然とした態度に、英子を中心とするクラスの女子達はイジメをしつように、そしてエスカレートしていったそうだ。

かなり、むごい行為もあったそうだが十一月のある日、担任の中年女性教師の授業の事である。

クラスの男子定雄が突然立ち上がり、クラスで起こっているイジメ問題について話をしたいと言い出したそうだ。

教師は今は授業中だからと言い、席に付くように言うが、定雄は今までイジメを見てみぬ振りをしてきた担任教師を逆になじった。

定雄に同調し野次を飛ばす男子達。

互いに顔を見合わせおびえる女子達。

生徒の反抗にろうばいし、ヒステリックな怒りを男子にぶつける教師。

結局、事態を収拾したのは珠美さんであった。

珠美さんはこんな事を言ったそうだ。

「このクラスにイジメ問題はない。何より私がイジメを受けていると思って欲しくはない。大人の世界でも困った人達は嫌がらせやストーカーを行う。偉い人達が動かす国際社会でもそんな事はあるではないか。
日本が隣国からイジメを受けていると言うだろうか?いや、困った隣人から嫌がらせや、ストーカー行為を受けていると言うだろう。
私はクラスのみんなと仲良くしなければならないと言う事は知っている。しかし、困ったお友達の相手をしてまで人としての誇りをなくしたくはない」

珠美さんの凛とした姿に、クラスの男子達のみならず、意に反して英子のイジメに同調していた女子達の気持ちを変えた。

未成熟な集団ほど人間関係のパワーバランスはもろいものである。その時をきっかけに珠美さんと英子の立場は逆転したそうだ。

英子はそれから三日後より登校しなくなる。

この後、多くの事があったのだがまとめて話すと

・英子と彼女の家庭は有能な人権派弁護士をやとって、人権侵害で珠美さんを訴えると言い出す。

・慰謝料はきっちりと刈り取り、払えなければ英子の家庭が経営する店で働かせる……

そこまで追い詰められ、小さな工務店を経営する珠美さんの父親は英子とその家庭に屈する事にした。

珠美さんはクラスみんなの前で英子に謝罪し、学校を退学する事を約束したのだった。

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さて、ここから話が始まる。

退校の準備を進める珠美さん。相変わらず不登校を続ける英子。

師走に入り、そんな中、まず担任の女教師が気の病で倒れた。

次に英子の側近で、英子の不登校以来クラスの中で一人浮いていた民子が、原因不明の発疹により病欠がちになったそうだ。

奇妙な事に英子とその母親も原因不明の発疹に犯されていると言う。

クリスマス前になると英子のほうが退学してしまった。

結局、英子がいなくなり問題は終結。

珠美さんはそのまま学校に残り卒業、そして地元の国立大学に進学した。

何があったのか?

珠美さんの父親が裁判と言う男の戦いをしている時、珠美さんの母親もまた女の戦いをしていたそうだ。

寺で生まれ育った母親は、古い十円玉の裏側、つまり10と製造年月日が刻まれている面の刻印をサンドペーパーでけずり取った。

次に麻布に水で薄めた酢を浸し、それで十円玉をていねいにみがき上げた。(※日本の硬貨に手を加える事は違法です。)

出来上がった十円玉と小さな釘をお守り袋に入れると、珠美さんに持たせ、十円玉の刻印を落とした面を常に前に向くようにして首に掛けていろと言う。

そして、家に帰った時に十円玉と釘を取り出し、キレイにみがくようにと言ったそうだ。

ただそれだけ……

後に母親が珠美さんに説明した事をまとめると

英子による嫌がらせを受けるきっかけに思い当たりがないと言う事と、クラスの人間関係について、珠美さんから色々聞いた後に、母親は原因が色恋沙汰ではないかと推測した。

実際に、英子は定雄に好意を持っており、定雄は珠美さんに好意を持っていたのだった。

普通に生活していれば珠美さんも定雄の思いに気づいたのだろうが……

その頃は英子達からの嫌がらせの日々、珠美さんはクラスの中で生きるだけで精一杯であったのだそうだ。

ともかく、色恋沙汰が原因とは言え開き直ってここまでする英子の事だから【呪い】も仕掛けてくるだろう……

しかも、珠美さんの発言を逆手に取って、人権派弁護士を持ち出す手法より英子は海外の【呪い】を繰り出すと母親は考えた。

海外の【呪い】には詳しくはなく、対処法も分からなかった母親は【呪い】をそのまま返す事を思いついたのだった。

結果、呪いの中心であった英子とその母親に呪いが返ったのみならず、呪いに協力した民子、そして呪いには無関係であったが、担任と言う立場を忘れ珠美さんに逆恨みをしてしまった教師にも災いが起きたのであった。

つまり、みがいた十円玉は呪いを返す鏡で、釘は呪いを増幅する役割を果たしていたのだそうだ。

さてこの後、珠美さんと定雄が結ばれて話が終わればスカッとした話となる。

しかし、実際は珠美さんと定雄は結ばれる事はなく別々の大学に進学したのだそうだ……

(了)

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