これから書く話は非常に長いです。
138 :1:2011/05/26(木) 19:10:22.12 ID:eyYw6u020
そして、長いので確実に連投規制に引っかかり投稿に時間がかかります、更にオチも凄くあやふやなままです。それでもいいというかただけお読みください。
1年前に仲間内でとある山へキャンプへ行った時の話をしようと思う。
大学が夏休みに入る少し前、高校の頃からの仲間の江崎から電話があった。
江崎とは進学先が別々になって実際に会う機会も減っていたが、時々こうやって電話が来ている。
その時の話は、高校の頃のいつもの仲間で集まって久々に何かしないか?という内容だった。
夏休みに入ってすぐ、俺達は江崎のアパートに集合した。
面子は俺、江崎、それと小林と青山の4人、高校の頃特に仲の良かったメンバーだ。
最初は近況などを話していたが、そのうち本題になり、さて、何をしようかということになった。
が、集まっても何も安が浮かばない…
そうこうしていると、話に加わらず江崎のパソコンで何かをしていた青山がおもむろに「グーグルマップで適当に見つけた場所にキャンプにいかね?」と言い出した。
俺と江崎と小林が「はぁ?」と言うと、青山は結構大真面目に「いやいや、おもしろそうだろ?目的地もランダムで全く知らない場所にキャンプ行くんだぜ」と得意げだ。
でもまあ、たしかに行き当たりばったりは面白そうではあるかもしれない。
俺がそう思っていると、小林もそう思ったのか
「よし、じゃあ“キャンプ場”で検索してみようぜ」と言ってきた。
すると青山が
「それじゃつまんなくね?いっそそういうキャンプ場とかじゃなくてほんとにひとけの無い山奥とかそういう場所にしない?」と言い出した。
たしかにおもしろそうだ。俺達はその時そう思った。
そして、適当に山っぽい場所をあちこち探し回っていると、周囲に人家もなく、ただ林道らしき道が1本通っているだけの場所を中国地方のある場所に見つけた。
拡大してみると、川べりで少し開けていてキャンプにも最適そうに見える。
俺達は東日本出身だ、西日本方面のことは殆ど知らないし、地理的にも立地的にも俺達の理想に合致しているように見えた。
キャンプ地はその場所に決定した。
当日の朝。
青山がバイトして買ったというボロい軽に乗り込み、俺達は出発した。
そして、その日の夕方には目的地近くに到着した。
その日は近場にあったスーパー銭湯のような場所で食事と風呂を済ませ、そのまま近場の公園のベンチで寝た。
翌日。
近場のコンビニやスーパーで3日分の水や食料を買出しし、俺達は目的地へと向かった。
携帯で地図を確認しながら山道をどんどん進んでいくと、とうとう携帯の電波が届かなくなってしまった。
が、今まで通ってきた道が検索した時に見つけた林道だったので、そのまま道なりに進むとすんなりと目的地の開けた場所に到着できた。
現地についてみると、その場所はグーグルマップの航空写真で見るよりもずっといい場所だった。
すぐ横に川が流れていて水も綺麗だ、それに川沿いの開けた場所はかなり広くジメジメ感もまるでない。
俺達はすぐにキャンプの準備を始めた。
車から荷物を運び出し、テントを建て石を並べてかまどを作り、薪を集めたり雨対策にテントの回りに溝を掘ったりしたのだが、早めに到着したこともあり午後2時過ぎ頃には全ての作業が終ってしまった。
暫らく川に石を投げて水切りなどをしながらぐずぐずしていると、江崎が「暇だしちょっと回りを探索してみないか?」と言ってきた。
暇だった俺達は特に反対意見もなくそうする事にした。
川が狭くなっているところから対岸に渡り、来たときから見えていた対岸の砂利道を上へ上へと進んでいった。
暫らく進んでいると、横道がありその先の森が開けて白いコンクリート製の壁の小さな建物が見えてきた。
その建物は1階建ての長方形で、山の中にぽつんとあるにしてはやたら小奇麗なのだが、一見してどういう目的の建物なのかさっぱり解らない。
窓も少なく、その窓も全てブラインドが閉じていて中をうかがい知る事もできなかった。
何かの管理事務所のようにも見えるが、そのわりには他に建物らしきものも周囲に無い。
俺が
「なんだこれ?家じゃないし、何?」といったが、誰も何なのかさっぱり解らず答えは帰ってこない。
とりあえず俺達はそのまま周囲を探索してみる事にした。
探索してみてわかったのだが、この建物はどうも少なくとも今は使われている痕跡が無いらしいことだけは解った。
理由は簡単で、表の方は砂利が敷いてあるので目立たなかったが、裏の方は雑草が生い茂り明らかに何年も放置されているのが解ったからだった。
すると、表のほうにいた江崎が「おーい、こっち来てみろ」と俺達を呼んだ。
江崎の所に行ってみると、なんと江崎は建物のドアを開けていた。
青山「ちょ、おまえ、流石にそれはまずくないか?」
小林「鍵とかかかってなかったのか?」
と言うと、江崎は楽しそうに「鍵掛かってなかったぞ、ドアノブ回したら普通に開いたし」と悪びれる様子もなく返してきた。
そして俺も
「でもこの建物、明らかに廃墟じゃね?鍵は元から開いているんだし
ちょっと入るくらいならいいだろ、なんの建物か興味あるだろ?」
俺がそういうと、江崎も同意してきたし、小林と青山も本気で止める様子はなかったのか「ちょっとくらいならいいか」と返してきた。
俺達は中に入ってみる事にした。
中に入ると、室内には調度品のようなものや家具のようなものは何もなかった。
長い事放置されているようで、部屋の中は非常に埃っぽい。
10畳分くらいの長方形の部屋があるだけなのだが、変わっているのは、部屋の真ん中に下へと続く階段があることだ。
4人とも黙り込んでしまった。
この状況、流れ的に今更下に行かないわけにはいかない。
問題は誰がそれを言い出すかなのだが、こんな怪しい建物のしかも地下へと続く階段、あからさまに怪しすぎて誰もその一言をいえないでいた。
暫らくの沈黙の後、最初に小林が口を開いた。
「下真っ暗だよな?懐中電灯ないし、装備整えて明日で良いんじゃないか?」
最もな意見だった。そしてこの提案をした小林に俺は心のそこで感謝した。
しかし、青山が唐突に「明かりなら携帯画面で十分じゃね?」
しかも江崎もそれに同意のようだ。
俺と小林はここで断れば確実に2人にヘタレとからかわれるのが目に見えていた。
ぶっちゃけ怖かったが、4人で下へと降りていくことになった。
階段はそんなに長くなかった。
下に下りると、真っ暗でよくは解らないが、どうやら6畳くらいの正方形の部屋のようだ。
上と違うのは、なぜか部屋の真ん中にユニットバスのバスタブが置いてある。
部屋の中にはそれ以外何も無いようだ。
バスタブの中を携帯の明かりで照らして見ると、中で何かを燃やしたような痕跡があったが、燃やしたものは取り出したのか黒い煤があるだけで他には変わったものは何もなかった。
俺達は拍子抜けしてしまい、なんだこれだけか、とキャンプしている場所に戻る事にした。
階段を上る時に、俺はなんと説明したら良いのか一瞬人の気配というか、後ろから誰かが顔を近づけると気配でわかるよな?あんな感覚を感じた。
驚いて後ろを振り向いたのだが、最後列の俺の後ろに誰かいるわけでもなく、上の3人が「どうした?」と声をかけてきたが、俺はなんでもない、気のせいだとそのまま階段を登った。
キャンプ地に戻ると、結構時間が過ぎていてもう夕方の5時近くになっていた。
俺達は夕飯の準備をして飯を食った。
その晩。
俺達4人は焚き火を囲んであれやこれやととりとめのない話をしていたのだが、ふと気付くと小林がやたらと背後を気にして何度も後ろを振り返っていることに気が付いた。
俺が「小林、どうした?なんかいるのか?」と聞くと、小林は「あ、いやそれが…いやなんでもない」というと黙ってしまった。
なんか変な反応だ。
他の2人も気になったのか、まず江崎が「おい小林、なんか気になることあるならいえよ、余計に気になるだろ」というと、青山も「変に隠すと逆にこえーよ」
と冗談半分に言った。
すると小林が
「ほんとなんでも無いから、ただちょっとなんか視線を感じるんだよ、
でもどう考えても気のせいだろ?俺達以外に人の気配無いし」と言い出した。
たしかに変な話だ、でも俺もさっきのことを思い出して少し気になり始めた。
江崎と青山も気になったのか全員で懐中電灯を持って周囲を確認する事にした。
懐中電灯であちこちを照らしてみたのだが、やはり人影も動物らしき姿も何も見えない。
すると青山がうおっ!と声をあげて俺の方へ振り向いた。
そして、俺に「今お前俺のすぐ後ろにいた?」と変なことを聞いてきた。
もちろん俺はそんな事はしていない、青山には近付いてないことを伝えて青山に事情を聞くと、昼間俺が感じたのと同じように、自分のすぐ後ろに人の顔があるような、そんな感覚を感じたらしい。
何かおかしい。
俺がそう思っていると、1人で川の方を見ていた江崎が「おい、なんかおかしいぞ、ここなんかいるぞ」と、俺たちのほうにやってきた。
俺は「なんかってなんだよ、はっきりいえよ」と言うと、江崎はなんだかわからないのだという、なんだか解らないが、とにかく視線と気配をさっきからずっと感じるんだという。
全く要領を得ない。
埒があかないと思った俺は、とりあえずテントに入ろうと3人に促しテントに入る事にした。
テントに入り、少し落ち着いたので俺は昼間の事を3人に話した。
すると江崎も小林も同じ感覚を感じたらしい。
要するに4人とも背後に誰かいるような、そんな気配を感じていたのだった。
暫らくの沈黙のあと、青山が
「ここなんかやばくないか?車近いし、ひとまず荷物は昼間になったら取りに戻るとして、車でふもとまで下りないか?」
江崎も「その方がいいかもな…あの建物なんかヤバイ場所だったのかも…」
と、普段は結構強気な江崎とは思えない口調で言い出した。
小林もやはり江崎や青山と同意見のようで、どうせ荷物が盗まれるような事は無いだろうし、ひとまず車まで行く事にしようと決まった。
その時、外で風が吹いて木々がザワザワと鳴り出した。
そして、そのザワザワという音に混じって何かが聞こえてきた。
耳をすますと、良く聞き取れないが風に乗って人の声のようなものが聞こえてきた。
何か歌ってるような、そんな声だった。
本格的になんかヤバイ。俺はその時そう感じた。俺達は意を決してテントの外に出た。
そして、早足に車へと向かった。
その時、小林が車の方向に何かを見たらしい、らしいというのは、俺達には何も見えなかったからだ。
小林は突然立ち止まりガタガタ震えながら進行方向を指差すと
「うわああああああああああああああああああああああ」
と叫びながら車とは逆方向、川の方へと走って行ってしまった。
俺達は「おい小林待てって、ちょっと止まれ!」と言いながら小林の後を追った。
小林はそのまま川を越えると、さっきの砂利道を建物とは反対方向へと走って行く。
とにかくわけも解らず小林を追いかけた。
暫らく走っていると、小林は一瞬立ち止まると90度方向をかえ、道ではない場所を沢の方へと下りて行ってしまった。
俺たち3人もその後を追う。
暫らく懐中電灯を照らしながら道では無い場所を走っていると、俺は脚を踏み外し窪みの様になっている場所に落ちてしまった。
背中を地面にぶつけて暫少しの間呼吸ができず、うめきながら起き上がると、遠くに小林を呼ぶ江崎と青山の声がする、どうやら俺が落ちた事に気付いておらずそのまま進んでしまっているようだ。
俺は手足を動かしてみた。
怪我はしていないようで、背中をぶつけた痛み以外に痛い場所は無い。
その間に江崎と青山の声も聞こえなくなってしまった。
とにかく上に上がらないと、そう思った俺が窪みを登ると、また背後に気配を感じた。
恐る恐る後ろを振り向き懐中電灯を照らした。
何もいない…
なんとなくホッとした、よたよたと歩きながらとりあえず小林達が駆け下りて行った沢の方へと歩き出した。
沢に下りると皆を探さないとと思い
「おーい、江崎、小林、青山いるかーー!」と大声で叫んでみた。
が、反応はない。
するとまた背後に気配を感じる…
そして、今度はそれだけではなかった。
風の乗って、さっきキャンプ地で聞いたのと同じ、何かが歌っているような声がまた聞こえてきた。
そして、まだ内容はよく解らないが、さっよりも近くはっきりと聞こえるようになってきている。
暑さとは違ういやな汗が全身に噴出してきた。
歌声は段々と近付いてくる、恐怖心を振り払い背後を振り向くと暗闇を懐中電灯で照らした。
しかし、やはりなにもいない…
歌声は更に鮮明に聞こえるようになり、ほんの20メートルか30メートル先にまで近付いてきたのだが、何故かその時動けなかった。
動けずにいると、歌声はもうすぐ側までやってきた、なぜか未だにどんな歌詞で歌っているのかさっぱりわからないが、かろうじてどうやら何かの民謡のようだということだけ解った。
混乱してあたりをキョロキョロしながら懐中電灯で照らしまくっていると、周囲に複数の気配を感じた。
だが、気配は感じるのだがどこにも姿が見えない、姿が見えないのに、明らかにそこに「何かがいる」のだけは解る。
意味が解らない、俺は恐怖心と暗闇に一人というこの状況で完全に冷静さを失っていた。
その時、俺のすぐ後ろで誰かが何かを囁いた。
囁く時の息の生暖かさすら感じた。
今まで感じた事の無いような恐怖心を感じながら後ろを振り向むき懐中電灯を照らした。
が、やはりそこには何もいない…
何もいないのだが、はっきりと目と鼻の先に「何か」の息遣いを感じた。
もう限界だった。
俺は歌声のする方向とは逆方向に全力で逃げ出した。
木の枝や茨のようなものが体に当たり、あちこちに小さな傷ができる、それでも俺は走るのをやめなかった、そして、どれくらい走っただろうか、結構広めの舗装された道路に出た。
道路に出る頃にはもう歌声も気配もしなくなっていた。
俺は少し安心して、もしかしたらと携帯画面を見てみたが、まだ圏外のようだ、しかたなくその道をあても無く歩き始めた。
広い道なので歩いていればいずれどこかにでるだろうと思ったからだ。
暫らく歩いていると、後ろの方から車の走る音が聞こえてきた。
「助かった!」
そう思って待っていると、遠くから車のヘッドライトが見え、だんだんとこちらへ近いづいてくる。
目立つように少し道路の真ん中に寄ると、俺はありったけの声で「助けてくださーい!」と叫び続けた。
車がもうすぐ近くまで来るという頃、異変が起きた。
誰かが俺の両足首を掴んでいる…
俺はかなり強くつかまれ、足が痛いうえに身動きが全くできなくなってしまった。
それでも大声で叫び続けた、そうしなければ、この車を逃したら…
そう思うとそちらの方が恐ろしかったからだ。
とうとう車は目の前まで来た。
そして、急ブレーキを踏んで俺のすぐ前で停車した。
車はいかにも高そうな外車で、中から怒鳴り声を上げながらあからさまにそっち系のおっさんが出てきた。
普通ならこういう人達とは係わり合いになりたくない。だが、今は非常時だ、「この後はどうなってもいい」俺は心底そんな気持ちでおっさんに車に乗せてほしいと頼むつもりだった。
おっさんはドアを開けながら怒鳴り声を上げていたのだが、急に俺の背後を見ながら顔を引きつらせ、大急ぎでドアを閉めるとそのまま走り去ってしまった。
…えっ
俺は呆然とした。
まだ足はつかまれたままだ。
背後になにかいる、それだけはおっさんの反応でわかったのだが、恐ろしくて後ろを振り向けない…
すると、背後から例の歌声が聞こえてきた、そしてそれだけではなく、何か強烈な腐臭も漂ってくる。
俺はありったけの力で足を動かそうとしたが、動かない。
そして、体を捻らせた拍子に体制を崩しその場に倒れこんでしまった。
それでも、恐ろしくて背後を見ることができない。
しかし、幸運な事に転んだ勢いで足を掴んでいる手が離れた。
そのまま這うようにその場を離れると、起き上がり全力で走り出した。
この時、俺は背後を振り向き何かを見た、それは間違いない。
そしてそれに今まで感じた事の無いような恐怖心を感じたのも間違いが無いのだが、今思い返してもなぜか何を見たのかが思い出せない、これを読んでいる人はおかしいと思うのだろうが、そうとしか言いようが無い。
「何か恐ろしいものを見た」という記憶しかなかった。
たぶん1キロ以上は走ったんじゃないかと思う。
ポケットに入れていた携帯が突然鳴った、どうやら携帯の繋がるところまで下りてきていたようだ。
電話に出るとそれは江崎だった。
電話越しに青山の声もする。
江崎が「おい、大丈夫か?今どこにいる?」と、かなり心配しているようだ。
俺はとりあえず無事な事と広い道にでている事を伝えると「小林はどうなった?無事なのか?」と聞いた。
江崎によると、小林も無事で3人で一緒に資材置き場の駐車場のような場所にいるらしい。
話を聞いているとどうも俺と同じ道を下ってきていたようで、電話をしながら暫らく歩いていると3人が見えてきた。
キャンプ地を逃げ出してからかなり時間が経っていたのか、空が白み始めている。
3人に合流すると、小林は駐車場の縁石に座りぼーっとしている。
とりあえず俺は皆にはぐれた後の事を説明した。
すると小林が「そう、それだ、俺が見たのも!」と言ってきた。
姿形は全く思い出せない、でもそこに「何か恐ろしいもの」がいたのだけははっきりと覚えているんだという。
江崎と青山にそういうのを見たか聞いてみたが、2人はそういうのは見ていないという。
ただ、小林を追っている最中にずっと背後に気配と視線は感じていたらしい。
話しているうちに日が昇り周囲が明るくなり始めた。
俺達4人は携帯の地図で場所を確認すると、どうやらキャンプ地から大きく回りこんで
別の峠のほうに来ているようだが、歩いて戻れる範囲ではあるようだ。
本当は戻りたく無いのだが、荷物も車もそこにある、戻らないわけにはいかない。
俺達は3時間かけてキャンプしていた場所まで戻った。
戻ってみると、一見何も変化がなく、荷物もテントも車も来た時のままだ。
しかし根拠は無いが、4人とも「またあれが来るんじゃないか」と内心ビクビクだった。
中の荷物をまとめようと俺がテントに入ろうとしたとき、中からあの強烈な腐臭がしてきた。
俺は「うわっ」と声をあげてしりもちをついた。
別のところで荷物をまとめていた江崎、小林、青山が何事かと寄ってきた。
俺が「ヤバイ、なんかテントの中からあの臭いがする…」というと、真っ青な顔で小林が「マジか…」と後ずさりした。
江崎が「…とりあえず外から中を探ってみるしかなくね?」と動揺気味に言ってきたので、外から棒でつついたり石を投げたりして内部の反応を見てみた。
しかし、何の反応も無いし気配も無い。
青山が恐る恐るテントの窓を覗き込むと「見える範囲には何もいないっぽい…」と言ってきた。
俺は意を決してテントの入り口をあけ中を覗き込んだ。
中には俺達の荷物がそのままだ、ぱっと見た限りでは臭い以外におかしなところは何も無い。
ただ、よく見るとテントの中央辺りが黒く煤けている、まるで何かそこでボヤでも起きたような色で特にその辺りの腐臭が酷い。
俺達はなるべく臭いをかがないようにしながら荷物を全て外に出すと、テントを川で念入りに洗い臭いを完全に洗い落とし、荷物をまとめると早々にその場を逃げ出した。
帰り際、ふもとの小さな町でそれとなく色々聞き込みなどもしてみたのだが、結局あれが何なのかは解らなかった。
というより、山そのものに「いわくも何も無かった」といったほうがいい状態だった。
その後、俺達には特に何も起きておらず、結局あの晩に起きた事の真相は今現在まで何もわかっていない。
ただ、今でも俺は少し暗闇が怖い。常にではないが、たまに真っ暗の闇の中からあの何か気配や歌声が聞こえてくるんじゃないかと不安になるときがある。
以上、これが1年前の出来事の全てです。
(了)