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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間 n+2026

個包装 nc+

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もうずいぶん前の話だ。

当時、俺は相方と二人で、とあるジャンルの二次創作をやっていた。かなりのマイナーカプで、イベントに出るサークルも常に数えるほど。顔と名前は自然と覚えてしまう規模だった。

Aという女性がいた。イベントではよく隣になり、自然と会話も交わす関係だった。書く内容は正反対で、俺はラブコメ寄り、彼女はかなり尖った特殊性癖もの。それでも同じカプ者というだけで、妙な連帯感はあったと思う。

あるイベントで、Aはサークル参加をしていなかった。代わりに、後日「差し入れです」と個包装のクッキー詰め合わせが届いた。市販品で、見た目はごく普通だった。

イベントから二日後、そのクッキーを食べた直後、俺は倒れた。呼吸ができず、意識が薄れ、相方が救急車を呼んだ。

原因はアレルギーだった。

後から分かったことだが、Aは俺の書いていた日記から、俺が蕎麦アレルギーであることを特定していた。市販品に、注射器で蕎麦由来の成分を混入させたらしい。

後日、A本人から連絡が来た。

「あんたの書くカプがおかしいのに、私より受け入れられてるのが気に食わなかった」

淡々と、そう言われた。

さらにAは自分の日記にこう書いた。

「差し入れが嫌いなものだったみたい。悪いことした。嫌いなら言ってくれればよかったのに」

その文章を根拠に、Aの信者と呼ばれる人間たちからも攻撃された。救急搬送された事実より、「Aを悪者にするな」という感情が優先されていた。

相方が冷静だった。俺が倒れた状況、成分表示を確認していたこと、差し入れの袋を確保していたこと。そのおかげで、後の手続きはスムーズだった。

結果、Aと、暴行に及んだ信者二人をまとめて訴えた。三人とも職を失ったと聞いた。Aは他人の命を預かる仕事をしていた人間だった。

それでも後味は最悪だった。

小さなコミュニティだった分、噂はすぐ広まった。表では同情され、裏では「自分から食べたくせに」「訴えて失職させるのはやりすぎ」と囁かれていた。

相方と話し合い、そのジャンルは完全にやめた。サイトを畳み、名前を変え、別ジャンルで、別の地方イベントにだけ出るようになった。

今でも差し入れは受け取る。

ただし、二度と口にはしない。

何が入っているかではない。

誰が渡してきたかが、もう信用できない。

(了)

[出典:855 :恐い:2015/02/23(月) 13:37:46.53 ID:epde8dV+0.net]

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