短編 洒落にならない怖い話

ハナスナ【ゆっくり朗読】

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これは私の実体験です。

178 :あなたのうしろに名無しさんが……:03/08/06 21:21
今まで怖くて誰にも話せませんでしたが、ようやく踏ん切りがついたので話そうと思います。

小学5年生の冬のこと。
私は当時、生徒会の副会長を務めていました。
しかし所詮は小学生の生徒会。言ってみれば先生の雑用係のようなものです。
その日は雨が降っていました。

じゃんけんに負けた私は、一人生徒会室で雑用をしていました。
単調な作業にうんざりしながら、気がつくと時刻は午後6時。
生徒会担当の先生が教室に入ってきて、もう遅いから今日はこの辺で帰るようにと言われました。

雑用から解放されていざ帰ろうとすると、季節柄か辺りはもう真っ暗です。
おまけに朝から雨が降っていて、寒いこと寒いこと。
早く帰ろうと、足早に家路を目指しました。

学校から家までは一直線でおよそ1キロほど。
そのちょうど真ん中辺りには大きな公園があって、その敷地内に小さな神社があります。
神社には社務所もありますが、不思議と人の姿を見たことはありません。
また、公園も広いのに、何故だかウチの小学校の子供は、この公園では遊びませんでした。

特に因縁話とか、奇妙な事件とかがあったわけではありません。でも何故か遊ばないのです。

帰りがけにその神社を見て、私はふと敷地内に足を踏み入れました。

何故かはよく覚えていません。ただ、なんとなく肝試しのようで少し興奮していました。
神社は薄暗くて、薄気味悪い雰囲気に包まれていました。
私は神社をぐるっと一周して帰ろうと思い、裏手に回りました。

すると、角を曲がってすぐそこに、人が立っていたんです。
黒っぽいコートを着て、傘も差さずにその人は立っていました。薄暗かったので顔はよく見えませんでした。

びっくりして立ち止まると、その男の足元に、猫が内臓のようなものをぶちまけて横たわっていたんです。

状況がよく理解できず、ぼけっとしていると、その人が「はなすな」って低い声で言ったんです。

その声で男の人だと判ったんですが、瞬間怖くなって逃げ出しました。

家に帰ってもまだ怖くて、母親に今の出来事を話そうと思ったんですが、
話すことさえ恐ろしくて、結局誰にも言いませんでした。

それからしばらくはとにかく怖くて、その神社には近寄りもしませんでした。

ちょっと時間が流れて、今度は高校一年生の夏の時の話です。

当時、私はある部活に入っていましたが、
その部活というのが、高校生の分際で年2回ほど盛大な飲み会をする部活でした。

まぁ私も生真面目とは程遠い人間でしたので、それに喜んで参加しました。

一次会を終えて、家に帰る者、オールナイトで遊ぶ者と、別れることになりました。

私はオールナイトに参加したかったんですが、親が口うるさいので、仕方なしに家に帰ることにしました。

電車に乗って地元の駅に着くと、自転車置き場まで歩きました。時刻は確か午後9時を回ったあたりでした。

ふらふらしながら、自分の自転車を見つけて帰ろうとすると、
前方からスーツ姿のおじさんらしき人が、千鳥足で歩いてきました。

背中に誰かを背負っているようで、この人たちも酔っ払いなんだろうなと思いました。
でも、よく見ると奇妙なんです。

普通人を連れて歩くとき、肩を貸すとかおんぶするとかですよね。
なのにその人は何もせず、後ろの人がただ首にぶら下がっているだけのようでした。

変だとは思いつつも、自分も酔っ払っていたので気にせず帰ろうと思い、その二人組みの横を通り過ぎようとしたんです。

そうしたら、またそこで「ハナスナ」って、あの声が聞こえたんです。

それまでずっと昔のことは忘れていたのに、その一言で全部思い出してしまいました。
直感的に、その声があの時の男の人の声だと判りました。

後はもう怖くて怖くて仕方がなかったので、振り向きもせずに自転車を走らせて家に帰りました。

次の日、昼ごろ目が覚めてやや遅い朝食を摂っていると、母親が私にこう告げました。

「あんたがいつも自転車置いてる、駐輪所があるでしょう?昨日の夜、そこで男の人が死んでたらしいわよ。あんた何か見なかったの?」

私は何も見なかったと母親に告げると、部屋に篭って震えてしまいました。

死んだ男が果たして昨日見た男だったのか、知りたいとも思いませんでした。

その後冷静になると、もしあの日、自転車置き場で自分を目撃した人がいたら、警察が事情聴取にくるかもと思い、
別の意味で怖かったのですが、幸いなことに警察は来ませんでした。

男の死も事件性はないものとして扱われたのではないかと、今では思っています。
そして更にもう一度、この謎の男に遭遇することがありました。

大学3年生の秋ごろ。

私の通っていた大学は非常に遠くて、片道3時間ほどかかっていました。

普通なら、大学の近くにアパートを借りたり下宿したりするんですが、
家庭の事情というやつで、私は往復6時間を通っていました。

その日は、大学の近くに住んでいる友達の家に泊まる予定だったんですが、
夜の9時に近くなった頃に、友達に父親から電話がかかってきました。

どうもお母さんが突然倒れたとの事。

友人はすぐさま実家に帰ることとなり、私もまだ電車の時間があったので家に帰る事にしました。

3時間ほど電車に揺られて、日付が変わろうというころに地元の駅に到着。
改札を出ると、そこに人だかりがあるんです。

好奇心に駆られてその人だかりを覗くと、
若い女の子が路上に倒れていて、友達らしき女の子が大騒ぎをしているのが見えました。
酔っ払って急性アル中にでもなったんだろうと、興味をそがれてその場を後にしようとしたんですが、その時見てしまったんです。

倒れている女の子を見ている野次馬の中に、黒いコートを着た男の姿を。

はっきりと顔を見たのは初めてです。

でも、その時何故だか解りませんが、その男が過去2回遭遇したあの不気味な男なのだと理解してしまいました。

年齢はおそらく30後半から40ちょっと。目が異様に落ち窪んでいて、頬は痩せこけていました。

髪はぼさぼさで、自分で刈ったような感じ。

倒れている女の子を見ていたそいつは、薄笑いを浮かべているんです。
もうとにかく気分が悪くなって、逃げるようにその場を後にしました。
その時、やっぱり聞こえてきたんです。

野次馬のざわめきや車の走る音、大騒ぎしている女の子の声とかで、辺りはかなり騒々しかったはずなのに、
過去二回聞いた声とそっくり変わらない口調で、「ハナセ」って。
即効でその場を逃げ出しました。

二十歳を越えたのに、みっともなく布団に包まって、ガタガタと震えたのを覚えています。

それ以来10年ほど経ちますが、今のところその男には遭遇したことはありません。
しかし、今でも気になることがあります。

男は一体なんだったのか。

男の言った『ハナスナ』の意味は何だったのか。

そして、三度目は何故『ハナセ』だったのか。

いくら理解しようとしても全然解りません。

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