短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

謎の建物【ゆっくり朗読】

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去年のお盆のことだ。

572 :本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 12:25:17 ID:oBMalUeI0

帰省していたときに近所の従姉と会い、世間話をしながら一緒に歩いて帰った。
俺にとっては久々の帰省で、少し地元の風景も変わっていた。
川原の廃工場がなくなって、ステンドグラスのついた祭儀場みたいな建物になっていたりとか。

話の流れで、従姉に川原の廃工場がいつ取り壊されたのか聞いてみたら、
「工場は今もそのままだ」という。
どうも俺と従姉の認識が噛み合わないので、工場を確認しにいくことに。

工場のあるはずの場所には、俺が見たとおりの建物があった。
地元民である従姉が、工場の建て替えに気づかないはずがない。
よく見ると、その建物もおかしい。

俺が地元を離れたのは2年程前なので、新しく作ったならまだそれなりに綺麗なはずだが、
見るからに築10年は経っている。

謎の建物の入り口は、ガラスのドアだった。
さすがに侵入する気はなかったが、少し中を覗き込んでもいいかと思い、建物に近づく俺たち。

中はロビー風になっていた。ステンドグラスがあるのは奥の部屋らしい。
ロビーのソファに、20代前半くらいに見えるスーツ姿の男がいて、ペットボトルのお茶を飲んでいた。

青年は俺たちに気づいてドアを開け、にこやかに「自分は仕事があってここに来た。君たちはこの町の人かな」のようなことを言う。

爽やかな好青年っぽい雰囲気だったが、俺たちが地元民だと言ったとたん豹変。
俺と従姉を建物内に引っ張り込み、奥につきとばした。
以後の青年の態度は電波すぎる。覚えている発言を箇条書きにする。

・穢れた民族の末裔め。
・眼鏡は穢れた者の証。(俺のこと)
・ガリガリなのは穢れた者の証。(俺のこと)
・スカートは穢れた者の証。(従姉のこと)
・青と黒の服装は穢れた者の証。(従姉のこと)
・空が曇っているのは穢れたお前たちが訪れる予兆。空を返しなさい。
・お前たちから穢れたチョウの血を感じる。(チョウ?蝶?朝鮮?)

他にも言っていただろうが覚えきれないし、どのみち電波で意味不明だ。
逃げようとすると攻撃された。

「ひざまずきなさい!」とキレる青年に、俺は殴りとばされ、従姉は腕をひねりあげられた。

そのとき、閉じたドアにまとわりつく黒い蝶を見て、青年は従姉をビンタし、俺を蹴って外に出ていった。

青年が、「貴様だけは許さん! ひざまずきなさい!」と叫びながら蝶を追いかけている間に逃げた。

翌日、おそるおそる工場跡を見にいったが、そこにあったのは謎の建物ではなく、見知った廃工場だった。

地元の幼馴染にも、廃工場と謎の建物についてちょっと訊いてみたが、謎の建物を見たやつはいない。

青年はただの電波男だったのかもしれないが、穢れたチョウの血がどうのという発言だけ少し気になる。

地元には『お盆になると、先祖が虫の姿をとって帰ってくる。だからお盆の時期は虫を敬え』という風習がある。

どんな虫かは死者個々人で違い、俺と従姉の共通の祖父の場合はカラスアゲハだ。
だから何だよ、って話かもしれないが、穢れたチョウの血というのは、もしかして祖父の血のことか?

そして、あのときドアにまとわりついて結果的に助けてくれた蝶は、祖父だったのかもしれないと思う。

ちなみに親戚はみんな日本人。弥生時代の渡来人の血くらいは流れているだろうけどね。

575 :本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 12:46:05 ID:P6JYkctjO
村上春樹の世界みたいだな。
そういう目には遭いたくないけど、実に興味深い。
一切合切意味不明な出来事だが、仕事で来たって何の仕事だろ。
その建物って、教会とか結婚式場みたいな感じなのかな?
それとも大学の施設みたいな感じ?

578 :本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 13:20:23 ID:oBMalUeI0

>575
何の仕事かは言ってなかったし、俺も訊かなかったから分からない。ごめん。
建物の雰囲気としては、こんな感じだったと思う↓。セレモニーホールによくあるタイプ。

ただ、結構ステンドグラスが目立ってたから、教会なのかもしれないが。

580 :本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 14:00:29 ID:f8UWcZUa0

ガリガリのメガネ君だとしても、やたら腕っぷしが強くないか?その電波青年。
発狂のあまり、火事場のクソ力が出たのかな。

それにしても、怖かった。
幽霊譚とSFとデムパが渾然一体となってますね。
実際一番怖いのは、建物がなくなってるというとこだなぁ~
従姉妹とはその後その話したの?

>>580
俺は電波が言うとおりのガリガリ眼鏡だけど、それにしたって相当なもんだろうね。
殴られて体が浮いて、漫画みたいなあざになった。従姉も少し関節を痛めた。
事件現場が普通の場所だったら、即警察に通報するレベル。

あらためて話すようなネタもないんだ。
暴力的でイミフな異次元?体験だった、という程度だから。
あの建物は、いかにも現代風の祭儀場っぽかったから、
「昔は廃工場の場所にセレモニーホールがあって…」
みたいな時間トリップ体験や、幽霊話ではないだろうしね。

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