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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

来ないで下さい nc+

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高校に入ってしばらくした頃から、なんの前触れもなく女の幽霊を見るようになった。

心霊スポットに行った覚えもなければ、罰当たりなことをした記憶もない。事故や病気に遭ったわけでもない。きっかけらしいきっかけは何一つなかった。

最初に見たのは、夜中にふと目が覚めたときだった。
布団の横に、女が座っていた。

黒っぽい着物を着て、日本髪を結っている。乱れ気味で、几帳面さよりも生活の疲れがにじむ髪型だった。布団の方を向いて正座し、背中を丸め、俯いている。顔ははっきり見えない。まるで誰かを看病するために座っているような姿勢だった。

声は出なかった。金縛りというほど体が固まっていたわけでもない。ただ、怖くて動けなかった。反射的に背を向け、布団を頭まで被った。見なかったことにすれば消える。そう信じて目を閉じた。

翌朝、普通に目が覚めた。体は自由に動いた。
金縛りではなかった。夢だったのだろう。そう考えることにした。

だが、それで終わりではなかった。

数日後、また現れた。
毎日ではない。ぐっすり眠れる日もある。夜中に目が覚めても、何もいないこともある。だが、早いときは布団に入って電気を消し、横になった直後だった。
「あ、トイレ行ってないな」
そう思って目を開けた瞬間、もういる。

同じ場所。同じ姿勢。同じ女。

夢とは思えなかった。意識ははっきりしている。体も動く。金縛りもない。だからといって、触って確かめる勇気はなかった。

何度も見るうちに、少しずつ観察できるようになった。
女は必ず右側、少し奥、膝のあたりに座る。こちらを見ない。こちらに触れない。ただ、布団の中の俺を見下ろしているようでもあり、見ていないようでもある。

不思議と、強い敵意や怨念のようなものは感じなかった。呻き声もない。動きもない。ただそこにいる。それが逆に気味が悪かった。

一か月ほど経った頃には、恐怖よりも疑問の方が勝っていた。
なぜ俺なのか。
なぜこの女なのか。
何が目的なのか。

友達に話しても、夢だろうで終わった。真面目に聞いてくれるやつはいない。霊感があるとか、霊能者を知っているとか、そんな都合のいい人間も周囲にはいなかった。

考えてみれば、女は何もしない。害を与えない。恨んでいる様子もない。
それなら、何か伝えたいことがあるのではないか。
やってほしいことがあるのではないか。

そう思い始めた。

ある夜、いつものように女が現れた。
布団の中で、意を決して心の中で問いかけてみた。
何か言いたいことがあるんですか。
何か、してほしいことがあるんですか。

反応はない。

何度か繰り返した。
お経を唱えれば効果があると聞いたことがあったので、うろ覚えの言葉を頭の中でなぞってみた。
何も起きなかった。

その晩は、女が消えるまで眠れなかった。

次に現れた夜、覚悟を決めた。
布団から出て、枕元に正座した。寝たまま話しかけるのは、なぜか失礼な気がした。

「あの」

声が震えた。
その瞬間、女の頭がわずかに動いた。ほんの少し、ピクッと。

動く。
それだけで、背中に冷たいものが走った。

「何か、俺に言いたいこととか、ありますか」
「用事、とか」

心臓の音がうるさかった。逃げ出したかったが、体は動かなかった。

しばらく沈黙が続いたあと、女はゆっくりと背筋を伸ばした。
それでも、こちらは見ない。布団の方を向いたまま。

「では、ひとつだけ」

かすれるような、小さな声だった。
本当に、声だった。

手をつき、深く頭を下げた。畳に額がつきそうなほど、丁寧な動作だった。

「もう、来ないで下さい」

その言葉と同時に、女の体から色が抜けた。
墨絵が水に滲むように、輪郭が薄れ、形を保ったまま、すうっと消えた。

部屋には、何も残らなかった。

しばらく動けなかった。
混乱していた。意味が理解できなかった。

来ているのは、どちらなのか。
見られているのは、どちらなのか。

それ以来、女は現れていない。
だが、夜中に目が覚めたとき、今でも無意識に右側を確認してしまう。
そこに誰もいないことを確かめてからでないと、目を閉じられない。

そして、ときどき考える。
あの女は、俺に何を頼んだのか。
本当に、俺は「来ていない」のか。

[出典:100 :本当にあった怖い名無し:2017/10/20(金) 13:39:29.02 ID:LKUfJuKW0.net]

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