短編 ほんのり怖い話

家の穢れ【ゆっくり朗読】

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小学生の時の話

400 :穢れ:2022/10/30(日) 14:48:38.64 ID:RRPQBx680.net

小学生の時の話.友達に広い家の奴がいて、よくその家で隠れん坊をして遊んだ。そいつの家は昔、この地域の地主をしていたそうで広い庭には今は使われていない蔵があった。

暮れの頃、そいつの家にみんなで遊びに行くと大掃除をしていた。手伝うと小遣いをくれると言うのでみんなで手伝うことになった。僕は前々から気になっていた蔵の汚れを落とすことにした。どういうことかというと、その蔵は綺麗な白壁だったのだが、蔵の正面から見て右側の壁の3メートルほどの高さに大人の拳ほどの大きさの黒いシミがあり、僕は通るたびにそれが気になっていた。

脚立とバケツと雑巾を借りて一時間ほど叩き拭きをしていたら綺麗になった。バケツの水が墨のように真っ黒になったのに驚いた。そこに通りかかったこの家のお婆さんがとても喜んでくれて、みんなには内緒だよと言って500円玉をくれた。

年が明けて2、3日経った頃

またみんなでその家に行った。蔵を通りかかると拭き取ったはずのシミが同じ場所にあった。苦労したのになぁ、と呆然と見ているとあのお婆さんがまた通りかかった。

「せっかく綺麗にしてくれたのにねぇ」

「あのシミは拭き取ってはいけなかったのですか?」

「そんなことはないよ。綺麗にしてくれてとてもありがたかったよ。久しぶりに気持ちよく年を迎えることができた。」

お婆さんは少し考えこむと僕の顔を覗き込みながら話を続けた。

「あのシミはこの家の穢れなんだよ。綺麗にしても何日かするともとに戻ってしまう。」

お婆さんはこの家で生まれ育ったらしい。

一人娘で父親に厳しく育てられた。父親は厳格な人で礼儀を重んじ世間体を気にした。なので大事な客人が来る時は娘時分のお婆さんに言って蔵のシミを取らせたそうだ。

ある夏の夜のこと。その何日か前に町の有力者が連れ立って父親に相談しにきたので蔵にシミはなかった。真夜中にお婆さんは目が覚めてトイレに行った。

月が明るくて気持ちの良い夜だったそうだ。自室に戻る途中でふと蔵を見ると白壁の一部が月明かりに照らされてヌメヌメ光っている。

何かなと不思議に思いサンダルをひっかけて近づいて見てみると異様なものを見た。オタマジャクシがカエルに変態する過程でまず足が生え、手が生え、尾が消えていく。

白壁には足だけ生えた真っ黒なオタマジャクシが十匹ほど垂直な壁を腹這いで登っていた。オタマジャクシの粘液に月明かりが反射して光っていたのだ。

さらにそのオタマジャクシには目がなかった。オタマジャクシ達はシミがあったところまで登ると円を描くように陣取り、そして動かなくった。

翌朝、白壁を見てみるとその形に黒いシミができていた。

いても立ってもいられず、父親に話すと渋い顔をして言った。

「あれはうちの穢れだ」

それ以上は聞くなと言わんばかりに機嫌が悪くなってしまったので、それ以上は聞けず、それ以後も聞くことはなかったそうだ。

「だからこのシミはこの家の穢れなんだよ」

お婆さんはそう言って悲しそうな顔をした。

(了)

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