短編 洒落にならない怖い話

膝の上【ゆっくり朗読】717

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その友人と知り合ったのは、研究室が同じだったのがきっかけでした。

975 :膝の上1/3:2006/05/28(日) 22:53:41 ID:6MuWSflF0

初対面の私に、「アンタさ、取り憑かれやすいだろ」と言い放つブッ飛んだ人物で、
普通なら「何だ?この電波人間は」なのでしょうが、私には笑えない。

自慢じゃないが、私は憑かれやすい。
幼少期から祖母に、「お前は『いらんモノ』連れて帰ってくるから」と、外出時に必ずお守りを渡され、
忘れた日には、井戸ん中落っこちてるの発見されたりとか、身内一同、謎の疱瘡発生とかしょっちゅうでした。
年と共にマシにはなりましたが、今も体調が悪いと油断できません。
幸か不幸か、自称『見えるが祓えない』友人に興味を持たれ、いろいろ連れ回されるハメになる。
そんな話。

2回生の7月、件の友人と、石鎚山の麓にある史跡に行った帰りの出来事。
一通りレポート用の写真やメモをとって、「さぁ帰ろうか」という時に調度雨が降り始め、
急いでローカル線の停留所に駆け込みバスを待った。
「傘を持って無かったけど、屋根着きの停留所で良かった」と私がこぼすと、
「……良くない。開城戦のあっちゅう跡や言うから楽しみにしてたのに。何も無いに――」
と、ふてくされた顔。相変わらずの土佐弁訛りはカワイイ。

雨がシトシト降りからザーザー降りなった頃、ようやくバスが着き、急いで乗り込んだ。

その時ふと、おかしな光景を目にした。

バスの入り口の直ぐ前の席(乗り口が後ろ、降り口が運転席にあるバス)に、女の人と少女が2人座っていた。
ただ座ってるのではない、妙なのはその座り方。
他の席が空いているにも関わらず、座っている女性の膝(ヒザ)の上に、もう一人が腰掛けているのだ。
雨のためかびしょ濡れだ。13歳位の女の子だ。
濡れるし重いのによくあんな事するなぁと思ったけども、
ジロジロ見るのも悪いので通り過ぎ、前の方の席に進んだ。
クーラーは効いてるみたいだが、嫌な蒸し暑さだった。

席に着き、さっきの様子を話そうと思った矢先、友人がこう言った。
「ビックリするかもしれんけど、黙ってじっとしち」
「は?」
言うなり友人は、私の膝の上に座ろうとする。
「何やってんだ」
当然驚く。
「いいから座らせろ!あと、次のバス停で降りるよ」
「え?」

○○
ノ|ノ|
.|| ̄|

「……」
「……」
「あの」
「しっ!」
「ねえ」
「黙っとき」
……どうやら発言権は無いようだ。

次の駅でひっぱられて、そそくさとバスを降りた。

辺り一面田んぼで、屋根の無いベンチだけのバス停である。雨はさっきよりヒドい。
もちろん私は、「忘れ物でもしたん?雨降ってんのに、何でこんなトコで降りんだよ!」と怒ったが、
友人は、
「アレ見たろ」
「は?」
「ヒザの上に乗ってたヤツ」
「何や、さっきのが霊やって言うんか?ハッキリ人の形してたのに」
(普段憑かれやすい私だが、『視る方』はカラッキシなのだ)
「アレはな、たぶん、自分の気に入った人のヒザの上に座って、 降りる時いっしょについて行くんや」
「ついて行くって?」
「気に入られたらしい。オマエの方じ~~っと見てて笑いよった。
そしたら、スッとコッチ来たんよ。
ああ、ヤバいなと思って、アレが座る前にウチが先に座ってね。
んで、言ってやった。
『コイツの膝は私のだ。お前にはやらん』って」
「私のって('A`)……」
「そしたら、恨めしそうに後ろ戻ってっち。
後ろの女の人には悪いけど、ハッキリ見えてたからね。アレは相当ヤバい奴だ。
良かったな。憑いて来なくて」
「……良くない」

次のバスが来るまで30分も雨に降られ続け、カメラもメモもおじゃんになり、次の日38℃の熱で寝込んだのだ。
あの事があってから、バスや電車に乗る時、荷物をヒザの上に置くのが習慣になっています。

風邪引いたせいで、またややこしい事になるんですが、
……それはまた別の機会に。

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