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短編 山にまつわる怖い話 n+2026

両手に残った感触 nc+

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小学生の頃、家から自転車で三十分ほど走った先に、小さな山があった。

舗装路から外れ、最後は土と石ばかりの道になる。人が来るような場所じゃない。だから俺と、いつも一緒に遊んでいた友達二人にとっては、完全に自分たちだけの遊び場だった。

虫を捕ったり、木に登ったり、斜面を滑り降りたり。
山の中腹より上にはあまり行かなかった。特に理由はない。ただ、なんとなく「そこから上は違う」と感じていたからだと思う。

ある日、そのうちの一人が用事で来られなくなった。
残った俺ともう一人は、せっかくだから普段やらないことをしようと話して、いつもより少しだけ上まで登ってみることにした。

完全な獣道ではなく、かろうじて人が通った形跡のある道を外れないように進んでいくと、急に木がまばらになり、岩肌が露出した斜面に出た。
その斜面には、不自然なくらい丸いものが転がっていた。

両手で包めるくらいの大きさで、どれも表面が異様に滑らかだった。
川原の石とも違う。磨いたように均一で、土に埋もれてもいない。まるで最初からそこに「置かれていた」みたいに、岩の間に点々と並んでいた。

俺たちは興奮して、その丸いものを手に取った。
ひんやりしていて、指に吸い付くような感触があった。

それを斜面の下に向かって投げる。
ゴロゴロと音を立てて転がり、どこかで止まる。
次はもっと遠くへ。
それだけなのに、妙に楽しかった。笑い声が止まらなかった。

しばらく遊って飽きたころ、俺たちはそれぞれ一つずつ、その丸いものを持って帰ることにした。
記念みたいな気分だった。

ふもとまで下り、自転車を出して帰ろうとしたとき、同級生のYが向こうから歩いてきた。
こんな場所で人に会うと思っていなかったから、正直驚いた。

Yは普段から落ち着いていて、大人っぽい奴だった。
俺たちは普通に笑顔で声をかけた。

その瞬間だった。
Yの視線が、俺たちの自転車のかごに吸い寄せられた。

次の瞬間、顔色が変わった。
怒鳴るでもなく、声を荒げるでもない。ただ、低く、はっきりと言った。

「それ、山に戻して来い」

あまりに真剣で、冗談だとは思えなかった。
理由を聞こうとしたが、Yは同じ言葉を繰り返すだけだった。

「今すぐだ」

俺たちは戸惑いながらも、言われた通り自転車を置いて山を駆け上がった。
信頼している相手だったし、あの顔を見て逆らう気にはなれなかった。

岩場に戻ったとき、さっきまでの楽しさは消えていた。
なぜか腹が立った。せっかく見つけたのに、という気持ちと、理由を言われないまま命令されたことへの反発だったと思う。

俺は持っていたそれを、斜面の岩に思い切り投げつけた。
鈍い音がして、割れた。
友達も同じように投げ、砕いた。

それで終わりにして、俺たちはふもとに戻った。
Yは相変わらず険しい顔をしていたが、何も言わず、一緒に帰った。

それ以来、俺たちはその山に行かなくなった。
あの日いなかったもう一人は、何度も行こうと言っていたが、結局一度も連れて行かなかった。

月日が流れ、つい最近、中学の同窓会でYと再会した。
酒も入っていたし、ふと思い出して、あの山の話を振ってみた。

Yは少し黙り込み、渋い顔をしたあと、苦笑いをした。

「あったな。お前ら、笑いながらあんなことしてたから、マジで怖かった」

あんなこと、とは何だ。
俺はそう聞いた。

するとYは一瞬、きょとんとした顔をしてから、声を立てて笑い出した。

「なんだ。石拾ってたつもりだったのか。あれ、小さいお地蔵さんの頭だったぞ」

頭が一瞬、真っ白になった。

Yの話ではこうだ。
あの場所は、Yの夕方の散歩コースだった。
たまたま遠目に俺たちを見かけ、声をかけようと近づいたら、自転車のかごにそれが見えた。

半目で、睨むような表情をした地蔵の頭。
しかも、それを笑顔で抱えている同級生が二人。

壊して持ってきたと思ったYは、恐怖で体が動かなかったらしい。
怒っていたわけじゃない。ただ、どう対処していいかわからなかった。

俺は反射的に、そんなわけないだろ、と言いかけた。
石だった。顔なんてなかった。
でも、その言葉は飲み込んだ。

同窓会が終わるまで、俺は何も言わなかった。

帰り道、自転車を押しながら、あの斜面を思い出していた。
あれが石だったのか、何だったのか。
今となっては確かめようもない。

ただ一つ、はっきり覚えていることがある。

あの丸いものを両手で包んだときの感触だけは、今でも忘れられない。
冷たくて、妙に滑らかで、指の形に合わせて微妙に吸い付いてくるような、あの感触だ。

あれが本当に石だったのかどうか。
考えようとすると、どうしても、あの半目でこちらを見る顔の話が頭をよぎる。

今でも、手を洗っているとき、ふとした拍子に、あの感触を思い出すことがある。
そのたびに、手のひらから、何かが見られている気がする。

[出典:966 :本当にあった怖い名無し:2017/12/22(金) 03:01:43.71 ID:p7s4e+Bm0.net]

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