中編 凶悪殺人事件

久留米看護師連続保険金殺人事件【ゆっくり朗読】

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実録!白衣の悪魔

日本中が衝撃を受ける事件が起こった。
1998年(平成10年)1月と1999年(平成11年)3月に福岡県・久留米市に住む看護師の女性4人組が生命保険金目的でグループ内の女性の夫を医学的知識を利用して殺害した保険金殺人事件である。

学生のころからの友人とされる4人の40歳前後の女性が、自分たちの夫を続々と保険金狙いで害したのだ。さらに驚かされたのは、その4人が全て看護師だったという事実。どうして、命を守るはずの彼女たちがこのような恐ろしい行動をとったのか。

この悲劇の背景には、彼女たちが逮捕されるよりも遥か昔の出来事が関連している。

看護学校を卒業して10年後、春田さゆり(仮名)は、看護師として患者や同僚から信頼を寄せられていた。そして、後に事件の中心となる茅原明美(仮名)と約10年ぶりに再会し、すぐに以前のように打ち解けた。

その再会から半年後、明美はさゆりの勤務先の病院に転職し、二人はさらに親しくなった。明美は結婚して家族があったが、独身のさゆりのことを心から気にかけていた。

その頃、さゆりは前の恋人からのストーカーに悩まされていた。警察への相談も無視され、彼が既婚者であったことから、親しい人たちにも打ち明けられない状況だった。明美にこのことを話すと、明美はある“先生”の力を借りれるかもしれないと提案した。この“先生”は政治や警察の関係者にも影響力を持つ人物だった。

数日後、明美はさゆりに安心するよう伝え、ストーカーから逃れるために自分の家に避難することを提案した。それ以降、ストーカーからの接触は止み、さゆりは安心して過ごせるようになった。そして約1年後、明美が夫と別居することになり、さゆりは明美の子供たちと一緒に生活を始めた。

ある日、さゆりはクレジットカードをなくしてしまい、止めるために電話しようとしたとき、明美は彼女を止めて「問題ない、私が助ける。先生が調査すれば、早急に答えが出るよ」と言った。

数日後、彼女は「解明したよ。お姉さんの夫が関与しているようだ」と告げた。
更に、カードの不正使用を直接捉えるために、敢えてカードを止めないように、先生からのアドバイスがあったと言われた。明美と先生の言葉は確かで、さゆりはそのアドバイスに従った。

何日か後、明美が“先生”と電話をしていたが、受話側の声は「気象庁発表の1月20日午後11時4分の天気予報です」と言っていた。
事実、その“先生”という存在は実際にはなかった。

しかしその頃、明美が“先生”の話をさゆりに初めてしたのは、約2年前のこと。さゆりはすでに“先生”の存在とその「力」を完全に信じていた。結果として、さゆりの貯金を明美が管理し、その約一千数百万円は2年弱で消費された。

明美は贅沢と欺瞞を愛した。裕福でない家庭で育った彼女は、同級生に虚偽を伝えるようになった。この行動が評価される方法と知り、明美は次々と嘘をつくようになり、学生時代には、偽の募金活動を始めた。

さゆりにとって、明美は利益を得る手段に過ぎなかった。さゆりからこれ以上得ることができなくなると感じた明美は、次のターゲットとして学生時代の友人、庄野奈津を選んだ。
奈津と会ったとき、明美は「井田佳寿恵との関係はどう?」と質問した。奈津は理解できず、明美は「佐藤里香のことを指している」と言った。

佐藤里香は、奈津が以前勤めていた病院の後輩だった。奈津は里香の仕事の態度にイライラしており、彼女の婚約者にも悪評を流していた。

明美は奈津に、里香が彼女を非常に恨んでいると伝えた。そして、井田という名前の代理人が里香の側にいて、彼と明美は以前から知り合いで、彼の背後には暴力団がいると言った。この情報に怖がった奈津に対し、明美は「心配することはない、私が助ける」と言った。

もちろん、この井田という人物や、里香の結婚相手が暴力的だという情報は明美の作り話だった。奈津は明美の言葉を信じ、その後、「井田」からの要求として明美に合計2800万円を支払った。

奈津は、返済のために家庭を離れて、明美の働く病院で仕事を始めた。しかし、彼女は既に多額の負債を抱えており、明美の要求に応じ続ける状況にあった。その結果、奈津とさゆりは、明美に対して感謝の気持ちを持っていた。

奈津は明美に夫の不倫疑惑を相談した。明美は「調査しようか?」と提案した。この相談は後に彼女たちの運命を変えることになった。

数日後、明美は奈津に「あなたの夫は愛人を養うために多額の借金をしており、あなたと子供を殺して保険金を得る計画を立てている」と告げた。奈津が警察に行こうとすると、明美は「警察は事が起こってからしか動かない」と言い、自らの方法で対処するよう提案した。

明美の目的は奈津の夫の死亡による保険金だった。もちろん、奈津の夫がそのような計画をしている事実はなかったが、明美はさゆりを巻き込み、彼の死を偽装する計画を立てた。

3人で集まり、殺害方法について議論した結果、急性心不全を引き起こす薬物で彼を殺すことに決定した。そして、その薬物を手に入れるため、明美は病院に侵入した。

その夜、奈津の家に侵入し、彼の飲み物に薬物を混入させた。しかし、彼はその日、その飲み物を飲むことがなく、計画は失敗に終わった。

計画が頓挫すると、明美は別の方法を提案し、さゆりと奈津を説得して新しい計画を立てた。そして、次に提案された方法は、彼の車を運転中に追突して死亡させるというものだった。

この方法も計画通りに進められ、奈津の夫は死亡した。明美は死亡診断書を偽造し、奈津は保険会社に請求を行い、その保険金の大部分を明美に渡した。

しかしその後、明美とさゆりとの間にトラブルが発生し、明美はさゆりに対して脅迫を行った。さゆりは警察に相談し、その結果、明美と奈津とさゆりの三者の関係と犯罪が露見することとなった。

この事件は社会に衝撃を与え、多くの人々が疑問を抱いた。なぜ奈津は夫を殺すことを決意したのか、なぜさゆりは明美の嘘を信じ続けたのか、そしてなぜ明美はこんなにも多くの人を欺くことができたのか。

この事件の背後には、人々の信じる力と、それを悪用する人々の存在があることが示されていた。

最終段階の日がやってきた。

夫が遅くに帰宅した際、奈津は彼に眠り薬を混入した食事を提供した。2歳の娘が静かに寝息を立てる部屋の中、彼女たちの計画が動き出した。病院から持ち出した注射器で、奈津は夫の足にカリウムを注入した。

瞬間的に夫が痛みで目を覚ましたが、すぐに睡眠薬の作用で眠りに戻った。
明美は「このままだとばれるよ。空気を入れてみる?」と提案した。
空気が静脈内に入ると、心臓の機能が妨げられ、酸欠による死がもたらされる。奈津は何度も空気を夫の体内に注入した。

夜が明けると、女たちは大がかりな演技を開始した。
奈津は遺体の検視を拒否し、結果として彼女の行動が疑われることはなかった。1カ月後には、夫の死亡保険金3498万円が奈津に振り込まれ、そのうち3450万円が明美の手に渡った。巧妙な話術で人々を魅了する明美の策略が、再び実を結んだ。

巨額の保険金を得たことで、明美の次のターゲットは看護学校の友人、秋山貴子(仮名)に移った。
実は明美は以前、貴子が夫の浮気で困っていたことを利用して、750万円を詐取していた。

明美は貴子に対し、「君の夫、君が離婚するのをためらっている間にいろいろやっているようだよ」と指摘した。その直後、貴子のところにあるコバヤシと名乗る人物からの電話が入り、「私たちがあなたの夫に対して訴訟を起こす予定です」との連絡があった。驚いた貴子はすぐに電話を切り、明美は「私がもう少し詳しく調べてみるわ」と提案した。

しかし、これは明美の計略だった。
奈津やさゆりも明美の詐欺計画に加担するようになっていた。

さらに明美は貴子に「あなたの夫は多くの人を欺いて金を手に入れており、その結果、何人かは自殺している」と告げ、遺族による補償として夫の保険金を提案した。

もちろん、これは全て明美の捏造で、貴子の夫がそんなことをしている証拠は何もなかった。にもかかわらず、明美は貴子に夫を殺害するという契約書を書かせ、それから数日後、再び計画を練り直した。今度は夫の死を急性アルコール中毒に見せかけることに決めた。

計画の日、貴子は夫に睡眠薬を盛った食事を提供した後、医療用の管を使って大量のウィスキーを夫の胃に注入した。約2時間後、夫は亡くなった。この犯行も疑われることはなかった。保険金3257万円が貴子に支払われ、その後、明美が全額を受け取った。

この保険金で明美は豪華なマンションを手に入れ、より派手な生活を送り始めた。そして、彼女の友人、今では共犯者となった3人の女をマンションの別の階に住まわせ、彼女たちを従えるようになった。

しかし、彼女たちの苦境はそこで終わらなかった。
奈津やさゆりは明美の強引な命令に従わざるを得なくなり、彼女たちの人生は地獄のようなものに変わっていった。明美はその力を増し続け、次の犠牲者を狙い始めた。

看護師4名による連続保険金殺人事件は、日本全国を驚かせた。中心人物、明美の実態はどういったものだったのだろうか?
この事件に関して、長期間の取材を行い書籍を執筆したジャーナリスト、森功氏の言葉によれば…

森氏:「彼女は高校時代から既にクラスで目立つ存在だったようです。非常に話が上手で、相手を言葉で巧みに操る能力がありました。そのため、人気があり友人も多かったと伺っています。」

実際に明美の裁判を直接傍聴した森氏は、明美と手紙でのやり取りも経験している。その中での彼女のリクエストは、『高度な弁護のスキルを持つ弁護士を紹介してほしい』であった。

森氏:「事件の全貌が明らかになった後でも、彼女は私に、自分は冤罪だと熱心に主張してきました。そして、その主張を本にまとめればベストセラーになるだろうとも語ってきました。彼女のような行動力と自己主張の強さを持った犯罪者は珍しい。友達の夫を二人も、そしてさゆりの母親をも殺そうとした彼女が、その行いについての罪悪感を感じていないことには驚きました。私にとって、彼女は一度も出会ったことのないような異常な犯罪者と感じられました。」

一方、森氏はこの事件を通じて、誰もが同じような事態になる可能性があると感じた。

森氏:「人は自然と嘘をつくことがあります。その嘘が他人には明らかであっても、信じられてしまうことも多いのです。人は、自己防衛のために何でもするもの。また、人々は嘘を信じたいという心理がある。例として、投資詐欺に引っかかる人たちは、自分の欲に基づく弱点を突かれて騙されることが多いです。そういった状況を避けるためには、他者の意見を求めたり相談することが重要で、自分だけでの判断は難しいと思います。」

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