短編 怪談

被験者の闇【ゆっくり朗読】

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大学で心理学を専攻してたんだ。

388 :本当にあった怖い名無し:2009/02/17(火) 23:10:51 ID:1KOddtF20

その時のゼミの先生の話なんだけど、この話に幽霊とかその類は一切出てこない。

先生からその話を聞いた日は、ゼミの後に飲み会を開くことになってて、
ゼミが途中から、人の心理に関する他愛もない雑談みたいになってた。

それで、「先生何か面白い話を聞かせてくれよ」ってなって、先生が話してくれた話。

先生は面白い人で、心理学に関するいろんな話を、閑話休題的に話すのが好きなんだが、
そのネタの大体が眉唾物の、ホントにあったかどうかわからないような話ばかりだった。
だけど、眉唾系の話なのに妙に説得力があるって言うか。

そんな話をするのが大好きな先生だった。

以下、先生の話。

今から何十年か前、某国でとある実験が密かに行われたんだ。

実験の内容は、閉鎖空間で感覚遮断を行うこと。

遮断する感覚は視覚で、おまけに時間の感覚も奪ってみようって言う実験。

今じゃ感覚遮断はヒーリングなんかにも使われるけど、その頃は一般的じゃなかった。

被験者は重犯罪者で、司法取引かな?もしくはそれに近い形で被験者になってもらったんだ。

被験者は薬で眠らされて、目から覚めたら完全に光の入ることのない閉鎖空間の中。

被験者は正真正銘の闇と、薬で眠らされてたから時間もわかんない。自分が今どこにいるかも分からない。

というか、自分の置かれている状況さえも分からない。

そんな状況下での、人の心理状態の変化を見てみようってわけだ。

結論から言うと、彼らは皆実験で狂っちゃったわけだけど、皆重犯罪者だからね。狂おうが、死のうがいいわけだ。

人を狂わす要因として、時間の感覚の欠如がある。
皆時間というと時計を思い浮かべると思うけど、そんな正確なものじゃなくていいんだ。
陽が昇って、沈んで、夜が来て、それで時間の流れが当たり前に分かるだろ?
その感覚が全く分からなくなると、精神に異常をきたしてしまうんだ。人間なんて脆いもんさ。
それともう一つ。それは、人の持つ想像力だ。
そしてこの実験のホントの目的は、正に人の想像力を見極める実験だったんだよ。

皆も悪夢を見たり、夜の帰り道でお化けとか想像しちゃう時あるだろ?
でもそれは大抵、今まで見聞きしてきた事。

つまり、自分の経験の記憶から脳内で合成されるもので、自分の脳の中の記憶以上の想像はできないわけだ。

だけど、彼らは見た。脳の中、最深部まで穿り返しても出てこないような恐怖を。

真の闇という極限の状況と、極限まですり減らされ、研ぎ澄まされた精神の中で。
彼らはその自分の想像に狂わされたんだ。

ただの脳内映像だよ?そんなものに狂わされるんだ。
やっぱり人間なんて脆いもんだ。

え、何で彼らが見たものが、想像の域を超えていたか分かったかって?
実験の後、狂った彼らに、催眠で闇の中で見たものを聞き出したんだよ。或いは絵に描かせた。

そこで聞いたもの、描かれたものは、人外のものだった。
というか、もちろん色んな物が出てくるんだ。
それこそお化けみたいのから、奴らの被害者とか。

初めはそんな可愛いもんだけど、時間が経つにつれてひどくなる。
(催眠で)実験の後半に入ったら、もう誰にも彼らが見たものが何かなんて分からなくなってた。

だから、研究者はこう結論付けたんだ。

人の脳は限界を超えると、脳内の記憶以上のものを見させると。

されで、「最期に見たものは?」って最後に聞いてみたんだって。
実験も満足いくものだったし、おまけみたいな感じでね。
そしたら、全員が同じ答えだった。

『闇』

彼らはそれだけ答えた。

光が差さない闇だけの空間で、彼らはそれ以上の闇に飲み込まれたんだ。

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