短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

スレンダーマン【ゆっくり朗読】

投稿日:

Sponsord Link

海外の都市伝説に目を向けたことが、貴方にはあるだろうか?

面白いことに、類似する怪人・化け物の類があることに気がつくはずだ。

有名どころだと“吸血鬼(Vampire)”が一番イメージしやすいのだと思う。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe/1749-1832)が、
『コリントの花嫁』という吸血鬼の小説を書き、続いて英国小説家のエイブラハム・ストーカー/ブラム・ストーカー(Abraham Stoker /1847-1912)は、ワルキア公ヴラド3世をモデルに“ドラキュラ”という物語を制作し、広く世間に知られることになった。

というのも、死者が蘇るという民間伝承が各地にあったためである。

ドイツではヴァンピーア(Vampir)、ロシアでは蝙蝠怪人のウイプリというのが悪さをすることで有名であるが、上級悪魔という位置付けでヴァンパイアは存在している。

しかし“吸血鬼”の伝説はヨーロッパだけではなく、アジアだと中国のキョンシー(僵屍)も血に餓えた化け物であると紹介され、南米ブラジルではジャラカカス(Jaracacas)という怪物が、女性と子どもの血を吸うと有名である。

このように世界各地には類似する伝説があるのが分かる。

前置きが少々長くなってしまったが、本題に入ることにしよう。

皆さんは都市伝説に出てくる“くねくね”や“八尺様”を知っているだろうか?

大雑把に紹介するとしたら、
“くねくね”は『白いくねくねした何かを見ると、見た本人が身体をくねくねさせて狂ってしまう』というものであり、
“八尺様”は『身長が八尺程もある女性が「ぽぽぽ」と言う笑い声を発し、気に入られると数日の内に取り殺される』というものである。

その“くねくね”と“八尺様”を併せたような怪人が、海外の都市伝説に存在していることは知っているだろうか?

日本の都市伝説同様に、エピソードとして登場したり、ゲーム作品になったり、歌になる程有名な存在である。

彼の呼び名はスレンダーマン(Slenderman)。

見た目は、黒いものを纏った、木の枝のように細い身体をしており、身長が6フィートから10フィートとかなりの長身(伸縮自在)であり、顔は真っ白なのっぺらぼうのようにつるんとしている。(最近では黒いスーツとネクタイを身に纏っているようだ)

白い顔を見続けると、自分の頭を壁や机にガンガン打ち付けて発狂する。

彼は背中から何本もの腕や脚をくねくねと生やしており、
ルーマニアでは『蛇のようにのたくった』、イギリスでは『ロープのようだった』、
ドイツでは『木の枝のように細かったが、動いていた』という。

彼は突然目の前に現れ、気に入った子どもを誘拐しようとずっと後を追いかけて取り殺してしまう、という怪人である。

スコットランドではFear Dubh かThe Black Man と呼ばれ、オランダではTakkenmann かBlanch Man(枝男)と呼ばれ、
ドイツではDer Grosse Mann (のっぽ男)と呼ばれる。

では、各地の伝承を簡単に紹介させて頂く。

・ドイツ1700年頃の伝承

私の可愛い息子ラルス(Lars)は此処には居ないのだ。ベッドから連れ出されてしまった!!

最後にあの子は私たちのベッドにやって来て、「ムッター、天使様が窓の外に居るんだ」と言った。

それから馬鹿馬鹿しい、のっぽ男のおとぎ話を私に話して聞かせようとしていたが、私は眠りを振り払いきれずに、またベッドに身を沈めてしまった。

あの時私が真剣にあの子の話を聞いてあげれば、連れ去られる事もなかっただろうに!!
嗚呼、私は何て愚かなのだろうか!!

あの子が居なくなってから見つけたものと言えば、この黒い布切れだけだ。

私たちは一刻も早く此処から逃げ出さなければならない。何故ならあののっぽ男が私たちの家にやって来るからだ。

・ルーマニアのおとぎ話(死神の話だが、多くの人がこれはスレンダーマンの話だと認識している)

……全身黒ずくめの背の高い男が、空き地に立っていた。影が彼の身体を覆い、真夜中の闇のように暗かった。

男にはたくさんの長くやせ細った蛇のような腕があり、それらは剣のようにとがっていた。
釘を打たれた虫のようにくねっている。
それから母親は狂ってしまい、子どもと夫を殺してしまった。
何故殺してしまったか、それは男が差し向けたことだからだ。
男は暖炉から現れ、燃える腕できつく抱きしめて殺した。

・1953年米国ノースカロライナ州ポーク郡の郊外

牧場はテッド・ウィルコックス・ヘンダーソン(41歳/Ted Wilcox Henderson)によって所有・運営されていた。

彼には妻ジュディ・ヘンダーソン(36歳Judi Henderson)と娘のトレーシー・ヘ ンダーソン(6歳)がいた。

6月15日の朝、近所の人たちが悲鳴と銃声を聞いたため、警察を呼んだ。

保安官と二人の助手が午前8時34分に牧場に到着した。

馬小屋の馬たちは『野生動物に襲われたかのように』体を引き裂かれ、バラバ ラにされていた。

報告書によると、家の中は、居間、台所、廊下すべてが血まみれになっていた。

テッド・ヘンダーソンは寝室で見つかった。

彼はバリケードにした家具の後ろにおり、彼の横には妻の遺体があった。妻は胸をショットガンで撃たれて死んでいた。

テッドの手にはまだ銃があった。

ダン・パークスは次のように報告している。

「テッドの目は怯えきっていて、どこか遠くを見つめていた。彼はわれわれが部屋に入っても気づかないようだった。何が起こったのか、娘はどこにいるのかと聞いても、彼は返事をしなかった」

テッ ドは妻の殺害で起訴された。しかし、彼は強硬症の状態にあったため、精神病院へと搬送された。

テッドは3年間ずっと強硬症の状態にあった。

殺人事件から3年目に、ダウトン(Dauton)医師が、テッドが話し始めたと保安官に連絡してきた。

1956年6月15日にダウトン医師によって行われた面談の記録には、
『痩せたやつ……スーツ……俺を見て いた……』とある。

この『痩せたやつ』はジュディ・ヘンダーソンと娘のトレーシーを連れていこうとした。

テッド曰く、ジュディは自分を撃つようにとテッドに懇願し、テッドはそうすることで彼女を救えたと思っている。

しかし、痩せた男が娘を連れ去るのを防ぐことができなかったのを嘆いた後、テッドは鉄のテーブルに自分の頭を何度も打ちつけた。

看護師たちが彼を止め、鎮静剤を打つまでやめなかった。

7時間ほど後の6月16日午前3時に、テッドが部屋で死 んでいるのが見つかった。

どうやら拘束具を解いて、手首の動脈をかみ切り、出血多量で死亡したようだった。

トレーシー・ヘンダーソンは行方不明のままだっ た。

しかし、ヘンダーソン馬牧場事件の約1週間前にとられた写真には、馬小屋の前に立つスーツを着た男らしきものが写っており、これはスレンダーマンだと 主張する人たちもいる。

・1989年米国テネシー州(これは聞き取りのため、筆者のリスニングが脆弱な事もあり、以下簡単にまとめる)

10月のはじめ、「娘が居なくなった」と言うトーマス・ネアリー(Thomas Nealy)と、警察官(以下P)の、記録音声による紹介である。

トーマスは酷く弱り、怯えた様子で「此処は安全か?大丈夫か?」としきりに聞いており、
警察官は何度も「安全だ、さぁ何があったのか話してくれ」と話を促す。

トーマスの娘ジェシカ(Jessica)が外で友達と遊ぶと言って、通りで遊んでいた。恐らく彼女等だけだったと思う。

T「空が暗くなってきたので、友達を帰すために彼女の親を呼びました。そしてその事を伝えようと外に行くと、娘が居ない事に気がつき、「あの子は何処だい?」と聞くと、お友達は「30分くらい前にどこかに歩いていったわ」と言うので、5分ほど歩くと林があるので、其処に行ってみました」

P「一人で遊ばせていたのか?」

T「本当に気がつかなかったんだ、本当だ」

そしてトーマスは話を続ける。

T「林の中でジェシカの名前を叫びましたが、段々暗くなり、何も見えなくなり、聞こえもしなかった。突然、有り得ないくらい気分が悪くなり、そのまま嘔吐してしまいました。そして……彼、否、アレ(It)が!!(嗚咽)……ジェシカの服が……(更に嗚咽)……アレの手に握られていたんだ!!」
(スレンダーマンをHeからItと変えているところを見ると、余程嫌悪していたものと推察できる)

トーマスは泣き出してしまい、警察官は話題を変えた。

P「彼がどんな格好をしていたのか教えてくれるか?」

T「彼(Itと表現)は背が高かく、そしてスーツを着ていた……が、彼は人間じゃない。そんな馬鹿なことがあってたまるか。彼の腕は……(嗚咽)……地面についてた……そして、か、顔は……」

P「大丈夫だ、さぁ、話してくれ」

T「あの恐ろしいくそったれの顔!!(That Horrible Fucking Face!!)
……ただ私をじろじろ見ていた!!でも顔には何にもなかった!!目もなかったのに!!俺が見たのは何だったんだ?!」

段々興奮するトーマスを宥める警察官は「落ち着くんだ、トーマス……」と言い掛けるが、トーマスは更に声を荒げる。

T「俺が見たのは何だったんだ!?彼(It)が俺のジェシカを連れて行ったんだ!!
次は俺のところに来る!!俺は眠れない、生きられない!!
お前に分かるか!お前に分かるか!嗚呼、神様!(OH GOD! OH GOD!)AHHAAAAAAAAHHHHHHHHHH!!!(絶叫)」

そして頭を叩きつける音が聞こえ、警察官は落ち着くように言うが話を聞いてない。

P「彼には留置場が必要だ、誰か来てくれ!」

記録はここで終了している。

このように、スレンダーマンが各地にて都市伝説のように存在していることはお分かり頂けたことと思う。

スレンダーマンは恐ろしい一面をあらわしていながらも、海外では高い人気を誇る。

グッズまで作られていて、MADでは『スレンダーマンが友達を求めて現れているのではないか』という憶測まで飛び交っている。

しかし彼は化け物なので、人間への接し方が分からない内に殺してしまっているのだと。
壊した事実に捕らわれているので、どうして壊したのかについてまでは考えが及んでいないのだと。

どうだろう、“くねくね”と“八尺様”を併せたようには思えないだろうか?

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.