恐怖の実話

山の上の廃病院【ゆっくり朗読】3400

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高校生の時の実話。

660 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/12/23(土) 01:02
地元の中学校時代の友達二人と、近くの山に肝試しみたいなことをやりに行こうという話になった。

その山はそれほど高くなく、頂上が広場になっている。

さらに傍には病院が建っており、現在は使われていないその病院の旧館跡が廃墟の状態で残っている。

予定ではその病院の旧館を探索してから山を登る道に出て、頂上で缶ビールで乾杯してから反対側のふもとに下りる道から山を下る、というプラン。

深夜一時過ぎに三人で、まず病院裏の旧館跡に進入。

本当に荒れ放題で、マットレスのない鉄パイプのベット、倒れたイス、医療機具の入っていたと思われるガラス戸棚、部屋の隅に丸めて放置してあるシーツ、積み重なった段ボール、それらが、割れっぱなしの窓からの月明かりに照らされている。

その時、異常な音がするとか何か奇妙なものが見えたということはないのだが、オレの気分がなんかおかしい。

肝試しをやっているのだから恐いという気持ちはあるのだが、恐怖とは違った何か、体の中から寒気がして胸が押さえつけられるような風邪や高熱の時に感じる、具体的な悪寒がするようになってきた。

臆病だと馬鹿にされるのが嫌だったので友人にも言い出せず、そのまま病院から出ると山への道を進んだ。

狭い一本道である山道を、ダンゴ状に三人並んで進んでいった。オレは最後尾。

月が明るい夜だったので、道も周りの木々もよく見ることができる。

しばらく進んでいくうちに、気分の悪さが徐々に増していく。

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そしてもう一つ、奇妙なことが起こり始めた。

道の両側に設置された木の策の向こうから、何やらボソボソって感じで話し声のようなものが聞こえてくる。

誰か人がいるのかと思ったがそれはない。

木の策のむこうは腰の高さくらいの植物が群生していて、策から2メートルくらいで崖になっている。そんなところに人がいるはずもない。

その声は明らかに人の声に聞こえ、何事かをボソボソと言っているようなのだが、言葉がはっきりと聞き取れない。

左右どっち側から聞こえてくるのかもよくわからない。

上からだと言われればそうだったかもしれない。

しかもその声は、オレたちが道を進んで行っても、ずっとついてくるように依然として聞こえ続ける。

さらに奇妙なことに、オレがその声のことを話そうとしても声が出てこない。

金縛りにあった時のように力を込めても体全体が固まった感じで声が出ない感じとは違い、喉にしゃべろうという意思が伝わらない。

足はしっかりと歩き続けているのだが、口がなぜか開かない。

自分自身もなぜかどうしても話さなきゃという意思が湧いてこないのだ。

気づいてみれば、他の二人も山道に入ってからはずっと無口。

ひょっとして前の二人にもこの声は聞こえているのか。

そしてついに頂上の広場に出た。

その頃にはいつの間にかボソボソという声は聞こえなくなっていた。

頂上広場でようやく口を開くことが出来た。

本来は真っ先に、ずっと聞こえていた声のことが話として出てくるはずなのだが、その時はなぜか

「……頂上かな」

「……ああ」

「……だな」

というような会話にしかならない。

三人ともほとんど黙り込み、沈黙が続く。

月明かりで周囲もお互いの顔も良く見ることができる。

特に異常なことは見られないが、感じる悪寒は相変わらずだ。

そして、一人がようやく

「……じゃあビール飲むか」と言い、

オレともう一人の友人は「……うん」とだけ答える。

その時、いきなり

バンッ

という大きな爆発音みたいな音が近くから聞こえたその瞬間、急に体が軽くなった。

誰からともなくオレ達は山の反対側に下だる道を一目散で走り下って行った。

みんな一言の叫び声もあげない。

夜道の細い山道を走って下るのは危険なのだが、その時は不思議と誰かが転んだりすることもなく十分くらいでふもとに辿り着いた。

三人とも息を切らしていたが、ようやく口を開くことが自由になった。体の気分の悪さもいつの間にか治っている。

みんなの話では、病院からの悪寒も、山道での声も、オレ以外の二人共が感じていたらしい。

また、口を開くことも、奇妙なことを告げるべく言葉がなぜか出てこなかったというのも一緒だった。

そして頂上広場で聞こえた音は一体何だったのかという話になった時、オレは友人が背中に背負ったリュックからなにやらポタポタと液体が垂れていることに気づいた。

そのことを告げて急いでリュックを開けると、なんと中では頂上で飲むはずだった缶ビールが、缶の中から何かが破裂したかのように真ん中がバックリと裂けていた。

さらにオレのカバンの中のビール、もう一人の友人のビールも同じように裂けて、カバンの中がグショグショに濡れていた。

恐らく頂上で聞いた音はこの破裂音だったのだろう。

後に高校の教師にも話したが、高山地区なら全くあり得なくもないが、普通の町にあるような山でそんな風に缶が破裂するなんて絶対にあり得ないとのこと。

もちろん、恐くてあれ以来その病院にも山にも近づいていない。

後日談

こうして文章にして第三者が見た場合はそんなにでもないかもしれないが、オレは実際に体験した話だけに、思い出すだけで本当に恐くなる。

(了)

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