短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

おみくじ【ゆっくり朗読】

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書いてはいけないのかもしれないが、正直一人で背負ってられない。

158 :本当にあった怖い名無し:2023/03/10(金) 17:49:29.32 ID:2aI5mlSS0.net

背負わないようにはしているが。

5年くらい前の話だ。

当時付き合っていた彼女が御朱印集めにはまっていてデートでは神社に行くことが多かったんだ。

俺は興味は無かったが付き合いで一緒に御朱印を集めてた。

その時も御朱印目当てに少し遠出して一拍してその周辺の神社を回ってた。

その中の一つの話。

神社の名前は言えないが御朱印のデザインに人気があるところでネットで検索すると出てきていたくらいの知名度はある神社だ。今は出てこないが。

その時はその神社でお参りをして社務所で目当ての御朱印をもらったんだが、その近くにおみくじがあったんだ。

よくあるお金を入れて紙を引くタイプではなくて、木の筒?を振ると番号が書かれた木の棒(竹だったかも)が出てきて、それを中の人に渡すと後ろの同じ番号の引き出しから紙を取って渡してくれるやつね。

珍しいなと思って彼女と二人でやったんだ。
筒が凄い歴史を感じるくらい木が締まってテカテカになっていて、なんか趣のある筒だった。

まず彼女が引いて番号は忘れたが係の人(巫女の服装だったが本当に巫女かはわからん)に渡すと後ろの同じ番号の引き出しから紙を取って渡してくれた。

大吉とか中吉とかは書いてなくて項目ごとにいろいろ書いてあった。特に面白みもなく全体的に当たり障りのない内容だったと思う。

大吉とか書かれているなら中吉レベルと思ってくれ。

次におれがやったんだか、出てきた番号が凄いでかい番号で2800番台の数字だった。
もちろん漢数字だ。

こんなに種類があるんだ、凄いなと思いながら巫女さんに渡したら巫女さんも「え?」みたいな感じで首を傾げる。確かに俺の場所から見える後ろの引き出しも20個くらいしか見えない。そもそも筒の中に2000本も入らんと思う。

隣の巫女さんにも見せていたが首を振っている。

巫女さんに、少し待ってくれと言われ、少し離れた場所にいた中年の割腹のいいの宮司?みたいな人のところにその棒を持っていった。

そしたらその人が慌てた感じになり巫女さんと話しているのが見えて巫女さんが俺の方を指さすと物凄い見開いた目で俺を見て、また巫女さんと少し話して宮司はどこかに行ってしまった。

巫女さんだけ戻ってくると、巫女さんも訳が分からない感じだったが「こちらで少しお待ち下さい」と言われ、社務所の中に通されて椅子を勧められたので彼女と座った。

訳が分からず彼女と「何だろうね」と話していたら巫女さんがお茶を出してくれた時にここで待たされる理由を聴いてみたが分からないとのことだった。

しばらくして(マジで二時間くらい待たされて彼女も俺も不機嫌になってた)から60歳くらいの神主?みたいな人が現れて理由も言わずに「今日のことは忘れて欲しい」と言われた。

ここでキレた。

ふざけんなと。それを言うために二時間も待たせたのかと。だったらその場で言えよって感じで文句を言った。彼女には止められたがせっかくの小旅行がこのせいで予定が狂い腹の虫が収まらん。

せめて理由くらい教えろと詰め寄った。
神主らしき人はかなり困った表情だったが、全ては話せないこと、ここのことは他言しないことを条件に話してくれた。

要約すると

俺が引いたおみくじは「引いてはならないおみくじ、引けないはずのおみくじ」であり、書かれた番号に紐づくものはあるのだが、それはあるものを封じてるもので、おみくじの形を成しているが、引けないことで封印の役目をするらしい。正直聞いてもよくわからなかった。

そこで引っかかったのが「引いてはならない」はわかったが「引けないはず」がわからん。俺引いたし。

聴くと神主らしき人は首を振り巫女さんにおみくじの筒を持ってこさせた。

引いたくじと筒を渡され、「入れてみなさい」と言われたので出てきた場所から入れようとしたが入らない。くじ側の方が幅が広かったんだ。斜めにしたりいろいろやったがどうやっても入らない。

さすがに寒気がした。

絶対俺このくじ引いたし、引くときも無理やり引っこ抜いたとかではなく普通に出てきた。彼女を見ると彼女も青ざめていた。

神主らしき人からは「見たとおり引くことは出来ないはずなんだ」と。

このおみくじが作られて、このくじが中に入れられ封じられて以降はくじは小さい穴からしか出し入れ出来ずにこのくじが出てきたことはない。

神主らしき人も実物を見たのは初めてだとも言っていた。

彼女がいた手前、苦笑い程度て済ませたが頭はパニックだ。

封じられていたものは何で、封印はどうなってしまったのか聞いたがそれは答えてもらえなかった。

一番気になった封印を解いてしまった俺は大丈夫なのか聞いたが、それにはただ「帰る前に払います」とだけ言われ、大丈夫ともダメとも言われなかった。

お払いは拝殿?で本殿側を向いて背中側で何かを唱えながら木の枝や冊子みたいなもので軽く叩かれながら30分程度で終わった。

帰り道は彼女とも無言になり翌日以降は普通に振る舞ったが互いに意識してこの件に触れることはなくなった。

しかし、結局その後半年くらいで彼女とは別れた。

理由はこの件が原因といえばそうだが、お互いこのことに触れないように気を使いながら話すのが疲れたからだ。

あれから1年くらいがした翌年、やっぱり気になって仕方ないのでもう一度一人でその神社に行った。

昨年は人気の御朱印効果もあってか賑わっていたのに今は閑散としていた。
社務所も閉まっていて誰かいる気配がない。

不気味だったが、ちょうどお参りに来ていたおじいさんに何か聞けるかと御朱印をもらいに来た観光客を装って「御朱印はどこでもらえますか?」と話しかけてみた。

そしたら、「御朱印?ああ、あれか。あれはもうやっとらんよ。神主も宮司もおらんようになってしまったからね」と言われた。

俺が驚いていると、おじいさんは少し話をしてくれた。

一年くらい前(聞いた感じ俺がくじを引いた件のすぐあとくらいと思われる)に近くに住んでいる神主が一家全員で失踪してしまったらしい。
事件というより家財道具も無かったらしいので夜逃げレベルの引っ越しだったようだ。

その後しばらくは宮司が神社を切り盛りしていたが、2か月くらいして、社務所の人たちにこの地から引っ越した方がいいと言って、宮司も来なくなってしまったそうだ。

宮司も引っ越したらしい。御朱印を書ける人がいなくなり、宮司もいなくて社務所も開けてられなくなってしまって、今の状態になってしまったそうだ。おじいさんの娘が社務所にいたらしい。

一応、離れたところの別の神社の神主がここも兼務しているらしいが、ほとんどこないらしい。御朱印は昔のものとは違うがそこでもらえることも教えてもらったが、どうでもよかった。

おじいさんは、「嫌だね。この神社はこの辺りの鎮守様なのに。最近は葬式もやたらと多くてね。私の友人もこの1年で3人も死んでしまった。まあ、みんないい歳だったけどね」と冗談ぽく笑いながら言うとそのまま帰っていった。おじいさんは確かにかなりの高齢ではありそうだった。

おじいさんの背中を見送った後、俺も神社を出た。

話を聞いた後のせいだと思うが、この街の空気が重いように感じた。

あの件は関係ない。関係あったとしても俺のせいではない。俺はくじを引いただけだ。

俺はそう信じてる。

以上。長文失礼

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