中編 心霊

禁山:妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?(20)【ゆっくり朗読】

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さて、少し時間ができたのでなんかエピソードでも話そうと思う

24 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/02/04(木) 16:15:28.67 ID:aemfn8Bk.net

最近何退治してる?って聞かれたし、ちょうどこの前にやった「定期的な仕事」のひとつを話そうかな。

その仕事は簡単に言うと大体3年くらいを周期に一度山に行って、夜の間に山を登りながら山頂まで、都会の土を少しずつ山に撒いて、さらにいろいろやるってやつ。

そんなに高い山じゃないんだけど、割かし土が重くて肉体労働になる。

なぜそんなことをしないといけないか言うと、そのやまは、いわゆる「禁山」ってやつだ。

まぁ、禁山ってのはあくまでうちではそう呼んでいるだけで、本当の名前は別にあってここでは伏せさせてもらうんだけど。
なぜ、「禁山」って呼ぶかというと、昔立ち入り禁止だった山なんだ。
暗黙のルールでとか、怖い妖怪が住んでいるとか、そういう理由じゃない。

当時の領主様とかが実際に決めた立ち入り禁止エリアなんだよね。

理由としては今だと考えられないけど、当時は山賊がいたんだよね。
食っていけなくなった農民とか、落ち武者とかそういうやつらが山に入って、集まって村とか襲って金銭を奪うわけだ。

討伐しようにも、山賊は山の中を知り尽くしているわけだから、行く人数が少なかったら逆に返り討ちに合うし、人数が多いと山の中に隠れてひっそりやり過ごすわけだ。

そんな山賊が生まれないようにするために、一部の地域では一部の山を立ち入り禁止にしたんだ。

そう言う山をうちでは「禁山」とひとくくりにしてよんでいる。

昔のそういう名残で、道も整備されていないし、森もあるしで、最近でも人の気がまったくない禁山も多いらしいんだけど。

やっぱり人がいないと、そういう場所には妖怪が住み着きやすい。
まぁ、住み着いたところで、めったに人が行かないし。誰も迷惑しないから別にいいんじゃね?ってなるかもだけど。

最近の日本の山って必ず誰かしらの土地になっているみたいで、その土地の持ち主が妖怪とか住み着いたらいやだなぁっておもって俺みたいなやつに頼んで、お祓い的なことをしてもらうわけだ。

昔の中卒半ニートと違って、今は一応学生してるから、こういうちょっと移動に時間がかかる仕事は、長期休みにすることにしてる。

この「禁山」にいったのはちょうど先月の冬休みの間で。お正月返上の仕事となった。

俺は弟子ちゃんをつれてまず東京まで新幹線で行って、河川敷あたりで土をでっかいコーラのペットボトル6本分くらいに、詰めた。

その日の夜はビジネスホテルに泊まって、翌朝東京から四国まではフェリーで移動した。
飛行機が一番理想なんだけど、土がねw
重いし、不審がられるので、フェリーにした。

車とか電車とかはさすがにしんどいしね。

そんで、四国について電車で2,3時間、レンタカーで3,4時間。
例の山の近くまで来た。
車での移動中、休憩でパーキングエリアに寄ったとき、依頼してきた人に電話をして、今から山のほうに入ると連絡する。

この件の依頼人とは実はあったとこがない。
山に入る時もべつに立ち会うわけでもないので、正直いかないで、もうやったよー、とかうそをついてもばれないんだけど。

でも、先生がなくなった際、いろんなところに連絡して、今後も仕事を任せていただけますか?
って聞きまわったところ4割くらいがもう来なくていいって言ってきたので、たとえ会ったことのない人の仕事でも、ちゃんと仕事をして、信頼関係を築いていかないといけない。

そのうち仕事紹介してくれたりするかもだし。

俺と弟子ちゃんは荷物をまとめて、空が完全に暗くなるのをまった。
まぁ、もう着いた頃には夕方だったので、そんなに待たなかったね。

雪は降ってなかったけど、くっそ寒かったから車のエンジンを止めた後は、防寒具をフル装備して晩飯のおにぎりとかをたべた。

6時くらいになると、外はほとんど真っ暗だった。

携帯は圏外だったのでコンパスやらGPSやらそういう迷わないときのための装備とか、山には道がほとんどないので、登山用のブーツをは、いたりとかして、持っていくものを準備して、土を背負って出発した。

山に入り始めると、一気に寒さが2割くらいました。

一応いままでの山を回るための順路に目印として木にしるしをつけていて、それを頼りに山をぐるぐる回るようにして上る。

土は10メートルくらいおきにすこし地面に垂らしておく。

なぜこれをするかというと、人間の気が含まれているらしい。
まぁ、河川敷のものだけど、せれでも都会の土ってものは人間臭さがしみ込んでいるらしい。

山はそんなに高い奴じゃない。具体的にどれくらい高いかは知らんが、それでも1時間半くらいで、山の真ん中くらいまでついた。

ここら辺まで来ると少しだけだけど、雪のあととかあったりもした。

弟子ちゃんはこういう真冬の山の中の野外活動初体験で、かなりしんどそうな顔をしていた。
本当は連れてくる気がなかったんだけど、私もぜひ!みたいな感じでついてきた手前
弱音もはけないんだろうね。

休憩を設けたかったけど、休憩できるような場所はあたりになかった。

山の中では極力しゃべらないほうがいいので、雑談して気を紛らわしてやることもできなかった。
そんな中弟子ちゃんが突然ビックとなってしりもちをついた。
あ、ちなみにだけど、弟子ちゃんが前のほうを歩いていて、俺が後ろのほうからついていく感じだった。
俺はどうしたんだ!って駆け寄ると、彼女は青い顔で前の木のほうを指さしていた。

木の枝にはバービー人形がつるされていた。

彼女はそれに驚いたらしい。

俺はなんだ、そんなことかと思ったけど。
弟子ちゃん的には腰が抜けたらしくて、3,4分くらい立てなかった。

山の中にこういうものは結構あったりする。なんでここにあるんだろうって気にしても、無駄だ。

ただの悪戯かもしれないし、なんかの意味があるかもしれんが、関わるだけ損だ。金にもならないしね。
俺は手で「気にするな」「無視」と合図をした。

そういえば、弟子ちゃんが疲れていることに関しては少し気をまわしてたけど、怖さに関しては完全に忘れてた。

そりゃあ、初めてこんなコンディションの夜の山に入って、怖くないわけがないわな。

俺はカバンから飲み物を取り出した。

この場合の飲み物はよく使っている日本酒ではないw

まぁ、未成年に飲ませるもんじゃないしね。

山の中で儀式をするわけでもないのに、何かをたべたり、飲んだりするのは本当はよくないんだけど。
なぜなら、そういうことをすると、第一に、よくない気がついでに入るかもしれないから。
第二に、もし妖怪とかそういうのがいたら「あれ?なんかうまそうなもん食ってんじゃん?なに?なに?俺の分は?」ってなってあげないと怒る。

だから昔の人が山で狩りとかする時に1個おにぎりを食べると、もう一個を捨てたりするらしいね。

うちの場合、どうしても必要だと感じたときは、もち米を煮詰めて、中にショウガを入れたものを飲む。

おいしくはないけど、保温瓶にいれてるから。まぁ、少しあったかい。

これなら、妖怪は興味持たないから寄ってこないし、悪い気が入ってもすぐに出るらしいから。影響がないらしいね。

飲み物をいっぱい弟子ちゃんに飲ませると、俺は彼女を連れて再び作業を開始した。

そしてさらにそれから1時間くらい。山頂にはつかなかったけど、とってきた土が底をついた。ここからが、本番だ。

俺はとりあえず一番外の防寒具を脱いで、カバンから汚れたジャージをとりだして、それを履いた。

前に言ったかどうか忘れたけど。神様に合うときはきれいな恰好。妖怪に合うときは汚い格好のほうが好まれるらしいからね。
そんで、弟子ちゃんは持ってきた特別な打楽器を一定のリズムで打ってもらって、俺は、いつものように詩を読み上げた。

いつものように具体的な詩はどういうものかは隠すけど、大体の詩の意味はこうだ。

こんばんわ。いきなりお邪魔してすみません。どこどこの流派のなになにでございます。今回も前回のような事情でやってきました。これからも末永くよろしくお願いします。

みたいなものだ。

山ってものは大体妖怪が住んでいる。
むしろ住んでいないほうがおかしいものだ。

妖怪は人間みたいにこの土地の権利はだれだれのものだー!なんてしらない。
判断材料は住んでいるか住んでいないか。それだけだ。

それを人間の都合で追い出したりするのはフェアじゃない。

まぁ、だから追い出さない。追い出したら、その妖怪に恨まれてしまうしね。
誰だって自分が家に住んでいて、急にお前出てイケーって言われたら怒るだろ?

それに追い出したとしても、別の妖怪がすぐにやってきて山に住み始める。

いくら予防策をはっても、そこにずっと張り付いているわけでもないし、やっても無駄だ。

なので、この仕事の場合、山の大部分を妖怪が住みたがらないような土地にして、それでも、新しい妖怪が来たら、もうすんでいる妖怪に「ここは俺の家だから別のところいきなー」と説得してもらうように、昔に交渉していて、3年くらい置きに様子を見に行く。

まぁ、依頼主のお願いして来てることとは若干していることが違うけど、結果的に山の妖怪の密度は減ることになるから、そこは我慢してもらおう。

言わなければばれないしね。

詩を読み終えると俺はカバンからアルミホイルで包んだお香の灰と米と塩を混ぜたものを取り出し、弟子ちゃんにはそのまま楽器を叩いていてもらって、一人で山の上のほうに上った。

大体登って5、6分くらいで体の震えが止まらなくなり始める。
なんというか、寒いのは寒いんだけど、寒さからの震えじゃない。
怖さでもないんだけど、なぜか不思議に震える。

不謹慎だけど、すこしパーキンソン病みたいな感じなのかもしれない。

俺はそこでいったん足を止めて、アルミホイルを開いて中身を地面に盛り塩?みたいな感じに盛った。

そして、それを土ごと力強く蹴り、後ろを見ないように気を付けながら、くるりと後ろを向き、山を下り始めた。

途中弟子ちゃんを回収して、来た時より短い、直線的な下山ルートで帰った。

車についてエンジンをかけると、弟子ちゃんは青い顔をしながら、俺が山を登っていくのを見ていると、すっと、茂みから何かが俺についていったような影を見た気がした。とかなんとか言い始めた。

俺は冗談で、ああ、それならあったよ、バービー人形が動いてたっていってあげた。

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