用を足し終えると、俺は幾分か心が楽になった。
23 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:16:41.29 ID:ifSOO5Rt0.net
そのまま部屋に戻ろうとしたんだけど、その時だった。
結構近いところから、リズミカルに水が流れる音がするのに気がついた。
トイレの水を流す音だ。
しかし、なんだか様子が少しおかしかった。なんというか、トイレのレバーを小のほうにひねると、水がそのひねっている間だけ、少し流れるじゃん?多分それの音なんだけど。
それを一定の間隔で、まるで楽器を演奏するように、水を流してるんだよ。
俺は不思議に思った、何なんだろうか?
正直、トイレは夢のこともあるけど、あんまり関わりたくなかった。
先生の実家の庭は割と広かった。その水がリズミカルに流れるトイレは庭側に面して窓があった。
俺はひと眼だけその窓を眺めたが、電気はついていなくて中は真っ暗だった。
俺は少しだけ悩んだが、知らないふりをしようと思い、また部屋に戻ろうかと思った。
好奇心は猫を殺すからね。
でも、次の瞬間その考えは全部ふっとんだ。
トイレの中から水の音以外の声が聞こえた。
控えめの声がったけど、聞きなれた声だった。
もちろん、耳を疑った。だからさらに音に集中してみた。
そしたら、確信した。その声は先生のものだった。
先生は真夜中の今、トイレで何をしようとしていたのか気になった。
どうしてこんな変なことを?と一度疑問に思うと,好奇心がどんどんと膨れ上がった。
ちょっとだけ様子を見てみよう。そう決めた。
俺は背を低くして、こっそりとトイレの窓のほうに近寄った。さすがに窓をのぞく勇気はなかったけど、せめて先生の音が何を言っているのか、聞きとってやろうと思った。
そして、聞こえた。
じゃー、じゃー、と先生は水を流しながらこう言っていた。
出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで……
俺の心臓はどくんと、飛び上がった。
なんだか聞いては、いけないものを聞いた気がした。
急いで、その場から離れて、こっそり来た道を引き返し、自分の部屋に戻っていった。
急いで自分の部屋に戻った俺は、ぶるぶる震えながら布団の中にもぐりこんだ。
先生がなにをしていたにしても、というか、先生じゃない何かだったにしても、多分あのトイレで起きていたことは、俺が知るべきじゃないことだったんだ。
ひどく、トイレの様子をうかがったことを後悔した。
その日はそのままモンモンとしながら、いつの間にかぐっすりとねむった。
今度はさすがに疲れがたまっていたのか、ぐっすりねむれた。
朝になると、先生に起こされた。
時間は8時くらいだった。
俺は夜中の出来ごとが気になって、先生の様子とか観察したけど、普段通りだった。
先生は「朝食ができたらしいから、食べに行こう」といった。
俺は、やっとなんか食える!と喜んだ。
先生についていき、台所のほうに向かった。
そして、台所に入るドアをくぐったその瞬間、突然体がなんだか軽くなった感じがした。
その感覚には少し身に覚えがあった。
でも、なんでこんなところで?と俺は思って、台所を見渡した。
すると、台所の壁になんだけど、ちょっとだけ色あせた感じの墨画が一枚飾ってあった
まぁ、台所には場違いなものであった感じはした。
ほかのめぼしいものは特にないみたいだったので、体が軽くなった原因はそれではないのかと、あたりをつけた。
俺は霊感がないから全く分からないんだけど。
まぁ先生とか霊感があると言っている人によると、いつも俺の体には焼き焦げた。気持ち悪いイタチが張り付いているらしい。
でも、たまにそれが離れることもある。
理由としては、イタチたちが怖がったり、嫌がったりするものがある。というわけではない。
まぁ、一般的な妖怪たちと違って、イタチたちはもう死んでるから。
そう言うのはもうどうでもいいんだろうね。
いなくなってくれる時は大抵、彼らが「顔向けできない」と思う物の前だ。
死さえ怖くないのに、恥じらいを感じるのも、なんだか変な話だけどね。
俺は先生の視界に入るように、合図を出して、このことを伝えた。
あの絵。高いかも。ほしい。だます。持ち帰らない?
先生は俺の合図に気がつくと、絵のほうに目を向けた。
そんで、昼飯がならんだ机につきながら、「あきらめろ」と返事の合図をした。
まぁ、先生もそういうなら、多分無理なんだろうな、と俺は思った。
俺も先生に続いて席につくと、絵のことをじっくりと見つめた。
その墨画は、なんか湖みたいなとこに鶴?かなんかが書かれていたもので。
絵の左下に、よく読めなかったが、
『葬』……なんとかと 『居士』……という名前が残されていた。
居士ってのは、出家者の法名とか、戒名みたいな意味や、なんかすごい修業を積んだ人のことが、居士号を取って、居士をなのる、の2種類がある。
特に有名な居士といえば果心居士とかあるんだけど、織田信長の部下で幻術使いの話とかみんな知ってんのかな?
そんで、聞き覚えのあるなかで「葬」って文字がつく居士なんてただ一人。
葬死居士だ。
葬死居士については、詳しいことについては長くなるから省くことになるけど、とりあえず、葬書という書物を日本語に訳した人ってざっくり考えてくれ。
葬書は風水について書いてあるんだけど、最初の風水ってのは祖先を敬うためにあった。
だから郭璞っていう葬書を書いた人間は中国だといわゆる親孝行の神様とかにあたったりするんだけど。
葬書を日本語に訳した葬死居士ってひとは日本でもほぼ同じ立場にあったりする。
ちなみにだけど、妖怪退治の流派に葬死流というのがあって、それもこの人発祥にあたる。
まぁ、風水という概念を日本に広めた的な意味でも、流派を開いた的な意味でも、人間でありながら妖怪たちからもひとめ置かれているみたいなんだよね。
なんでイタチたちはこの人に顔向けできないのか、俺もよく知らない。
そこまでこの人に関する知識はないしね。
葬死流の人間なら何かわかるかもだけど。
しばらくぼんやりと俺が絵を眺めていると、台所のほうに先生の弟さんとその母親さんがやってきた。朝飯は米と焼き魚とみそ汁とか、結構ちゃんとしたものだった。
そんで、飯が食卓に並び終わると先生の嫁さんはおかゆとかをもって、それを娘さんのところに持っていく雰囲気を出していた。
そしたら、先生がミサトちゃんもこっちに呼んで、一緒にたべよう。といった。
ですが…と嫁さんはすこし迷うそぶりを見せたが、先生は俺のほうをちらりと見ると、ずっとあの部屋にこもっていても、よくない。
いまなら大丈夫ですよ。と言い聞かせた。
すると弟さんも、そうだね。呼んできてくれないか?と先生に同意した。
俺はミサトちゃん?と夢の中で聞いたその名前が本当に出てきたことにびっくりした。
嫁さんは、わかりましたと答えると。娘さんを連れてくることになった。
ミサトさんはしばらくして、嫁さんに連れられてやってきた。
着替えもしたみたいで、寝巻じゃなく、長袖のシャツにジーンズ的な私服だった。
ミサトさんは俺のことをみると、一瞬ぎょっとした顔になったけど、どうやら、以前みたいに具合を悪くする様子はなかった。
そして全員そろうと、一緒に朝食を食べ始めた。
そしてら、先生は昨日はばたばたして、自己紹介もできなかったね的なことを言って、自分が何者なのか、ミサトさんに説明した。
まぁ、おじさんはともかく、妖怪退治とかの話もすると、あからさまに彼女は不審がってたけどねww
そんで、俺も先生に便乗する形で自己紹介をした。
俺はミサトさんの様子を見て、彼女はどこまで自分の状況を分かっているのか、気になったけど。
彼女は人見知りもあるのか、あまりしゃべらなかった。
そして、すこし気まずい朝食が済むと、先生がではちょっとこの子を話をするから。
他の人間は席をはずしてくれないか的なことをいった。
弟の嫁さんは心配そうだったけど、弟さんと母親さんに手をひかれて、どっかに行った。
俺も彼らについていこうと思って、席を立ったんだけど。
先生は「お前は残れ」と言ってきた。
ミサトさんは、先生がおじさんだってことはわかってたんだけど。
そのおじさんの仕事がこういう関係というのは分からなかったから、それについて、先生が説明して、俺も便乗した。
みたいな形だね。
他の人たちがさると、先生はミサトさんに彼女の状況とか色々かいつまんで説明し始めた。
ミサトさんは結構散々みたいだし、わりと呑みこみというか、簡単に警戒は解いてくれた。
まぁ、先生が家族がいる状況で自分がそっち系の仕事をしていると暴露するのも、うまかったのもあるね。
そんで、今は逆にひとりだけにして、色々ゆさぶりやすくしてる感じだった。
先生の説明をミサトさんはただ頷きながら聞いていた。
そして、先生の話を大体聞き終わると、彼女はこう先生に聞いた。
両親のほうからは弟子入りの話は聞いているが、先生のことは書道関係の人だと聞いていた。
それはまったく違うのか?と、
俺は彼女の部屋でみた、いくつかの書道の賞状をおもいだした。
なるほど、つまり彼女は最初、俺と先生のことを書道の師弟コンビだと思っていたわけだった。それがいきなり妖怪退治になったんだから、おかしく思うわけだ。
でも、先生は確かにどっかの流派の師範は持っていた気がする。
弟子入りというのは書道のほうだったのかと、俺は思ったが、先生の話的には完全に妖怪退治を教えるつもりのはずだ。
まぁ、書道も教えることもできるから、完全に騙したわけではないのか?
そこからは先生の弁解タイムに入った。
たしかに最初は書道だけ教えるつもりだったが、こっちのほうに来たら、君がこんな状況になっているので、しかたなく裏稼業のほうも……っていうようなことだった。
なんだかんだ言って先生のしゃべりかたはうまいから。
ミサトさんはそれで納得したようだった。
そして、ついに話は本題に入り、「例の三つの方法があるが、どうしたいか?」と先生は切りだした。
先生的な説明だと、最初の方法だと、妖怪退治関係の勉強をこれから教えるつもりで、それ以外の二つは、もし成功すればまだその気があるなら、書道のみの弟子にするという話だ。
まぁ、書道だけの弟子にするってのもちょっと俺的にはあやしかったけどねw
とりあえず弟子にすれば、あとはどうとでも!とか思っていそうな顔だった。
ミサトさんはしばらく悩んだが、正直妖怪退治うんぬんを習う気はしないから。
なるべく他の二つの方法で短期決戦でいきたいと、そういった。
そこからは俺と先生が少し話し合い。
第二の方法、「妖怪に忘れてもらおう」という方法をとることにした。
理由はまぁ、そっちのほうがまだ交渉の余地があって、俺や先生が慣れているから、というものだ。
方針が決まると早速準備をはじめた。
まずは妖怪を呼び出す場所の下見だ。
場所はミサトさんが失踪して見つかった、例の場所にすることにした。
先生は別の準備をするから、お前が見て来いと言った。
まぁ、あんまり先生は海とかに近寄りたくなかったんだろうし、俺はその指示にしたがった。
先生の弟さんに案内され、ミサトさんが見つかった崖に向かった。
場所的には弟さんの家から歩いて40分くらいかな?
割りと遠かった。最初は来るまで行きましょうか?と弟さんは言っていたが、俺は周りの風景とか建物の位置とかも、ちゃんと確認したいので徒歩でお願いした。
着いたころには割りと疲れた。
その場所は聞いた通りかなり辺鄙な場所だった。
道路のすぐわきってわけでもなく、アスファルトの舗装された道を外れて、4,5分岩だらけの地面を歩かないとつけない場所だ。
もちろん、あたりに街灯なんかない。
今の時間帯は昼ごろだから、全然大丈夫だけど。
夜になったら真っ暗で、何も見えなくなってしまうのは目に見えていた。
そんなところだから、ひととおりもすくない。
まぁ、妖怪を呼び出すにはうってつけな場所だな。
そんで弟さんに、ミサトさんがみみず食べてた大岩につれてってもらうと。
その岩の一部を削り取った。
削り取ったと言っても、あらかじめ持ってきたトンカチで叩いて、大きめで平な岩を手に入れた。
その後、あたりでわりと広い場所はないのかみつくろい。
その場所に酒を撒いておいた。
台所からくすめた料理酒だ。
この場合なぜか普通のお酒より、料理酒のほうがいいんだよなぁ
なんか違うのかもねw
大体の準備を終わらせると、俺は弟さんと一緒に、家に戻った。
もちろん削り取った岩とかも持って帰った。
帰ると、どうやら先生も他の準備のため家を出たみたいで、まだ戻ってない。
なので、俺は弟さんやその嫁さんに手伝ってもらいながら、庭の土を掘り起こしながら、生きのいいミミズを出来る限り捜した。
例の妖怪はミサトさんをおもてなすためにミミズを使ったのだが、妖怪は大抵、自分の好きなものを客人に出すらしい。
好物がわかったんなら、交渉に向けて、それを準備しない手はない。
ミミズを用意したら、俺は弟さんと一緒にが家へ戻った。
帰るとどうやら先生も他の準備を終えたみたいで、戻っていた。
先生から妖怪との交渉は次の手段で行くと言われた。
前にも書いたが、実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に、「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。
「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて、生まれてきてもらう。
そして、それを殺し、予言自体を不発にする。
不発になれば、予言はしていないことになるから。
そこからまた寿命を呼び戻す。
まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介なのは「我聞」を探して殺すという点だ。
まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。
さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。
それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。
なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは、どこか道を踏み外している行為だからね。
先生が戻ってきたのは午後の5時くらい。
もうあたりは結構暗かった。
戻ってきた先生は大きなバッグを持っていて、体からはすこし生臭い匂いがしていた。
俺は先生に自分が今まで準備したこととかをかいつまんで説明した。
先生は何やら疲れた感じの顔で、分かったと答えると、そして、いまからすこし風呂に入り時間になるまで休むから、バッグの中身を頼む。と言ってきた。
俺が了承すると、先生はそのまま風呂場に向かった。
嫌なにおいがする先生のバッグを開くと、俺は驚いた。
中には死んだ犬の死体が入っていた。
犬の死体は今からやるはずの儀式とかに特に必要なものなどではなかった。
どうして先生はこんなものを用意したのだろうか?
しかも、その犬は見た感じ、もちろん、あくまで憶測だけど。
野良犬とかの類じゃなかった。
結構毛並みのいい、柴犬で、首輪もあったんだ。
そんで、その犬の腹辺りが真っ二つに割れていた。
黒い犬の血は妖怪退治とか幽霊退治とかで童貞のおしっこと並んで、よくつかわれてる。これは割と有名な話だよね。
ただ、その犬の血をどう取るかというと、実は結構残酷だ。
まず、犬を大人しくさせるために、口の中に石を詰め、手足を縛る。
そのあと、大きな鉈で、ゆっくりと犬の胴体の部分を真っ二つに切る。
しばらく、犬は死なずに苦しそうにもがく。
そして、完全に死に切った後に、犬の臓器を取り出して、それを水につける。
そして、水が赤くなるんだけど、その水のことを、「犬の血」として使う。
まぁ、もちろん、そのあとにいろんなものを混ぜたりするんだけど。
大体こんな感じ。普段はあんまり使ったりしないものかな?
残酷だし、手に入れるのもしんどい。
ただ、黒い犬の血は大抵「汚いもの」とされていて、妖怪とか幽霊から嫌われていて、そういうものを避けるのには有効なんだ。
そんで、黒以外の犬にも色々な使い方がある。
今回の場合、割と色が白い柴犬だったので、多分白い犬の血を使うことになる。
でも、白い犬の血というのは、めったに使わないものだ。
なぜなら、白い犬の血は、人を「殺す」ために使うものだ。
白い犬の血ってのは霊力が含まれているらしくて。
不吉なものを取り除けるとか、魔の病気とかを治すとか、そういう力があるらしいんだよ。
あとは、洗心術とかでも使うんだけど。
まぁ、それを聞くとなんだかいいものように思えるけど、でも、そう言うのは基本的に何かしらすごい術の媒体としての話であって、今だとほとんどそういうのについての使い方は伝わってきてないらしい。
なら、今は何に使うかというと。
「火消し」という術に使われる。
この火消しって言う術が、以前に言っていた「霊的な意味で死なせる方法」がこれだ。
人間は両肩と頭のてっぺんとで3つの炎がついているって話って前したっけ?
してなかったら、またあとで解説するとして、この3つの炎がある限り、人間の魂は肉体につなぎとめられている。
この火を消すためには白い犬の血を浴びないといけないらしい。
なので、間違っても、白い犬の血を肩とか頭のてっぺんとかにつけちゃいけない。
ころっと魂がどっかいっちまうらしい。
でも、逆にだれかの魂を四散させたいなら、白い犬の血をぶっかければ、その人は十中八九、霊的に「死ぬ」
火についての解説をすこしだけ
夜道をで歩いているとき、ふりかえっちゃいけないというジンクスがあるんだけど。
これも、両肩と頭のてっぺんにある火から来ているらしい。
ちょっと、うっさんくさいかもだが、その火はなんか神さまが人間をつくったときに、くれたものらしくて、3つそろうと一種の結界の力を持っていて、魑魅魍魎から人間を守るためにくれたものだとか、その火はめったなことがない限り、消えないんだけど。
いくつかの弱点がある。
まぁ、もちろん白い犬の血もそうなんだけど。
人間自身の息でも火は消えちまうらしい。
だから、人が振り返る時とかに無自覚に鼻の息で肩の火をひとつ消しちまうらしい。
だから、夜の時に、もし後ろのほうから気になる物音があったとしても、決して振り返っては、いけない。
なぜならそれは、人間に何かしら害をもたらしたいと思っている妖怪とかが、振り返らせて、その鼻息で肩にある火をひとつ消させたいがために、だましてるんだ。
白い犬の血とかの場合は割と消えた状態が長続きするんだけど。
まぁ、鼻息の場合は、いったん火を消したとしても、次の朝くらいにはまた元に戻るんだけど。
そんで人間が死んでも、その火そのまま消滅したりしない。
人から離れて、しばらくはそのまま燃えているらしい。
もしかしたら、これが鬼火の由来だったりとかなんとか。
まぁ、この火についてはもっといろいろ話があるんだけど。
今回のことに関してはそこまで関係がないから、ここまでにしておくね。
話を本筋に戻す。
俺は先生から渡された犬の死骸をどうするべきか少し迷ったけど、とりあえず先生に言われた通り「処理」しておくことにし、幸い、先生の弟さん一家の人はその場にいなかった。
俺は生臭いバッグを一回庭の隅に隠して、先生の弟さんとかから必要な道具を借りた。
まぁ、そんときにだけど。俺の体にも生臭い匂いがついたのか、不審に思われ、色々聞かれた。
俺は今晩に必要なものの準備とって、とりあえず弟さんをいいくるめた。
そんで庭から人払いしておいてほしいとお願いすると、死骸の「処理」に入った。
まずはバケツに、水を半分くらい入れる。
その後、水の中に唾を吐いて、もう二、三工程あるんだが、さすがに詳しく書きすぎるのはあれなので、省くとして、犬の臓器を取り出して水につける。そして、赤く染まった水をペットボトルにいれた。
もちろん途中に、水が肩や頭あたりに飛び散らないように注意しながら。
そして残ったものは、バケツも含めて、全部庭に埋めた。
最後の締めとして、その埋めた場所に桃の種をひとつ植える。
何かよくないものを埋めた場合、植物を植えるようなことをするのは有名だけど。
桜や柳とかはやめたほうがいいらしく、こういう時は大抵桃の種を選ぶ。もちろん相性の問題もあるけど。
俺が犬の血の処理をし終わると、あたりはうす暗くなってきた。
そのまま俺も風呂に入ることにした。
途中、弟さんの嫁さんにあったんだけど、あからさまに目をそむけられた。やっぱり匂いがひどかったのかと少し心配した。
そして、風呂ついでに仕事用の「衣装」に着替えた。
前にも行ったと思うけど、神さま相手の神主さんとかは小奇麗なかっこをしないといけないんだけど。
うちのような妖怪相手の商売は、むしろ逆で汚らしい格好じゃないといけない。
まぁ、でも汚さといっても色々あって、血なまぐささは妖怪的にだめらしい。
どっちかというと妖怪の好みの汚さってのは、泥とか、ほこりっぽさとか、そういうものだ。
なんというか、そういうものの方が、自然に近いのかもね。
だから、あらかじめ着古していて、あまり洗ってない服とかを用意してる。
しばらくすると、弟さんが晩御飯に誘ってくれた。
ミミズやら、犬やらで結構食欲なかったんだけど、一応夜に向けて、何か食べておこうと思って、彼について行った。
台所につくと、もうすでにミサトさんやら、奥さんやら弟さん一家はそろっていたが、先生は、いなかった。
先生はどうしたんですか?と聞くと、どうやらまだ寝ていて、起きる様子がない、と弟さんに言われた。
まぁ、こういう時は寝かせておくのがいいんだろうけど、ただ、俺的には今回の妖怪はミミズとかを出して食わせてきたりするし、なるべく空腹の状態とかで対峙するのはよくないのでは?とおもった。
食欲とかに付け込まれる可能性も微粒子レベルで存在していると思うんで、俺は起こしてきます。といって先生の部屋に行った。
先生の部屋のドアを開けると、中は真っ暗だった。
俺は先生、先生と2,3呼んだが。返事はなかった。
仕方なかったので、部屋の電気を手探りでつけた。
すると、すこしぎょっとした。
先生は目を開けていて、天井のほうをじっとみつめていた。
俺はおそるおそる彼に近づき、どうしましたか?ご飯の時間らしいっすよ?と聞くと。
見えるか?と、急に聞かれた。
俺は( ゚д゚)ポカーンってなったが、先生の目線のほうを見てみても何もなかった。
いえ、と俺が返事すると、先生はそうかと答えて、布団から出てきた。
そんで、俺はさらにが愕然とした。
先生の来ていた服が、寝汗でびしょぬれだった。
絞れば出るとか、そんな感じだった。