最終的に天命を漏らしつくしてしまった人間はどうなっちまうかというと。
552 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/10(金) 21:56:27.70 ID:dzEbhBxC0
「無くなる」
人間でいう意味合いの寿命は、人間が生きていて脳みそが動いている間のことを言うけど、天命の意味合いでは、寿命というのは、その生まれる前から、死んだあと、死体も完全きれいさっぱり無くなっちまうまでの時間のことを指す。
つまり、完全に寿命をなくしちまったものは「無くなる」
世間一般でいう物理的な失踪以外で、神隠しとかなると、この理由がとても多いんだよ。
まぁ、だから一度神隠しにあうと、よく次なりやすいとかいわれるけど、そりゃあ、寿命大部分なくしてるんだからね。
いつ天命がつきて消えちまってもおかしくないんだよ。
だから、天命漏らしで生存した場合、別に歳を異常に取って帰ってきたりしたない。
取られた量にもよるけど、普通に歳とって死んでから、死体が消えるのが普通より早いとか、そういうこともあったりする。
節分そろそろだけど、みんな豆まきするのかな?
やるんならちゃんと作法をとか見てからやったほうがいいと思う。
一人暮らしとかでやるとなかなか恥ずかしいけどねwww
明日の夜から少し暇になるので、また来るよ。
豆まきの作法は大体ググるといいよ。
人間どうしが礼儀があるように、そう言った目に見えない類との間も、礼儀は必要だな。
例えば、挨拶すること自体はすごくいいことなんだけど。
ある人の挨拶の仕方がビンタだとしたら、その人のことをどうおもう?みたいな感じかな。
今さら感はあるんだけど、初詣とかで神社におまえりに行くときって、みんなお願いごととかするよね?
でも本来は、お願いをするために行くんじゃなくて、感謝をするために行くものだった。
去年一年間いつも通り幸せに暮らせてありがとうございました。来年もよろしくお願いします。見たいな感じに、神さまとか実際にいるかどうかはともかく。
日常に感謝を持つことが大切なのかもな。
続き
そんでもって、天命漏らしした人間自体は漏らした天命を覚えていない。
これは妖怪が忘れさせるのか、それとも知らないはずのことを知ったとしても、知ったままでいるのはおかしいから、天罰みたいな感じで強制的に忘れ去られるのか、分からないんだけど。
言ったかわからないけど、まず人間がなぜ天命を知ることができるのかというと。
どういった宗教や地域の神話でも、人間は神さまが作った残されている。
その神さまって言うのは、もちろん妖怪が祭られてできたような茶ちゃっちいやつじゃなくて、天地を創造するクラスの神さまだ。
日本神話的だと人間は神さまの子孫と呼ばれてるしね。
他の国だと、神さまの息からできたり、神さまの乳首からできたり色々だけど。
でも、人間というのは神さまの一部だったんだよ。
つまり、量は少ないけど。質的には人間と神さまはほぼ同じらしい。
これも人間が動物とかと比べたら、かなり修業しやすい理由のひとつだね。
よくある昔話で、たかが数十年修業したお坊さんが、何千年も頑張った妖怪を封印できたりする理由がここにあるのかもな。
まぁ、話がそれたんだけど、そのため人間は天命漏らしができる。
しかも、した後はしばらくはそういう神であった部分が刺激されて、目に見えないようなものたちに対して敏感になってしまう。
先生の姪さんは、まさにこの状態だね。
まぁ、天命漏らしについては、あくまで昔俺の教わった話で、先生と弟さんがいたその場ではしなかった。
先生は霊感のほうは大したことにならないと弟さんに言った。
今は色々見えすぎていてひどいらしいけど、そのうち落ち着く。もちろん、少しは後遺症として残ってしまうらしいけど、それを聞いた弟さんは少し安心したみたいだけど。
ただ、問題は、寿命がかなり縮んでいる可能性がある。と、先生は続けた。
弟さんは驚いて、なんとかできないのか?と先生に聞いた。
先生はしばらく悩むと。難しそうな顔をして、こう言った。
「方法は3つある」
出たよ。俺は複雑な気持ちになった。
妖怪関係で、天命漏らしでちじんだ寿命を回復させる方法は、まぁ、色々あるんだけど。
その大体は妖怪を呼びだして、聞き出した予知を忘れてもらう。という手法だ。
人間の知識欲の話があったけど、人間は忘れたいと思えば思うほど忘れたいと思う知識は頭にこびりついていって、自分から忘れられない。
でも、妖怪はそれと違う。
忘れたいと思ったことをすぐに忘れられるらしい。
そんで、おぼえていたいと思ったことはずっとおぼえてる。
だから、妖怪の恨みは妖怪自身が納得しなければずっとづづくし、納得すれば、すぐに忘れちまって、それで終わる。
昔のことでも重要なこと以外は全部忘れちまうらしい。
その忘れてくれるようお願いするのが第一歩。
その次なんだけど、妖怪が忘れたとしても、失った寿命が戻ってくるわけじゃない。
何かしらの方法でそれもなんとか元通りにしないといけない。
そんで最後なんだけど。
寿命を奪われないようにする。
これも結構大変で。一度とれたシールを貼り付けても、取れやすくなるのと同じように、寿命も勝手に多めに流れてしまうらしい。
これをなんとかしないといけなかった。
人間と神様はほぼ同等ということは、人間とは、その他の生体の中では1番ということ?
傲慢だなぁ
人間が一番偉いって意味じゃないよ。
修業のしやすさと、偉さは違うんじゃないかな。
人間は道行を積みやすい分、魔が育ちやすいんだよ。
先生のいう三つの方法のひとつ目。
それは「宏願」を発するというものだ。
天命漏らしの結果、寿命がなくなるんだけど、誰が寿命をとっていくかというと。
閻魔大王とかそう言うのじゃなくて、天道というか、この世界そのものが取っていくんだよね。
じゃあ、その寿命を天道に返してもらえばいい。
まぁ、もちろん、返して言えば、返してくれたら苦労しない。
そこで取るのが「宏願」だ。
本来の「宏願」というのは、いわば天に対する借金をするようなものだ。
言葉で説明するとなかなか分かりずらいと思うから。
今回も有名な一例で説明すると、みんなは地蔵菩薩ってしってる?
地蔵菩薩というのはまぁ、本当かどうかわからないけど、もともとは普通のお坊さんだった。
もちろんそれなりに徳は積んでいたけど、でも菩薩に至れるほどのものじゃないし、力もそこまでじゃなかった。
でも、心やさしいそのお坊さんは「宏願」を発した。
曰く「地獄を空にしなければ、地獄から出でることなし」と、まぁ、つまり地獄にはたくさんの悪い人がいて、心残りがあって成仏できない霊とか、もたくさんいる。
しかも、毎日現世ではそういう人がたくさん死んでいるから、その数は絶えない。
お坊さんは地獄にいるすべての人間を救ったり、改心させるまで、地獄から決して出ないと誓った。
これにより、お坊さんはそこまで道行を持っていなかったにもかかわらず、天道より、「菩薩」の位と力を前借して、地蔵菩薩になった。
もちろん、そのかわり、地獄を空にしなければ、永遠に地獄にいることになる。
というか、多分永遠にいるw
とてつもない願いをして、それを果たすための力とかそういうのを、世界から前借する。
このやり方を「宏願」というんだ。
もろちん、誓えばすぐ力が手に入るとかそんなことではないww
じゃないと、多分みんなやっている。
それなりに儀式とか準備して、修業も積んで、そして何より、その誓い事が天の意志というかなんというか、そう言うものの流れに沿っていて、しかも、それをやり遂げるという本物の決心が必要だ。
地蔵菩薩はもともと力がそれなりにあったし、何より願い事がすごく立派で、しかも、それを本当にやり遂げるというかたい心があった。
だから成功したんだね。
「宏願」自体はかなり前話した気がするけど、神道における神さまのなり方に少し近い部分はある。
ただ、もっと俗世的な例とかもあって。
たしか三国志で諸葛孔明もなんかの儀式をして、寿命を延ばそうとして、失敗したとか何とかあったけど、あれも一種の「宏願」だ。
漢という国を復興させるから、寿命もっとクレーてきなw
まぁ、そこまででかい願いじゃなくとも、もっち色々考えられる。
例えば、親孝行したいとか。何か重要なものを発明したいとか、地蔵菩薩ほどじゃないにしても、そういうのでも「宏願」を発することはできる。
そして、それ以降は、そのことを人生のすべてとして生きていく。
もしかしたら、世の中のすごいプロとかの人たちの中にも、無意識のうちに、この「宏願」というのを発している人がいるかもね。
そんで先生の姪の話に戻そう。
姪は天によって、寿命を取られてしまった。
ここで、「宏願」という手法を取る理由は、
「何々するから、寿命かしてー」の場合、「宏願」はかなり難しいが、
「何々するから、寿命返してー」だと、まだぎりいける感があるよな?
どうやら先生の中では姪を弟子にするのはすでに確定事項のようで、うちの流派「搬山」というのは前にも言った通り、なによりも、堅い意志が重要になる。
そのためのまぁ、身構えというかそういうものについての方法とかも少しはある。
それを踏まえて、姪にしばらく道行を積んでもらい。
それになりになったときに、何かしら「宏願」を発し、寿命を取り戻すという。割と長期的な方法だ。
まぁ、ただ、この方法の場合にもデメリットはある。
まずひとつに、長期的なものというと、つまりそれは少なくとも10年はかかる。ということだ。もちろん「器」の個人差はあるけどね。
でも、姪の天命は、いつ尽きるかわからない。
そんな悠長に構えていたら、すぐにでも神隠しにあっちまうかもしれないw
しかも、その過程で姪が自分の「道」と人生をかけるほどの願いを見つけられるかどうか、も実際のところわからない。
人生で結局なにしたいのかわからないまま終わる人間のほうが世の中大半だ。
搬山流で、見つけ方を学んだとしても、見つけられるかどうかは結局個人次第。
適当な目標で「宏願」に臨んでも、失敗するだけだしね。
二つ目の方法は
ひとつ目の方法のように時間のかかるものじゃなく短期決戦をねらうものだ。
その代わり、少し危険度もあがる。
これは姪さんに天命を漏らさせた妖怪を呼びだして、そいつと交渉して、漏らした内容を忘れてもらうというものだ。
前にも書いたが、人間というのは知識欲のせいで、何かを忘れようとしても、逆に印象が深まっちゃう。
そんでずっとおぼえようと思ったことは時にふらっと忘れちまう。
でも、妖怪の場合はそんなことなくて、おぼえたいと思ったことは永遠におぼえているし、思い出したくないと思ったことはすぐに記憶から消すこともできる。
もしその妖怪が、漏らされた内容に何かの執着がなければ
それを忘れてもらう。
その上で少し儀式をして、天命を漏らさなかったことにして、寿命を戻す。
ただ、この方法にも不確定要素がいくつかある。
まず、本当に妖怪が忘れてくれるか。
ここら辺は他力本願になる。
また、天命を漏らした場合、聞いていたのは妖怪だけじゃない可能性もある。
妖怪が何かしらの方法で自分だけ聞こえるような細工をしなければ
その時、周りにいた風、土、草、木とかそうものも広くカウントされる。
そうなった場合、もう手の着けようがなくなる。
そして三つ目の方法。
この方法はもっと確実性がある。
でも前の二つと比べてぐーんと危険度も跳ね上がる。
みんなはピンと来るかどうかわからないけど「件」って妖怪がいるよな?
まぁ、知らん人はググってみておくれ。あれも、重大な予言を残して天命が尽きて、死ぬんってのは有名だけど。
名前の由来は多分、人+牛で漢字で件になったんだろうね。
ただ、こいつには元々の名前があって。
仏教由来だった気がするんだけど「如是」という名前らしい。
「如是」は世の中にものすごい悪いことが起きようとした時に生まれてそれを予言する。
予言する。そんでその予言はほぼ回避できないらしい。
でもあまり知られていないけど、実はこの「如是」って妖怪の予言は、半分でしかないらしい。
残り半分はどうなるかというと。
「我聞」という妖怪が生まれて、それを残すはずらしい。
「如是」という妖怪は牛の体で、人間の頭を持っているらしいけど、「我聞」は、その逆で、牛の頭と人間の体を持つ。
「我聞」は「如是」が死んだあと、すぐにその10里以内に必ず生まれてくる。
そして、そこで「我聞」も予言のもう半分を残して死ぬ。
これでこの予言は完全に避けられないものになるんだけど。
もし、「我聞」が生まれた直後にこの妖怪を殺すことができれば予言は回避することができる。
それを踏まえてだけど。
実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に、「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。
第三の方法とは俺の時に言われた三つ目の方法と似たもので。
「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて、生まれてきてもらう。
そして、それを殺し、予言自体を不発にする。
不発になれば、予言はしていないことになるから。そこからまた寿命を呼び戻す。
まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介のは「我聞」を探して殺すという点だ。
まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。
さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。
それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。
なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは、どこか道を踏み外している行為だからね
3つの方法を話し終えると、先生の弟さんは難しい顔をした。
まぁ、どの方法を取るにしても、結局危ないのは変わりないからね。
弟さんは先生に、どの方法を取ったらいい?と聞いたが、先生は黙って首を振った。
そんで、最後どの方法を取るかは弟の娘自身に決めてもらおう、と言った。
ここで方法とか勝手に決めても、本人が納得しなければ、それをやることはできないのだ。
弟さんはそれもそうか……と切なそうな顔をすると、とりあえず、今日はもう遅いですし、詳しい話はまた明日にでもと言った。
彼も色々考える時間ほしいんだろうね。
先生と俺は自分にあてがわれた客室にもどり、そのまま寝ることにした。
部屋に分かれる直前、先生はお前ならどうする?とさりげなく俺に聞いてきた。
俺は分かりませんと答えた。
先生はめずらしく疲れたような口調で、やっぱり半人前だな。と言った。
その日の晩は腹がかなり減っていたせいもあって、なかなか寝付けなかった。
そんで、長い間目がぱっちりしていると、ついトイレに行きたくなってきたんだ。
トイレの場所はあらかじめ紹介されていたので、そこに向かった。
するとトイレの前には弟さんの奥さんがいた。トイレのドアは閉まっていて、中から「オエェ」と嘔吐する声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声で、どうやら先生の姪が入っているらしい。
俺はちょっと気まずくなった。
まぁ、こうなったのは自分の責任が大きかったので、正直あまり合いたくない相手だった。
ここから新しいやつ。
そのまま踵を返して、隠れて庭に行ってどっかの草むらにでも用を足そうと思ったが、トイレの扉の前にいた弟の奥さんはその前に俺に気がついた。
どうも、といった感じに頭を下げ、どうなされましたか?と聞いてきた。
俺は仕方なく、トイレをお借りしたかったけど、どうやら今は使えないようですね。と答えた。
奥さんはすみません、でも、今すぐ出させるので……
と申し訳なさそうな顔でそう言った。
いや、もとはといえば、俺が原因のようなもんだし、謝られても困るし、でも、実際尿意はやばかったから、ごゆっくりーとも言えなかったし、そう言うのもなんか違う気がしたから、俺はそのまま言葉に甘えることにした。
奥さんはトイレのドアをトントンと叩くと、ミサト、大丈夫?一度出てもらえる?的なことを言った。
そこで初めて、先生の姪の名前を聞いた。
すると、トイレの中から水を流す音がした。
そして、なにやらドタドタと体が壁に当たったする音とかして、トイレのドアが開いた。
中から出てきた先生の姪は赤い布のようなもので目隠しした状態だった。
この布のついてなんだけど。霊感ある人とかも試してみてもいいけど、赤い絹の布を2重にして目に被せておくと、幽霊はともかく。
大抵の妖怪は見えなくなるはず。
視界もかなりわるくなるんだけど、でもうっすらぼんやり物の大体の輪郭はわかるはず
先生の姪、まぁミサトさんはそれをしていた。
弟の奥さんは手に湯気が出ているお茶の入ったコップを持っていたんだけど。
それを彼女に渡して、2,3口飲ませた。
失礼します、というと、ミサトさんの手を引いて、俺のそばから通ろうとしたんだけど。
ミサトさんは急に「っひ」って小さな悲鳴をあげると、何かにつまずいたように、転んでしまった。
もちろん、何もないところだった。
奥さんはあわてて彼女を支えたんだけど、そのかわり手に持っていたコップのお茶が、俺の手にかかった。
結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げた。
そして、そこで目が覚めた。
あれ?っと、ぼんやりしながら思った。
あたりを見渡すと、泊っている客室だった。
しばらくして、目が完全にさめると。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていて、トイレに行ったのは夢だったと理解した。
妙に鮮明な夢だったけどね。
みんなはどうか知らんけど、俺はトイレに行く夢をよく見たいりする。
子供の時はそういう夢を見ると大抵そのままトイレで用を足して、そんで目が覚めると、おもらしをしてたりするんだけど。
大人になってからは、トイレに入って、用をたす直前とかに目が覚める。そんでそういう時は、いつもものすごくトイレに行きたい時だ。
もちろん、この時もそうで、俺はしょんベンしたくなった。
だから、夢の通りに、布団から這い出て、トイレに向かった。
トイレが見えたあたりになると、そこには人影があった。
弟さんの奥さんだった。
あれ?と、俺は激しいデジャブに襲われた。
そんでさらに近寄ると「オエェ」っと夢の中と同じ嘔吐するような声が聞こえてきた。
奥さんは俺が来るのを見ると全く夢の中と同じ口調でどうなされましたか?と聞いてきた。
不思議に思った俺はとまどいながらトイレを借りたいのですが…と答えた。
そこからの展開は全く夢と同じだった。
奥さんはミサトさんに大丈夫?と聞いて、彼女がトイレから出ると、お茶を飲ませて、そんで、2人は去ろうとするはずなんだけど。
そこで2人の動きは止まった。
そして、視線だけをゆっくりと俺のほうを向けると。
何とも言えないいやらしい笑みに顔がゆがむ。
俺はかなり驚いて絶句して、そして次の瞬間、急に奥さんがカップのお茶を俺にかけてきた。
結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げ、そんで、目が覚めた。
客室だった。
なんなんだよ。俺はそう思った。
夢の中で夢を見ていて、そんでそれがループした。
いや、ループしたとは違った。最後あたり、奥さんは明らかに悪意を持って俺に、お茶をかけてきた。
夢の中なんだけど、不思議にあのお茶の暑さには痛みを感じた。
俺はためしに頬をつねってみたんだけど、その時は痛みはなかった。
俺は察した。自分はどうやらまだ夢を見ているみたいだった。
俺は何かに導かれるように、また布団から這い出して、そのままトイレに向かった。
廊下がさっきと比べて大分暗かったような気がした。
ドアの前には奥さんがいた。
そして、やはりトイレの中からは「オエェ」とミサトさんの嘔吐する音がした。
いや、もはや本当に先生の姪のその人がミサトって名前なのかどうかはわからなかったけどね。
ただ、様子が少し変だった。奥さんはコップをドアにごん、ごんとぶつけていた。
コップはガラス製のものだったんだけど、少しずつ粉々になって言って、そんで奥さんの手はどんどんと血だらけになっていった。
その時はなぜかあんまり怖いとは思わなかった。
そのまま奥さんに近づいた。すると奥さんは「どうしたんですか?」と聞いてきて、俺は素直に「トイレを借りに」と答えた。
奥さんはそれを聞くと、突然いやらしい妙にねっとりした笑みを浮かべると、もう少し待ってくださいと言って、ミサトさんをトイレから呼び出した。
そして、ミサトさんの口の中に結構砕け散ったガラス片を入れた。
ミサトさんはそれを、やはりいやらしい笑みでひと噛み、ふたかみ、口から見る見るうちに血があふれ出てきた。
奥さんはそれをみると、俺にあなたもお腹が減っているならいかが?
と聞いてきた。
俺は断ったが、奥さんは遠慮しないでといってがっちりと俺の腕をつかんだ。
ものすごい力だった。
それを振りほどこうと頑張ってみたが、無理だった。
そして、ガラス片を無理やり、口の中にねじ込まれて、そこでまた、俺は目を覚ました。
口の中ですこしだけ血の味がした。
頬をつねってみたら、痛かった。
どうやら、やっと本当に夢から目覚めたようだった。
ほっと溜息をついた。
怖い夢はよく見るが、いつもは目が覚めると内容はよく覚えてない。でも、今回は夢の内容が鮮明の分、後味が悪かった。
しばらく、そのまま布団の中で、夢を思え返しながら、ぼんやりしたんだけど。
怖い夢だったし、トイレの夢だったせいもあってなのかわからんけど。
俺はまた激しい尿意に襲われた。
その時だ、俺はなんとなくわかった。
多分だけど、俺は今トイレに行くべきではないんだと。
でもおしっこは我慢できないほどだった。
だから、俺はトイレには、いかずに、最初の夢で画策したように、こっそりと庭に行って、草むらで立ちしょんすることにした。
布団から抜け出すと、忍び足で庭に通じる窓まで行って、その窓を開け、そこから庭に出た。
誰もいないことを確認して、俺はそこらヘんの草むらで、ズボンを下ろした。