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中編 心霊

先生の話2:妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?(11)【ゆっくり朗読】

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ではまぁ、先生の話の本題のほうを

729 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 19:59:30.08 ID:z3x+HMst0

その日は先生に呼ばれて、先生のところまでいったんだけど。
先生の最初の発言でびっくりした。

「もう一人新しく弟子をとることにした」

俺の顔はΣ(゚д゚;)って感じになって。

え?急にどうしたんですか?と先生に聞いたら、実は弟子にとるつもりのやつは、自分の弟の子供で、ちょっと込み入った事情から、そいつを入門させることになったとかなんとか、いきなりすぎる!相談ぐらいしてくださいよと俺は思ったが、まぁ、先生がいつの間にか勝手に色々決めるのはよくあったことだし、「ちょっと込み入った事情」ってのもなんか人の家庭の問題っぽいあんまり詮索しないことにした。

そんで、先生はその弟の子供に会うために、何日か後に、久しぶりに里帰りをするといった。俺は、え?先生が実家に!とかさらに(゚д゚;)だったが。

でも、そういえばこの時期って先生の父親が亡くなった時期だ。と思いだした。
いつかは忘れたんだけど、先生の父親は9月の終わりごろに亡くなったと、聞いたことを思い出した。

ちょうどその年は先生が大学入試の年で。
先生の気をちらさないために、危篤のこともそして、亡くなったということも、合格の発表までに教えられなかったらしい。

俺は少しびくびくしながら先生にこう聞いてみた。
先生の父親の墓参りとかしたらどうですか?と、

先生は俺のその言葉を聞くと、少し意外だったのか目を見開いた。
そして、4日ほど滞在する予定だから、もし気が向いたらいくかもしれない。と答えた。
俺はそうですかー、と相槌をうちながら、内心でやったー、4日間もフリーじゃ!と、ガッツポーズをとり、自由をどう謳歌しようか考えた。

ちょうど、この時期にだけど、先生に高卒認定試験を受けろと命令されて、夏に受けて、一度おちちまって、もっと勉強しろ的なことを言われて。

11月にある試験に向けて毎日、先生のところでそういう勉強させられた。
俺は勉強がすきってタイプでもないし、短い間でも、先生がブックオフで適当に買ってきた教材とおさらばできるのは感激ものだった。
そんな俺の考えを読みとってか。先生は俺にこういった。
ちなみに、お前の分の旅券も予約した。

どうでもいいが、ちょうど先日、二回目の試験受かったという知らせが。
でも、これがあると中卒じゃなくなるんですかね。
難しいというか俺の場合は圧倒的に時間が足りなかったw

先生の見立てでは、8月で合格、10月にセンター受けて大学に行けとか言ってた。
俺は自分はもう22だし、いまさらーとかいったが、先生は大学に行けば4年間を無駄にしたことを後悔するが、行かなかったら、一生を無駄にしたと後悔するっていってた。
さすがにセンターの申し込みはまにあわないか…
まぁ、できても碌な点数とれないと思うが。
大学はまぁ、まだ考える時間があるしね。

それから何日か後、俺は先生と一緒に先生の故郷に向かった。

特に場所は明言しないけど、海に面した県での小さな港町だった。

俺は、いくならいくで、そこまで反発しなかった。
先生の生まれた土地のことは少し興味あったし、自分のおとうと弟子になるであろう人物も気にならないというと大ウソになる。

しかし、新幹線に乗るとき、先生がまた高認の教科書を押しつけてきた時はさすがにげんなりした。

出発したのは早朝の8時くらいだったのだが、その場所に到着したのは午後の6時あたりだった。昼飯はおにぎり二つだけで、かなり腹が減った。

俺としては、先生が帰ることはもう家のほうには伝わっているし、関係が悪いにしろ、港町だし、お寿司とか食えるんじゃないかなぁとか淡い期待を抱いていたが。

もちろん、それは裏切られた。

目的地に着くなり、先生は俺をつれて人気のないところに向かった。

そして、持ってきた荷物をあさり始めて、すごく大きな釘を一本取り出して、アスファルトじゃない地面に打ち付けた。
先生は自分の髪を一本ぬくと、すこし頭を出した釘に結構複雑に撒きつけた。
俺はそれを見ると、少し驚いた。
これは「定山」という、うちの流派のなんというか決まり事で。

もしこういうのを見つけても、だれも抜かないでほしいwww

結構危ないときとかにやるもので、自分の魂というかそういうものを地面にうちつけるという意味を持つ。

だから、妖怪とかで魂持って行かれそうになっても、この釘が刺されってさえいれば、無事でいられるというものだ。

基本的に、釘をうったひとが一人。これを响搬といって。
この人が色々動きまわったりしても大丈夫なようになる。

その打ち付けられた釘を見守る人が一人。これを助搬という。
この人は釘が無事なのかずっと見守る必要がある。

釘で打ち付けれているとは、いえ、魂がそこにあるんだから。
いろんな悪いものが寄ってくる。だから、そういうのから釘を守る役割だ。

釘は市販のやつを溶かしたあとに、自分の薬指の血をいってきたらしたり、他にも色々やったりして、最後に、形にしたものだ。

俺は先生にどうしたんですか、急に?ときいたら、すこし兄が亡くなった場所を見てくる。見張っておいてくれ的なことを言って、日本酒を一本俺に渡すと、すたすたとどこかに行ってしまった。

俺はえ、でも、と言いかけたが。やはりやめることにした。

先生はあまり俺に助搬をまかせたがらない。
理由は簡単で、俺のまわりにいるイタチたちになにかいたずらをされるのが怖いんだろう。

でも、これを俺に任せるということは多分。

俺のイタチなんかより、遥かに怖いものに会いに行くんだろうと。
俺はそう感じた。

時期的に肌寒くなっていたころだったし、それに日も短くなっていて、もうほとんどあたりは真っ暗だった。

前にも書いたが、俺はあまり飲めないタイプではあったが、先生からもらった日本酒を一口だけ飲んで、後は釘のまわりに円を描くように撒いておいた。

すきっぱらだったから、すぐに酒で体がポカポカしてきた。でもさすがに量はそんなに取らなかったから、頭がぼうっとするようなことはなかった。

「定山」が魂を打ち付けていられるのは精々2,3時間だ。
それ以上長いと、魂は自分の体に戻ってしまう。

俺は携帯を取り出して、タイマーを3時間に設定した。
その時間になっても先生が来なければ、釘を引っこ抜いて、先生を探しに行かなくてはならなかった。

正直すこしこわかったのもあってか、いつの間にか俺の頭の中で、夏祭りの曲のサビの部分が延々と無限ループしてた。

うちあげハナビー
うちあげハナビー
うちあげハナビー

多分9回目ぐらいになったときかな。

今までお酒でポカポカしていた体がすっと、謎の寒気を感じた。

俺はドキッとしたが、すぐに釘の周りのお酒の濡れた後を見つめた。

ここからが本番であった。

お酒は水より乾くのが少しだけ早い。
もちろん、科学的にはアルコールが入っているとかそれだけなんだけど。

しかし、昔の人はこれを妖怪がお酒を「飲んだ」とおもっていた。

妖怪というのは大抵お酒が好きで、かなりな有名どころだとヤマタとかもそうだしね。

夜にお酒とかをこぼすと、そこにそういうものが群がっているように感じるとか、霊感ある人から聞いたことはある。

実際どうかは知らないけどね。

だから、まったく霊感のない俺はこういう風にお酒を少し撒いて、その渇きぐあいで、やばさを判断したりする。

そしてこの状況だと、そういうものの注意力を釘からそらす効果も期待できた。

酒のほうを見ると案の定、殆ど乾ききろうとしていた。
俺は急いでお酒をまた同じあたりに撒き散らした。

でも、こんなのはただの時間稼ぎにしかならない。

お酒の量にも限りがあったし、このペースじゃすぐにつかい果たすのは目に見えていた。
だから俺は持ち物のカバンをあさって、短いしめ縄を取り出した。

お酒を好む妖怪は大抵まだ話せる相手だ。
人間にとって害があるか、ないかはともかく、少なくとも交渉しようと思えばなんとかなる奴が多い。

だから、俺は一種の囲いを作ろうと思った。
中二的に表現すると、結界だけど、そんなすごいもんじゃない。

ここでいう囲いは言葉にすると意味合い的には「なわばり」という表現のほうがいい。漢字にすると「縄張り」だ。

つまり酒のあるほうの土地をお前らにやるから、代わりにこの釘の打ってある場所は俺のもんだから。入ってくんなよ的な暗黙のルールを結ぼうとした。

これにまつわる昔話もひとつあって。

昔々あるところに猿好きの爺さんがいた。
その爺さんは猿が好きすぎて、家族さえ捨ててしまい、何十匹の猿を飼った。
しかし、猿を飼いすぎてしまったせいか、餌代がたりなくなった。

だから、ある日の朝、爺さんは猿にこう言った。
「前までの餌は、朝に栗4つ、夜に栗4つだったが、今日からは朝に栗3つ。夜に4つで我慢してもらえないか?」

それを聞いた猿どもは激怒して、猛反対した。だって、朝の栗が一個減ったんだから!

怒り狂った猿たちを見たじいさんは、しょうがないなぁというような顔をして、
「わかった、わかった。もう怒らないでくれ!こうしよう。さっきは朝に栗3つ、夜に栗4つ。といったが、仕方ない。特別に朝に栗4つ、夜に栗3つにしてやろう。これで満足か?」といった。

それを聞いた猿たちは、朝に4つくれるのか?ならいいやと納得し、その案に賛成した。

夜のこと?そんなの夜にまた考えればいいじゃん。もし3つだけだったら、また泣き叫べばいいし。と猿たちは思った。

でも、実際に夜になって、猿たちがどんなに泣き叫んでも、爺さんは約束だからと言って、栗を3つしか渡さなかった。まぁ、あげたくてもカネがないからね。

猿たちはそれで納得するしかなかった。

人間もこの猿たちのことをバカにすることはできないかもしれないが、でも、妖怪はこの猿たちよりもっとゲンキンな奴らで、しかも、一度した約束は絶対に守る。

俺はしめ縄に「ハァ」と自分の息を吹きかけた。

あと3分の1くらい日本酒の入った瓶をもっとすこしだけ遠くの場所で、瓶でこんこんこんと地面を3回軽く叩いた。

そして、瓶をそのまま地面に置いて、いわゆる神社に行く時の二拝二拍一拝のようなことをして、最後に酒瓶を軽く蹴って、酒をこぼさせた。

これで、妖怪の気はこっちのほうに向くはずだ。

あとは急いで、釘のところに行って、しめ縄で釘と自分を囲えば良かった。俺は少しだけ安心して、釘のうちつけてある場所にもどろうとニ、三歩あるいたが、その時だった。

ピシャリと、何か濡れているものが、俺の肩をつかんだ。
その瞬間、足がまるで鉛のように重くなって、全身から嫌な冷や汗がどばっとふきだした。

耳のあたりから、なにか人の息遣いを感じた。
でも、もちろん生きた人間のような温かいものじゃなくて、すごく冷たくて、ねっとりとした嫌なものだった。
まるで掴まれた場所から吸い取られているかのように、俺の体の温かみが消えていった。

やばい。

俺もこの仕事をもう何年やってきたが、さすがに関わっちゃいけないものと、なんとかなるやつの区別とか付く。

その時俺の後ろにいた何かは、間違いなくやばいやつだ。

俺は自分の中の激しい振り返りたい欲求をなんとか我慢して、それでも釘のほうに行こうと必死に歩いたが、奇妙なことに、どれだけ歩いても釘に近づくことはなかった。

その頃になると、俺の心の中でも焦りが生まれはじめた。
そして焦りはどんどん恐怖へと変わっていって。恐怖は俺の理性を食いつぶしながら、どんどんと成長した。

俺はパニックになる寸前の状態だったが、最後の気合いをなんとかふり絞り、寒気でカチカチな足を曲げて、地面に左膝をつけた。
そして、頭をあげ、はるか空のほうを見上げた。

流石は田舎。あたりは真っ暗だったし、いい感じに星空が見えた。
北極星を見つけると、俺は手で銃の形を作り、そこに向かって「バン」と口で言った。

なにか由来のある術とか、由緒ただしい技とかじゃない。
強いて言うなら、もう名前さえ忘れたんだけど。昔みたアニメの主人公のかっこいいライバルが死ぬ前にやった行動で、自分で決めた、自分を落ち着かせるための一種の儀式だ。
退治の時に一番怖いのは相手の妖怪じゃない。
自分自身の心の中に眠る恐怖だ。

人間でも同じだ。
交渉するときに、弱気になると、相手は強気になるし、こっちが強気になれば、相手は弱気になる。

怖がれば怖がるほど、対峙しているものは勝てないものになっていく。
でも、逆に、落ち着いて、自分の友人といるような心持になれば、相手側も心を開いてくれる。
俺は怖くなった時、この行動をして。あのとき見たアニメを思い出す。
そんで星空を見上げると、なんというか自分とか妖怪とか全部がちっぽけな感じがして、
心の何もかもが穏やかになっていく。

ハタから見たらかなり痛い行動だったかもだが、そんなことは気にしていられなかった。
そこから俺は、2,3回深呼吸をしたが、もっと気分がよくなった。
海潮の香りが微かにしていた。

これが終わったら、絶対先生にうまい寿司を奢らせてやる。
そんなことも考えた。

すると不思議なことが起きた。

さっきまでがっしりと俺の肩を掴んでいた「何か」の存在が急に消え、体が自由に動くようになった。

俺はすぐに立ち上がりながら、手のひらに唾をかけて、ぽんぽんと額を4回たたいた。
そして、今度こそ、釘のほうに向かい。しめ縄で俺と釘を囲った。

周りに撒いた酒は殆ど乾ききろうとしていた。

急いで俺は「そっちの酒と、この円以外の場所はお前らのもん、でもこの円の内側は俺のもん」といった感じに詩を読み上げた。

それからどれくらい時間がたったか。
俺は囲いの中でひたすら、じっとしていた。

普通ならこういう風に時間を潰す時、携帯いじったりするだろうけど、今の状態だとそれができなかった。

携帯の液晶が鏡になって、なんか変なものが見えるのを避けるためだ。

だから、かなり手持ち豚になってたんだけど。

さっきよりはだいぶ落ち着いていたのか。
また心ん中で夏祭りのメロディーがループし始めた。

そんな中、急に「ぴぴぴぴ」と携帯のタイマーがなったときは結構びっくりした。
俺は「あ、まじかよ。先生3時間たったのに帰ってこないのかよ」と思った。

これはつまり先生の身に何かが起きたかもしれないということだ。

俺はまた焦って、地面に突き刺さった釘を抜こうとした。
今すぐ先生を探しに行かないと。

「定山」をやり終わった後の釘とかは使いようによっちゃ、「定山」をやった人間を呪う道具にもなるから、回収して、ちゃんとした処理をしないといけない決まりがあった。

でも、手が釘に触れたところで、俺はぴたりと動きを止めた。

うちあげーハーナビー

これで78回目だ。

仕事をしているとき、時間を気にすることは多い。術や儀式によっては、やり始める時間とかもちゃんときまってたりする。

でも、時計や携帯の時間というのはあくまで目安で、完全に信用できない。
なぜなら、妖怪に「目隠し」されて、変な時間が見えてしまうのだ。

大抵は蝋燭とか線香とかの短さとかで時間を大まかに判断する。

次点として、こういう風に音で判断できるものを使う。
そして、それもできない場合は心の中で図る。

俺の場合、それが「うちあげーハーナービー」のサビの部分だ。

心の中で図る場合、焦って早く回数を数えてしまうこともあるが、遅くなるという場合はめったにない。

さすがにタイマの音が鳴るのは早すぎないか?と数えた回数を思い出して、心の中で引っ掛かった。

そういえば、今の携帯の音、聞こえたのは俺のポケットからじゃない。

俺の後ろのほうからだ。

俺の動きはそこでピタリと止まった。
ポケットから携帯を出して、なるべく液晶をのぞきこまないように、時間だけを見た。まだ2時間にもなっていなかった。

確かにそれまではなんか大人しいなぁとか疑問に思ったりしたけど、俺の携帯の音をまねするとかこういうパターンはやっぱり奴らだ、と思った。
特に証拠はなかったが、長い付き合いだし、これはイタチたちのいたずらであるとなんとなく確信した。

わりと危ないところだった。
もし本当に釘を抜いちまって、先生になんかあったら、結構心に来てたはずだ。

まぁ、イタチたちの狙いはそれなんだろうけど。

俺がそのまま、釘に触れていた手を離すと、どこからともなく「ち」というような舌打ちする声が聞こえた。

先生が戻ってきたのは、それから約30分後だった。

かなり疲れた顔をしていて。

俺はどうでした?と聞いたが。何もなかったよ。と首を振って、それ以上何もいわずに釘を回収すると。

先生は本来の目的地にもくもくと、向かい始めた。
まぁ、なんというか複雑そうなので俺も何も聞かなかった。

しばらくすると先生の実家のほうに着いたんだけど。
それなりに大きなお寺で、あまり表現しすぎるとすぐ流派とか分かっちゃうから。
具体的な部分は省く。

出迎えてくれたのは先生の弟とその嫁さんと先生の母で。
どうやら、弟のほうが寺を継いでいるみたいだった。

母は先生に大きくなったねぇとか言ってて涙ぐんでて、俺は晩御飯を期待したのだが、なんというかそういう雰囲気じゃなかったというか、さすがに初対面の人たちにご飯は?とか聞く勇気もなかった。

俺は弟さんの嫁さんにとまる客室に案内してもらうと、そのまま放置プレイをくらった。

先生はさすがにつもる話しでもあるのか、弟さんと母親さんと家のどっかに消えていった。

携帯で2ちゃんのスレみながら、空腹を紛らわすこと2,3時間。
先生が部屋に来て、ちょっと来いと言われた。

先生は弟さんと一緒にいて、弟さんはメガネをかけていて一人称が僕で、かなり丁寧な印象な人だったんだけど。どこか不安げだった。

その二人について、家の中を進んでゆき、とある部屋でとまった。
弟さんが部屋をノックして、入っていいか?と聞くと、部屋の中から、どうぞ。と女性の声がした。

中に入ると、そこは13歳くらいだろうか?中学生っぽい感じの女の子がいた。部屋は年相応というか、これが女子なんだなーって感じの部屋で。

目立つ所に書道のなんかの賞状が貼ってあった。
女の子はベットから体を半分起こしている感じで、見知らぬ人がいることにびっくりしていて、少しいぶかしげにこちらの様子をうかがっていた。

弟さんは、こちらが前に言っていた人だよ。という風な感じに先生を紹介すると、先生とその子はお互い軽く会釈をした。

そんで、その次にちょうど俺も紹介されそうになった時、俺はその女の子と目を合わせた。

すると、なぜか女の子は急に手で口を押さえた。
顔色も見る見るうちにものすごい勢いで真っ青になって。

そのまま、吐いた。

弟さんはそれを見ると急いで嫁さんを呼んた。
嫁さんは先生の母親さんと一緒にやってきて、女の子の周りの惨状を急いで片づけ始めたり、大丈夫?とか女の子に聞いたりした。

俺は状況がわからず、ウヘエ~って感じだったんだけど。
先生は弟さんと2,3、小声でしゃべると、ついてこいと俺に言って、すこし離れた部屋に移動した。
その部屋は和室で、先生のが泊る部屋みたいだった。

そんで、三人で座布団に腰をおろすと、俺は、あの子は?と先生に聞いた。
先生はお前の妹弟子になる人だ。と答えた。
俺はびっくりした。

さすがに女だとは思わなかった。
なんせ、うちの流派は女を入れない決まりはないが、やっぱり女性を忌避する部分がある。

なぜなら、女性は男より変なものに入り込まれやすい。
それはイタコとかそういう意味合いでは役に立つが、うちのやり方だと、正直ただの足手まといにしかならない。

どうしてまた女性を?と俺は聞いたが、あの子は少し危なくてね。と先生は答えた。そして、弟さんに、それにしても、またひどくなったのか?というような言葉を投げかけた。

弟さんはすこし言いにくそうになったが、どんどんひどくなる一方だ、と答えた。

先生はそれを聞くと、俺のほうを見て、なら仕方ないなぁとつぶやいた。

俺は良く状況がつかめなかったんだけど、さっきの女の子の様子とか、このやり取りとかを見て。少しピンと来て、もしかして、あの子って霊感あるんですか?と先生に聞いた。

先生は、ああ、そうだ。それも随分とはっきり見えるようだ、と頷いた。

俺も仕事柄上たまに霊感があるというひと(自称だから本当かどうか知らんが…)と、たまに関わり合うことがあるんだけど。

みんな結構俺のことを嫌な目で見る。なんか後ろのほうでたくさんの真黒な何かがニタニタとしているらしい。
まぁ、もうそれが何かは分かり切ったことなんだけど。

でも、目を合わせただけで吐かれたのは初めてだった。

弟さんは、あの子は小さいころから、少しは見えていたらしいけど、本当にひどくなったのは二か月前のある出来事からだ、とその時のことを話し始めた。

女の子は小さい頃はわりと変なものが見えるとか言ったりしていたが、その頃にはもうそんなこともなくて、普通な子って感じだった。

その日は土日だったんだけど、女の子は学校に部活しにいってて。
帰りがすこし遅くなると家に伝えていた。

でも、いくらたっても女の子は戻ってこなくて、夜の10時くらいになると、さすがに弟さん家族は心配になり、女の子の友達に電話したり、学校のほうに聞いてみたりしたが、なんと、女の子は部活にも行っていないという答えを得た。

とりあえず、弟さんたちは12時まで自分たちで女の子をさがして、それでも見つからなかった場合、警察に通報しよう。と話し合い。

近所の人とかに女の子の行方を聞いたりして回った。
近所の人たちも女の子が消えたことを聞くと、捜すのに協力してくれて、町を結構くまなく探した。

でも、女の子はどこにも見つからなかった。

捜している人たちがまじでやばいんじゃないか?とか焦り始めたころ。
町の近くの草むらに、女の子の名札のついた制服が見つかった。

捜していた人たちが急いでそのあたりをさらに探してみると、少し離れたところに女の子のカバンがあって、さらに離れたところにスカートとか、靴とか、どんどんと町の離れの海の崖のほうに続いていた。

大人たちはそっちのほうに向かった。

これはもしかしたら事件かもしれないと、誰かが警察にも連絡した。

場所に着くと、あたりはもちろん真っ暗なので、懐中電灯の光をたよりに、何か手掛かりがないか探した。

すると、崖の近くの大きな岩の上に人影があった。

近づいて、光を当てると。そこには女の子の姿があった。
ほとんど裸で、両手に何か持っていて、何か楽しそうにぶつぶつ言っていた。

それを見た弟さんは急いで女の子のほうにいったんだけど。
女の子が持っているものを見ると唖然とした。

女の子は小さな木の枝を箸のように片手で持っていて、そして、もう片方の手には石を持っていて、その石の上には大量のミミズがいた。

女の子はさもおいしそうに、ミミズを木の枝で挟むと、口に放り込み、ひとかみ、ふたかみ、ごくり。

彼女は生きたミミズを啜っていた。

異様な光景に弟さんは凍りついたんだけど。
他の大人たちが来るのを手で静止した。なんせ女の子は裸だ。

その間もずっと、女の子は目の前に誰かがいるかのように、その何かに、ひたすら話しかけていた。

何を話しているのかは良く聞こえなかったらしい。

弟さんも少しも知識があったみたいで、ごくりと唾を飲み込むと、懐中電灯を一度消して、光を出すガラスの部分にはぁーと息を吹きかけて、女の子が話しかけている場所に向かって、一瞬だけ電灯をつけて、またすぐに消した。

その一瞬に、弟さんは見た。

何もなかったはずの場所には、なにか動物のようなものがいた。
弟さんはかなり怖かったんだけど。
それでも、自分の娘を助けたい一心で、覚悟をきめた。

数珠を握り締めると、大声でお経を叫びながら女の子のほうに走って行って、手に持ったミミズを払い落した。

すると、女の子はたちまち無表情になって、弟さんをじっと見つめた。

弟さんはそんな女の子に服をはおらせる、なんとか彼女を大人たちのいるほうに引っ張って行った。

ちょうどそのころには警察も来ていて、全員急いで彼女を病院のほうに運んだ。

いつの間にか女の子は気を失っていて。意識を取り戻したのはそれから2日後らしく、失踪している間のことは全く覚えがないらしい。

そして、弟さんは彼女を無暗に刺激したくなかったし、どんなふうに見つかったのかは、女の子に黙っていて、彼女は自分に何があったのかまだ知らない。とのこと。

俺はこの話を聞き終わると、ふと、これってもしかして「天命漏らし」じゃないのか!?と思った。

もしそうだとしたら、女の子は確かにかなりヤバい状況だ。

「天命漏らし」というのは、占いの業界で気をつけないといけないことなんだけど。
未来をはっきりと、誰かに伝えることで起こる。
まぁ、占いとかで本当に占ったのか嘘八百なのはともかく。
みんな曖昧にしか言わない理由がこれだ。

はっきりと誰かに未来を伝えてしまうと、その未来までの時間分の寿命が、聞いた相手も、教えるほうも、ちじむというものだ。

だって、未来に起こるはずのことを今知るというのはおかしいから、そのぶん歳をとる。と理解すればいいのかな?
というものだ。

これは漢字からもわかることなんだけど。

天命というのはまぁ、運命とかそういう意味なんだけど。
「寿」という漢字の意味も、確か本来は「天命」からきたはずで、「天命漏らし」がそのまま「寿漏らし」につながるわけだね。

だから、普段の生活でも、もし予知夢とかみたら、あんまり他人に伝えないほうがいいね。寿命ちじむんだ。

あとすごい予言者とかが預言書書いたりするけど、それが全部意味不明な言葉だったりするのもこれを恐れてだ。

そして、妖怪は占いとかを通して未来をしることはできないんだけど。
人をだまして、人を通して無理やり聞き出すことができる。

こういう風に妖怪が人間に何かをおもてなしして、さらに話しこむ場合は大抵、人間をコントロールして占いとかさせて、天命を聞きだしている。

妖怪はあんまり寿命とか気にしないけど、人間側からしたらたまったもんじゃない。
そのまま漏らし過ぎて死んでしまう例もある。

俺は先生に自分の思ったことを伝えると、先生は自分も同意だと答えた。

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