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鳥になった男【世にも奇妙な短編集】

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俳優の町田邦弘が病院に駆けつけると、もう亜矢の鼓動は止まっていた。妻を早くに亡くした彼は、男手一つで亜矢を育ててきた。まだ二十三歳、早すぎる死だった。

 娘が自宅マンションから飛び降りた原因は知っている。ある男に捨てられたからだ。そしてその男は、町田にとってはあまりにも身近な存在だった。

 今や若手俳優の中でも、突出した人気の風見壮太。風見は背は高くないが、色黒で野性的な風貌。空手で鍛えた肉体は、時に半裸で女性誌の表紙を飾る。

 たまたま共通の友人がいたことから、亜矢と風見は知り合った。まだデビューもしていなかった風見は、どこにでもいる普通の青年だった。

 出会ってすぐに意気投合した二人が恋人同士になるのには、さほど時間がかからなかった。亜矢はいつも、嬉しそうに風見のことを父に話していた。その後風見は俳優デビューし、町田とも何度か共演したが、風見に対して悪い印象は抱かなかった。

 しかし、幸せは長くは続かなかった。「別れよう」その一言だけ残して、風見は亜矢から去っていったのである。

 その直後、写真週刊誌で風見の熱愛が報じられた。相手は、映画で共演した若手女優の桐島ななみ。亜矢は二股をかけられていたのだ。

 そして、熱愛が発覚して三日目に、亜矢は自ら命を絶った。悲惨なことに、彼女はお腹に風見の子を宿していた。後からそれを知った町田は、風見への復讐を誓ったのである。

「こんにちは」
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 事務所の女性スタッフに紹介され、町田は零美の店にやってきていた。復讐計画を実行するにあたり、どうしても確かめておきたいことがあったからだ。

「今日は、ある男性を観ていただきたいのですが」
「わかりました。その方のお名前と生年月日を教えていただけますか」
「名前はちょっと言いたくないのですが」
「大丈夫ですよ。では、生年月日だけお願いします」

 町田は風見の生年月日を伝えた。それを基に、彼の命式を出した零美。

「この男性はどんな人ですか? 娘と付き合っているみたいで」
「この人はですね。子どもっぽいところがありますね。自分の感情に素直で、すぐ顔に出るタイプです」
「なるほど」
「甘え上手ですね。女性に甘えるのが上手いと思います。夢を語るのが好きですね。女性は、こういう人は放っておけないかもですね」
「悪い人ではないと?」
「そうですね。人を信じやすくて、人を騙すより騙されやすいかも知れませんね」
「なるほど。悪い人じゃなくて安心しました。ありがとうございます」

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 町田は、深々とお辞儀をして帰っていった。零美は町田を見送りながら、「あの人、どっかで見たことあるなあ」と考えていた。

 その日の夜、テレビを観ていた零美は突然声を上げた。

「この人、今日ここに来た!」

 膝の上に乗っていた和美は羨ましそうに「いいなあ。私この人のこと、割と好きなんだけどなあ」と言った。「和美は丁度、外に出てたもんね」と零美は笑った。

 町田は、二時間ドラマの撮影で北陸に来ていた。サスペンスドラマの聖地としても有名な、断崖絶壁の絶景が臨める場所だ。

 町田が扮する刑事が追い詰める犯人役には、風見壮太を推薦した。「彼にぴったりの役だと思う」と。大御所俳優の推薦とあって、配役はすんなりと決まった。

 物語のクライマックスに、追い詰められた犯人が崖から身を投げる。そのシーンを撮るためにやってきたのだ。もちろん、実際に飛び降りることはない。うまく編集するのである。

 しかし、風見は実際に飛び降りてしまった。彼の誇らしい肉体は、日本海の荒波に飲み込まれていった。おそらく、助かるはずがない。

 どうして飛び込んでしまったのか。そこにいた誰しもが疑問に思った。警察が到着し、全員に話を聞いたが、皆一様に見たままを話した。その結果、事故死として処理された。結局、死人が出たこのドラマは、お蔵入りとなったのである。

 自宅に戻った町田は、娘の写真に向かって呟いた。

「仇はとったよ。亜矢」

 娘の復讐を果たすために町田が習得したもの、それは催眠術だった。高所恐怖症だと言う風見を落ち着かせるために、撮影直前に催眠術をかけたのだ。

「大丈夫。私が一、二、三と言うと、君は高いところが怖くなくなる。断崖絶壁に立っても、全然怖くなくなるんだ。そう。君は鳥になる。大空高く飛ぶ鳥だ。鳥は高い所でも平気だろう。君はこれから鳥になるから、高い所に立っても怖くない」
「僕は鳥になる。鳥だから、高い所も平気だ」
「そう。君は鳥だから、全然怖くなんかないよ。僕が、危ない! って叫んだら、鳥のように空を飛ぶんだ。さあ、一、二、三!」

 そして彼は、鳥になって空を飛んだ。

 町田は、催眠術の本を開いた。そこには、「催眠術にかかりやすい人は、想像力のある人、集中力のある人、感情豊かな人、依存心のある人、素直な人など。職業では、俳優などのアーティスト」と書かれてあった。

[出典:http://kaminomamoru.com/novel/long/shinreikanteishi-kagamiremi-2/91-torininattaotoko/]

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