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短編 怪談

小さな手の跡

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学校につきものの怪談ですが、表に出ない怪談もあるのです。

9 :「小さな手」:2000/09/16(土) 23:39

わたしが転勤した学校での話です。

美術を教えているわたしは作家活動として自ら油絵も描いていました。

住まいは1LDKの借家のため、家で大きな作品を描くことができず、放課後、いつも学校の美術室に残って作品を描いていました。

今度の転勤先でも同じように美術室の一角で制作を続けていました。

ところが妙なことに気づきました。

作品の表面に小さい子供の手の跡が付いているのです。

油絵というのは乾きが非常に遅く、完全に乾くのに1週間かかることもあります。

わたしが知らないうちに誰かが触ったのかと、あまり気にもせず制作を続けました。

手の跡も絵の具で上から塗り重ね、消してしまいました。

しかし、次の日も子供の手が跡が付いていました。

1個どころではなく、作品の表面全体にびっしり付いていたのです。

100号という大きさの油絵ですので、単なるいたずらではないなと感じました。

その日は作品全体の手の跡を消しながら描いているうちに作品の山場にさしかかり、9時、10時、11時と、いつしか夜中になってしまっていました。

わたしの筆の音しか聞こえないはずの美術室に、いつごろからか猫の鳴き声とも赤ん坊の声とも言えない泣き声が聞こえるようになりました。

窓を開けても猫の姿はなく、赤ん坊も当然いるわけもありません。

気にせず制作を続けていると、どうやら美術室の中から聞こえるようなのです。

泣き声のする方向を絞っていくと、美術室の後ろにある工芸用の電気釜の中のようです。

電気釜は焼き物を作るときに使う大きめのゴミ箱ぐらいの大きさのものでしたが、故障なのか長い間使った形跡はありません。

フタを開けると、本当に生徒がゴミ箱がわりに使っているらしく丸めた紙くずなどで内部が一杯です。

転勤してきたわたしも片づける暇もなく放置したままだったのです。

わたしが恐る恐る電気釜に近づいていくと、泣き声がふと止みました。

ひょっとして生徒が子猫を閉じこめたのかもしれない、そんないたずらをする生徒がいるなら作品についた手の跡も納得できる。

わたしはいたずらの正体を見破るべく電気釜のフタを開け、紙くずを拾い出しました。

美術室に響く紙の音は気持ちのいいものではありませんでした。

手に取れるゴミは拾い出しましたが、猫など見あたりません。

電気釜の底の方には乾いた砂が溜まっていました。

わたしは砂に手を突っ込み中を探りました。

指先に手応えがあるので取り出してみると、それは骨でした。

動物のもののような骨。

わたしは恐くなりそれ以上手を突っ込むことはできず、美術室を飛び出しました。

翌日校長にこの出来事を話したところ、「すべてこちらで対応するから他言しないように」と強く言われました。

その後聞くところによると、わたしが転勤する前、不倫の末妊娠し退職した美術の女教師がいたということでした。

その人は現在消息不明だということです。

あの小さな手の跡と赤ん坊の泣き声は、一体何だったのでしょうか……

(了)

[出典:Asahi Radio Webio「電脳百物語」大阪市北区 藤原光雄さんの体験談]

 

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