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守護犬

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昔、庭で柴犬を飼っていた。

賢い犬で、人に吠え掛かるということがほとんどなかった。

ある日、同居の祖父が亡くなった。

弔問客やら業者やらいろんな人が出入りするので、邪魔にならないように彼を家の裏に繋ぎかえた。

一日放置されたのに吼えることも鳴くこともしなかった彼が、祖父の棺を運び出す段になって悲痛な声で遠吠えをした。

裏手にいた彼に見えていたはずもないのに何か分かったらしい。

それまで遠吠えなんて一度もしたことがなかったのに、ものすごくよく通る声で長く響き渡った。

辺りが静まり返って、皆が「(犬にも)分かるんだね。見送ってるよ」と言った。

悲しさに満ちた声で、一生忘れられない声になった。

彼にまつわる話で不思議に思ったことがもう一つある。

庭で育った彼は家にあげられるのが嫌いだったのだが、高校生の私が一人だけで週末の二日間留守番しなければならなかったとき、夜、心細かった私が彼を家にあげようとすると、すぐに部屋に入ってくれた。

庭が好きな彼は普段なら絶対に嫌がるのに、大人しく私の横に寝てくれた。

ところがぴったり一時間に一回外に行きたがる。

最初はトイレかと思ったが、普段なら散歩中に用を足して庭では絶対しない。

しかも回数が多すぎる。

不思議に思ってあとをついていくと、彼はなんと家の周りをぐるりと一周してあたりを探るようにかぎ回り、パトロールして戻ってきていたのだ。

翌日(日曜日)の昼間、バイト先から男性職員に送ってもらって帰ったとき、お礼にお茶を出そうと思ったのだが、普段は吼えない彼がうなりまくって、頑として門から先へ職員を入れることを阻んだ。

セールスを追い払うことはあっても、客に吼えたことなんか一度もないのに。

噛み付かんばかりの勢いで、どんなになだめても駄目だった。

職員と相性が悪いかと言えばそうでもなく、以前来た時とその後来た時は何の問題もなく、吼えることもうなることもなかった。

彼は家に私一人しかいないことを知っていて、私を守ってくれていたのだと思う。

(了)

 

埼玉の怖い話 [ 桜井伸也 ]

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