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中編 集落・田舎の怖い話

雀塚【ゆっくり朗読】3026

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東北地方の民族文化を研究してる大学の教授が雑談として話したんだけど

268   2006/06/19(月) 12:48:06 ID:Qb3BRu9I0

東北地方に『雀塚』というのがいくつかあるらしい。

何も雀を弔ってる訳ではなくて、子供を弔ってる。

どういうことだろうと思ってると、なんでも昔から飢饉や食料不足になると口減らしとして、長男は家督を継ぐし女の子は女郎として遊郭に売れるからいいのだけど、長男以外の息子・次男や三男なんかは、正直いてもしょうがない存在になるそうだ。

で、飢饉や食料不足になると村の大人達が口裏を合わせて、ある晩ある事を決行する。

それは子供達が寝静まった頃、一軒一軒大人達が回って次男以下の男の子を総出で抱きかかえ、村の近くに掘った深い穴に投げ込むそうだ。

で、投げ込まれた男の子達はそこで自分の運命に気付くわけ。

最初の数日は助けを求める声がしてくるのだけど、誰も素知らぬ顔で、でもそれがだんだんと小さくなって聞こえなくなったら、穴を埋めに行く。

穴にいくのだけど、まだ数人は生きてる。なぜなら共食いをしてるから。

それでもまぁ死んじゃって、大人達は穴を埋めて塚にする。

彼らの魂が鎮まるようにって、でそれが雀塚。

そのおかげで食料不足は越えられるんだけど、それをやってしまうと、なぜかその集落はそれから男の子が生まれなくなって、集落はいずれなくなってしまう。

そういう集落がたくさん出てきたらしく、彼らは考えた。

長男の名前に似た名前を一つ考えて、次に生まれた女の子に少し変えて名前をつけた。

「かずあき」なら「かずこ」みたいに。

それでその女の子を次男以下の男とみなして、遊郭にも売らず大切にした。

なんでも人の気持ちの持ちようで、それで大丈夫だろうと思うと、普通に男の子も生まれるようになったらしい。

教授は呪いなんかじゃないって言ってたけど……

なので、自分の名前と妹の名前が似てるなと思ったら雀塚の集落の名残かもな。

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東京のM美大のサークル《不思議圏》は、民俗学研究を名目に各地に旅行するお気楽七人グループだ。夏の合宿で向かったのは、岩手県の広林寺。部長の父が住職で、その口利きで無料で宿泊させてもらえるとのことだったのだが、行ってみれば、修行体験ツアーのテストケースということでガックリ。

その寺は、七十年もの間 絶えていたものを、つい一年前に建て直して、サラリーマンから転職した新たな住職とその妻が越してきたばかりなのだという。なんとか地域に溶け込みたいと思っているが、地元の人々は「イゴク寺」と呼んで、じんわりと敬遠している様子である。

ちょっとしたきっかけから、かつて何度もこの辺りを襲ったという飢饉に興味を持ち、地元図書館で調べた不思議圏は、餓死した大勢の人々を一度に葬るため投げ込んだ穴を、イコク穴、またはイゴク穴と呼んでいたことを知る。

この寺は、飢饉に関係するのだろうか……?
もしかすると、寺の境内から続く塞がれた道の先にあるという「雀塚」は、本当は「鎮め塚」であり、餓死者の霊を鎮めているのではないか。

そう思いついたメンバーは面白がり、その塚を見に行く。
ところが、その時から一年生の草薙 宏の様子がおかしくなってしまった。もともと無口で一風変わった青年ではあったが。熱を出し、穴の中に子供がいたね、僕はあの子の気持ち解るよ、などと涙を流してうわごとを言うのだった……

[出典:山岸涼子~鬼]

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