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短編 心霊 オリジナル作品

其処に居た女

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※当作品はAskMonaにも投稿しています。

http://askmona.org/3056

僕はマッサージ師をしている。

元々霊媒体質のせいか、自分自身子どもの頃から肩こりがひどかった。

それでよく、近所の鍼灸師のお店によく通っていた。

178:矢吹新一 2016/8/17 15:19:03 ID:lmlJwuoT50

そこの鍼灸師は、二十代の早くから自分で開業していたが、あまり儲かってはいなかったようだ。

でも、あまり多くを語らないそのお兄さんの人柄が好きで、高校で腰を痛めたときはよくお世話になった。

そんな経験もあって、僕は鍼灸師になろうと思った。

学校に通い、あん摩・マッサージ師、鍼灸師の資格を取った。

今は、病院に勤めながら、仕事が休みのときは副業で、訪問介護のマッサージを時々している。

そんな僕が体験した、ウソみたいな本当の話を書きたいと思う。

くわしく書くと知っている人もいるかも知れないので、できるだけわからないように書くつもりだ。

仕事柄、多くの人の肌に直接触れることになる。

洋服の上からよりも、皮膚に直接触れると、いろんな情報が伝わってくる。

おそらく、人は、自分で自分の病気を治す力を持っているのだと思う。

だけど、長い人類歴史の中で、だんだんと医療の発達や物が豊かになるにつれ、元々持っていた《治す力》がわからなくなったのだと思う。

だから、人の手を借りて、その人のパワーをもらって自己免疫力を高め、病気を治すのだと僕は解釈している。

人の体に触ると、どこが痛いのかを手が教えてくれる。

また、痛みの原因がどこにあるのかを、その人の体自身が教えてくれる。

そういう《体との会話》を繰り返すうち、霊的な力も強められてきた。

はっきりと見ることはできないが、《そこにいる》という存在は感じられる。

そして、その影響で、かなりのダメージを受けることは多々ある。

恨みの強い人に憑いている霊の場合は、その悲しみが伝わってきて胸が苦しくなる。

そういうことを繰り返して、自分の体が大変になると、僕は《ある先生》のところに行く。

その人がいなければ、僕は多分生きていけないだろう。

訪問介護のマッサージで、四十代半ばの女性のお宅に行ったときのことだ。

その人は重度のリュウマチで、骨折を繰り返し、今は一日のほとんどをベッドで過ごしている。

その日は七度目の訪問で、だいぶ心を開いていただけるようになった。

病気のせいでつらい日々を送っているが、少しでも体が楽になると穏やかな表情になる。

詳しくは書けないが、病気を患って寝たきりの生活を送るようになってから、夫との関係がギクシャクし始めたそうだ。

さらには、夫が公然と愛人を作り、夫婦の間は完全に冷えてしまった。

涙も流さず淡々と話す彼女の辛さが、胸にズーンと沁みてくる。

病気のせいで、夫の浮気を責めることができないと、自分に言い聞かせているのがよくわかる。

そんな思いでマッサージをしていると、彼女の頭のあたりに、誰かが立っている気配がする。

はっきりとは見えないのだが、女性らしき姿を感じる。

そしてその女性も、彼女と同じように《愛の恨み》を持っていることが伝わってくる。

同じように、男性の浮気で苦しめられて亡くなった怨念が感じられる。

晴れない恨みを持ち続けて、同じ境遇の女性を訪ねてきたのだろう。

僕は、男として申し訳ない気持ちになった。

そんな僕を、《その人》はじっと見つめているのを感じた。

次の日、友人からマッサージの依頼を受けた。

彼は個人で開業しているのだが、体調を崩しており、代わりにしてほしいとのことだった。

病院の仕事を終え、夜の八時に頼まれたお客さんの家に向かった。

古びた一軒家の玄関を開けると、すぐ目の前に布団が敷いてあり、五十代くらいの男性がいた。

友人の代理で来たことを告げると、電話で聞いているとのことだった。

長年腰痛を患っていて、定期的に友人のマッサージを受けているそうだ。

男の一人暮らしのようで、部屋はお世辞にもきれいとは言えなかった。

灰皿には、溢れんばかりのタバコの吸い殻があった。

僕はどうもタバコが苦手なのだが、それとは別に重苦しい空気を感じた。

さっそく、横になってもらい施術を開始する。

筋肉が痩せていて、それで腰痛を引き起こしているようだ。

男性はとても饒舌でおしゃべりだった。

一人暮らしで、人と話ができるのが嬉しいのだろう。

僕は仕事柄、話を聞くのは慣れている。

彼の話によれば、以前は大阪で仕事をしていたそうだ。

調理師として、いろんな職場を転々としてきたらしい。

結婚は三度したが、ギャンブルが好きで借金もして、その都度女性を泣かせてきたらしい。

顔を見ると、ある芸能人に似た色男だ。

ギャンブル・借金だけでなく、浮気も相当したそうで、なるほど結構モテたのだろう。

《浮気》という言葉が出てきて、何か胸の辺りがキューッとしてきた。

つい先日も、そういう話があったばかりなので、よくよくこういう人に縁があるなあと思った。

どうも右の方が気になってきて、何気なく右のほうを見た。

「なにかいる……」

僕はそんな予感がした。

壁には、水着のモデルのカレンダーが飾ってあった。

「女性だ……」

僕は直感した。

あの女性に違いない。

昨日の女性が来てるんだ。

男性は、まったく気がつかないようだ。

得意になって昔の自慢話を続けている。

「昔は、モデルともつきあってたんだよ。ちょうどあの女みたいなさ」

そう言って、男性は壁のカレンダーの女性を指差した。

今《そこにいる女性》は、間違いなく、この男性とつきあっていた女性だ。

僕の第六感(シックス・センス)が叫んでいる。

男性の話を聞きながら、僕は《この女性》のことが気になっていた。

どんな亡くなり方だったのだろう。

無念だったのだろうか?

この人を恨んでいるのだろうか?

僕は、《この女性》の無念の思いを込めながら、男性の体を揉んだ。

仕事を終え、料金を頂いて玄関を出ようとして、壁のカレンダーが目に入った。

モデルの女性の表情が変わった気がする。

心なしか、少し笑っているように見えた。

今、この家の中には男性と、《もう一人》いる……。

僕は足早に帰途についた。

次の日の夜、友人から電話が入った。

「もしもし、今、大丈夫?」

「うん、いいよ。どうしたの?」

「実はさ、昨日君に行ってもらったお客さんが亡くなっちゃった」

「ええっ!?」

「火事だって。タバコの火が原因らしい」

僕はそれを聞いて、吸い殻で溢れそうな灰皿を思い出した。

それと同時に、あのカレンダーの女性の顔が思い出された。

あの笑顔は、思いを果たそうと決意した《彼女》の気持ちが表れていたのだろうか。

いや、もしかしたら僕の思い過ごしなのかも知れない。

全ては偶然の出来事だったのかも。

しかし、僕はたしかにそのとき、自分の右の方に《気配》を感じていた。

しかも《その気配》からは、とても心穏やかなメッセージを感じたのだった。

(了)

 

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