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白い服の女の子 r+1291

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これは、あるバイク好きの男性から聞いた話だ。

当時、彼の心は荒み切っていたという。婚約者を突然の交通事故で亡くしたことが原因だった。以来、自暴自棄になり、大型バイクで無謀なスピードを楽しむことで、心の隙間を埋めようとしていたらしい。その日も、渋滞する幹線道路を道端すれすれに走り抜けていた。危険なのはわかっていながら、どこか「どうなっても構わない」という気持ちが、彼を突き動かしていたという。

渋滞が途切れた場所に差し掛かった時、事件は起こった。対向車線からファミリーレストランに右折してきた車が、彼のバイクと衝突。バイクも車もかなりの速度が出ており、その衝撃は激しかった。あまりの衝撃に彼の意識は遠のきかけたが、不思議なことに、まるでスローモーションのように、電柱が目の前に迫ってくる光景だけは鮮明に見えたのだという。

その瞬間、何かが横から飛びかかってきた。彼はそれに抱きかかえられるようにバイクから弾き飛ばされ、歩道に転がった。衝撃で朦朧としながら仰向けに横たわると、飛びかかってきた「それ」がゆっくりと彼の体から離れていった。視界に映ったのは、白い服を着た少女。彼女は安堵のため息をつくと、「あぶなかったね」と微笑み、そして静かに消えていった。

呆然とする彼の耳元で、柔らかな声が響いた。

「あまり無茶をしちゃダメよ」。

反射的に振り返るも、そこには誰もいなかった。ただ、現実が戻るようにぶつかった車の運転手が駆け寄り、救急車が到着した。彼は病院に運ばれたが、奇跡的に足に軽い打撲を負っただけで、ほとんど無傷だった。

しかし、バイクの方はそうはいかなかった。電柱に激突した衝撃で原型を留めないほどに壊れていたのだ。後日、警察で事故の状況を聞かれた際、警官は首をかしげながら言った。「あんな状況で、よくバイクから飛び降りられたな。普通はそのまま突っ込んで……悲惨なことになるんだが」

その言葉を聞いた瞬間、彼は胸の奥に封じていた記憶が蘇った。三年前に交通事故で亡くなった婚約者のことだ。彼女は、亡くなる間際にこう言っていたという。「愛している、ずっと見守ってる」と。

ふと、自分が事故の時に見た白い服の少女の顔が、亡くなった婚約者と重なっていることに気づいた。幻覚だったのだろうか?彼自身も確信は持てなかった。しかし、事故当時に着ていた革のジャケットが警察から返却された時、彼は驚愕した。歩道に転がった際、擦れて傷だらけになった背中の部分にだけ、細い腕と小さな手の形をした「無傷の跡」がくっきりと残っていたのだ。

それ以来、彼は無謀な運転をやめた。婚約者が命を懸けて守ってくれたのだと信じ、前向きに生きることを決意したという。

(了)

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