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中編 稲川淳二

屍を抱く男【稲川淳二】 

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この話はね、私、違う意味で好きなんですよ。

って言うのが、怖いと言うより、なんと言ったらいいかなぁ……話していると、なんだか、白い世界が浮かぶんですよね。

これを話してくれたのは、Nテレビ局の衣装さんなんですよ、当時まだ、若い人だったんですがね。

私が番組終わって来ましたらね、「淳ちゃん、ちょっと!」って、呼ぶんです。

「何よ?」って聞いたら、「聞いて欲しい話があるんだよね」って言うんです。

テレビ局の衣装さんって、結構、怖い話とか知ってるんでね、「なに?怖い話?」って聞いたら、頷きながらね、自分の叔父さんの体験談っていうんです。

で、じゃ、っていうんで、スタジオのセットの端っこに、二人で腰かけて、話を聞いたんですよ。

みんな帰ちゃってね、二人だけになってね、なんか、怖い話を聞くにはいい雰囲気でした。

「これさ、俺の叔父さんの若い時の話なんだけどさ……」

叔父さんっていう人は、若い頃、あっちこっち旅をするのが、好きだったようですよ。

大きいリックしょって、一人で行くんだそうですよ。

当時「カニ族」って言ってね、大きなリックしょってさ、真っ直ぐ歩けないから、横にはって歩くんで、カニ族って呼ばれていたんですよね。

その当時、北海道が若者の間でブームだったそうです。

よく、北海道へ来ませんか?北海道の広い大地で働きませんか?なんて、宣伝してて、結構若い方々が行ったそうです。

叔父さんもやはり、北海道へ行って、2ヶ月くらい、牧場でアルバイトしたらしいです。
で、そのアルバイト先で、土地の可愛い女の子と、知り合いになって、やがてお互いに、恋心をもつようになったらしいんだなぁ……

でも、まだ学生ですからね、就職も決まっていない。

東京に帰る数日前にね、叔父さんは、彼女に、「また、帰って来るから、君を迎えにくるよ」って言ってね、東京に帰って来た。

そして、大学を卒業して、就職して、社会人の新人ですからね、それはもう忙しいわけですよ、あっと言う間に、3年の月日がたった。

そんなある時、街で偶然に、学生時代の友人に会ったんですよ。

で、久しぶりだなぁって、飲みに行った。

飲みながらね、「なぁ、最近旅してないよな、昔みたいに、何処かへ行かないか?」と、話が盛り上がった。

で、友人が、「何処に行こうか?」って聞くから、叔父さんがね、「お前に当てがないなら、俺、行きたいところがあるんだ……」って、北海道の娘のこと話した。

そしたら、「なら、北海道に決まりだな!」って、友人も賛成してくれたんですよ。

ある日、二人は学生時代みたいに、大きいリックしょって、出掛けたわけなんですよ……

やがて牧場の入り口に着くと、叔父さんが、

「ここだよ、ここから牧場なんだよ!……広いだろう?……懐かしいなぁ……」

広~い大地があって、ゆるやかな丘があって、柵の向こうに牛が草を食べてる。

丘の上には、番小屋が見える……

二人は、ずっと続く道を、景色を眺めながら、歩いて行ったんですね。

しかし、一向に人と会わない。

すると友人が、「なぁ、北海道が広いのは分かるけど、人と全然会わないぜ」って言った。

「いや、いくら広いっていっも、普通は放牧してても、要所要所に人がいるわけなんだけどなぁ」

そんな会話しながら、しばらく歩いて行くと、やがて、牧場の建物が見えてきた。

「ほら、あそこだよ!俺、あそこでバイトしてたんだよ……変わってないなぁ、昔のまんまだよ!」

で、建物に着いて、「こんちは~!ごめんくださ~い!」って呼ぶけど、何の返事もない。

中に入って覗いてみても、人の姿がないんですよ。

あれ?、誰もいないなぁ……牛舎や、事務所へ行ってみても、鍵は空いてるんですが、人影がない。

あら~って思ってね、外に出て見たら、ブウゥゥ……エンジン音が聞こえてくるから、ん?と、思って見渡してみると、遠くの方から、軽トラックが一台向かってくる。

ああっ、誰か来た!って、車を待ってた。

やがて、車が近付いて来て、ギギッって止まって、人が降りて来たからね、叔父さんは、「こんちは~」って声かけて、近付くと、見覚えのある顔なんで、

「覚えてますか?3年前にここで、バイトしていた者なんですが……」

って言ったら、むこうの人も、

「おおっ、あんたか!覚えてるよ!……いや~、こんな偶然、あるんだなぁ、不思議なもんだなぁ……」って、変なこと言うしね。

また、この人が黒いスーツなんか着てるんで、「あの、今日は何かあったんですか?」って聞いたの。

そしたら、その人が、

「いゃ~、ほら、あんたと仲の良かった女の子いたろ?」

「はい……」

「実はあの娘、亡くなってな……今日は葬儀終わって、今しがた埋葬してきたとこだよ」

「え?……亡くなった?」

「あの娘の葬儀の日に、あんたが偶然訪ねて来る……これは、あの娘があんたに会いたくて、呼んだのかね」って言う。

叔父さんにしてみたら、ショックですよね。

だって、叔父さんは、彼女に会いたくて、来たわけですから……

まだ、彼女のことを忘れたわけではないんですから、ショックですよ。

「まぁ、もうすぐ、みんな帰ってくるから、中に入りなよ」

叔父さんたちは、中に入ってね、お茶とか入れてもらって、飲んでいたら、みんな帰ってきた。

「おぉ、久しぶりだなぁ」

「良く来たね!」

みんな、訪ねて来たことを喜んでくれるんですがね、叔父さんとしては、彼女のことがありますから、今一つ盛り上がらない。

そんな彼の心情を察して、牧場主がね、

「あんた、今日まだ泊まるところ決めてないなら、久しぶりに、ここに泊まりなさいよ……そして、明日、あの娘の墓参りしてあげなさい」って言ってくれた。

叔父さんもね、「はい、そうさせて貰えますか?」「いいよ」って、泊まることになったんだ。

その夜は、牧場に勤めるみんなが集まってね、お酒飲んで、思い出話をしてた。

だいぶ夜も遅くなったからね、明日も仕事があるし、そろそろ、お開きにするか、って、寝ることにした。

そしたら、叔父さんの友人がね、

「なぁ、お前、いろいろ思うことあるだろう、今夜俺はみんなと寝るから、お前一人でゆっくりしろよ」

って、友人はみんなと引き揚げていった。

叔父さんは、当てがわれた部屋にひとり入って、寝床にゴロリと横になってね、彼女のことをアレコレ考えてた。

そのうち、うつらうつらしてたらね、さすが北海道ですから、夏と言っても、明け方は寒い。

う~、寒いなぁ……目が覚めた。

そしたら、なんか、右腕が重い……なんだろう?って思って、見てみると、何かが腕に乗ってる。

よく見ると、女の髪の毛なんですね。

女が自分に腕枕されて、むこう向きになって寝てるんですよ。

叔父さん、なんだ?って思ってね、体をグーって起こして、顔を覗き込んだ。

その途端に、うわぁぁ!!大きな悲鳴をあげた。

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そこに寝ていたのは、亡くなったと言われた、例の娘さんなの!

幽霊でもなんでもない、彼女の死体が、そこにある!

「うわぁぁ、誰か来てください!」みんなも、突然の悲鳴に驚いて、集まって来た。

どうした? 何があった?叔父さんは、あの……って指をさした。

それは、みんなビックリですよ、だって昼間埋めた娘なんだもん。

「何でだ!?」

「分かりません、目を覚ましたら、隣にいました」

「そんな馬鹿な、今日、埋めたんだぜ!」

どうしょう?みんな、すっかり目が覚めた。

でも、何故なのか分からない。

ともかく、日が明けたら戻そう。

きっと思いがあって、そうなったんだから……って、別室に安置して、日が明けて早々に、墓へ戻しに行った。

当時はまだ土葬だったんだな、棺桶に入れ直して、埋葬し直した。

叔父さんも一緒に行ってね、丁寧に拝んで、みんなと一緒に帰って来たんですがね、えらく落ち込んでいる。

ショックを受けているわけだ。それは、そうですよね……

すると、牧場主が、「あんたもな、このまま帰るのは、気掛かりだろう?……どうだい、もう一泊して、明日またお参りして帰ったら?」って言ってくれた。

叔父さんも、「そうさせていただけますか?」って、もう一泊することになった。

その夜、叔父さんを慰めるためにね、みんなでお酒飲んで、色々明るい話をするけど、叔父さんは、ショックでウワの空。

みんなも、あまり寝ていないし、じゃ、今夜はこの返で、お開きにしょうと、名々寝室に引き上げた。

友達も気を使って、叔父さんに、「お前、どうする?一緒にいようか?それとも一人がいいか?」って聞くと、「悪いけど、一人にしてくれるか」って、昨日の寝室に行った。

やっぱり元気がない。

そして、明け方、うわぁぁ!!また、凄まじい叔父さんの悲鳴がなり響いた。

みんなが叔父さんの所に駆け付けると、そこには、また死化粧して、白装束の彼女がいた。

まるで、生きているみたいに、微笑んで幸せそうな顔をしている……みんな驚いたけど、みんなが思ったのは、やっぱり叔父さんに会いたかったんだなぁ……という事だった。

白い衣装に身を包んだ彼女は、見ようによっては、叔父さんの花嫁に見える。

みんな、なんか切なくなって来て、死体を囲んで、シーンとしちゃった。

それと同時に、何とも言えない恐怖が走った。

彼女は、会いたい一心で、毎晩、墓から這い出して来ていることになる。

翌日、さすがに警察に届けたけど、田舎の警察ですからね、手の施しようがない。

ともかく、また埋葬して、みんなは戻って来た。

叔父さんはショックで、何も出来ない。

言葉も無いわけだ。

心配した友人が、牧場主と相談してね、このままじゃ帰れないから、私に考えがあるから、もう一晩泊まらせて下さいと言った。

この友人は、カメラをイジくれる人だったんで、街に行って、パーツを買ってね、時間設定して、何時間ごとに数枚シャッターが下りるように仕掛けをしたいって言う。

牧場主も、それはいいことだ、是非やってくれと賛成してくれた。

叔父さんも、わかった、頼むよって。

友人は早速、街に出掛けて、夕方帰ってくると、寝室で作業に入った。

夜、寝る時間になると、叔父さんに、「怖いと思うけど、今夜も一人で寝てくれ、写真は自動的に撮れるように設定してあるから」って言った。

叔父さんも頷いて、「やってみるよ……」みんな、それぞれ自分の部屋に戻っているけど、その夜は、何かが起こる予感がして、寝ないで様子をジッと窺ってた。

でも、さすが騒があって、3日目ですからね、みんな寝不足だし、疲れてる。

そのうち、うつらうつらと、寝てしまった……

そして朝方、またもや、叔父さんの凄まじい悲鳴で目を覚ました。

駆け付けると、また彼女が叔父さんの布団で眠っている……

日が明けると、みんなは彼女を墓に戻しに行き、友人はカメラを持って、街に行った。

夕方になって、友人は帰って来たんですが、難しい顔をしている。

友人は叔父さんには声を掛けず、牧場主へ、「写ってますよ……」と、現像した写真を渡した。

牧場主が、写真を受け取ると、黙って見ていくんですよね。

そして、半分くらいまで見たとき、ええっ!?凄い驚きの表情を浮かべて、横にいる人に写真を渡した。

その人も、写真をめくって、おおっ!?と、驚く。

すると、その人が、叔父さんに、「あんたも、見るか?」って、写真を渡した。

叔父さんは受け取って、始めから見ていく。

カメラは、叔父さんの寝室の出入口である襖を撮っているんですね。

北国の分厚い襖です。

最初は何も変化はない。

しばらく写真をめくっていくと、襖が少し開いている……

次の写真は、襖がもう少し開いて、白い物が、開いた隙間から見える……

次の写真、さらに襖は開けられて、白い死装束と、黒髪を垂らした彼女を抱えて、部屋に入って来ようとする人物が見える。

襖の下には足が見える。

どうやら足で襖を開けているらしい。

叔父さんは、恐る恐る、次の写真を見た。

その途端、ううっ!!と、うめいて固まってしまった。

そこには、足で大きく襖を開き、白装束の彼女を抱えて部屋に入ってくる人物が、顔を覗かせていた。

それ、その人物、叔父さんだったんです!

自分だったんですよね!叔父さんは自分で、彼女を連れて来てたんですよ……

でも、北海道に来た日、叔父さんは彼女の墓の場所知らなかったんですよ。

衣装さんがね、

「これね、叔父さんから聞いた話なんだ……でも、僕、あまり怖くないんだ。この話好きなんだよね」って言ってましたね。

私のスタッフは、この話を、「北海道の花嫁」って呼ぶんですが、私もこの話、なんとなく白い世界で、花嫁がじっと彼を待っている感じがして、ふっと胸が、痛くなりますね………

(了)

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