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老人と子どものソネット

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二十歳ちょっとだったか、まだ実家でプー太郎やってた時。

603 :本当にあった怖い名無し:2010/11/18(木) 14:37:36 ID:5OHdo9G70

うちは物凄い田舎で、家のすぐ傍が森とか山みたいな所だったのよ。

で何もやる事ないし、家にいたら親がぐちぐちうるさいから、そういう場所をうろついてた。

その時期何かもう何もやる気なくて、どーでもいーやーって感じで、山道登りながら自分の事を考えてたら、いつの間にかいつも歩いてる山道から逸れて、道無き森を彷徨ってた。

今のオレなら絶対取り乱してたけど、その時は別に死んでもいいやって気分。

しばらくふらふらしてると、何か細い道に出て、藁のテントみたいなのと焚火。

そこで着物姿の人間もどき、子供とじいさんが二人居た。

何でもどきかって言うと、常に笑顔なのよ。しかも、最初から髪なんか無かったかの様なつるっぱげ。

挨拶しても近づいても、とにかく微動だにしないにたーっとした笑みが張り付いてる。

しかも二人とも同じ顔。

子供の方は凄まじくお肌つるつるだけど、顔立ちはしわしわのじいさんと全く瓜二つ。

血縁と言うより、年齢差のあるクローンって感じ。

二人とも昔にタイムスリップした様な雰囲気で、「あ、この二人は人間じゃねーな?」って何となく感じた。

声かけようか戸惑ってた所で、じいさんの方が「迷いましたか」って声をかけて来て、トントン拍子に二人の家で休んでいく事になった。

じいさんは話してても、「そうですか」「ゆっくり休んでください」みたいな事しか言わない無口なんだけど、子供の方はやたら口が達者だった。

「何処から来た?」「一緒にコマやろうや!」みたいな事から、何故か「お兄ちゃんプレステ買って(笑)」みたいな事も。まぁ普通のガキか。

でもやたらプレステに執着してた以外に、コマとか花札とかゲーム関係全般詳しくて、面白い話をいろいろ聞かされたし、遊びも付き合った。

そんな風に過ごしてたら、じいさんが「どうぞ」って、お鍋で作ってた雑炊の様なものを差し出して来た。

何かね、見てくれはゲロみたいでマズそうなのに、物凄い良い匂いがして食べない気になれない。

食材がいろいろ入ってるんだけど、匂いだけで何が入ってるか分かる。

卵とか肉とか魚とか、野菜とかとにかく入れるもの全部入れましたよーって感じなのに、全てが調和されてる。

全部の食材の味が恐ろしいくらい引き立ってるのに、一つの味として成立してるみたいな。

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上手く説明出来ないんだけど、とにかく美味かったの。

素人舌でも、あれは簡単に作れるものじゃないって分かる程ね。

他にも華の香りのする酒とか、蜜柑と魚の和え物ももらったんだけど全部美味くて、でも何か切なくなる味で、いつの間にか涙が出てた。

そしたらガキが「どうした?」って尋ねて来て、その拍子に今まで家族にも言えなかった事を、泣きながら全部話してた。

シクシク泣きながら、高校中退したとか、いじめられてたとか言ってたら、じいさんが優しく背中撫でながら相槌返して、さらに号泣。

「もう死んでも良い」なんて愚痴ったら、「今死んだら極楽に行けないぞ!まだ若いしやり直し効くって!」みたいなオッサン臭い説教を受けた。

ちょっと立ち直って来た所で、おじいさんが麻袋を藁テントから出して来た。

「もうあなたは行きなさい。ここに居たらいけない。……これをどうぞ」

お土産のつもりだったのかそれをもらって、子供に案内されて山道まで来たら、いつの間にか子供も消えてた。

それから麻袋の中身を確かめたら、中身は石鹸。

梅みたいな香りで、嗅ぐだけでお腹空きそうな感じ。

石鹸使おうかなとか考えながらも、山歩きで疲れたから、その夜は早々に寝てしまったんだ。

突然深夜、物凄い激痛に襲われて、「アイツらの飯が当たったかクソー!」みたいな気持ちでブリブリしてたんだが止まらない。

とにかく中々が止まらなくて、治まった頃はもう朝だった。

二時間くらい経ってた気がする。

しかもその後、酷い虫歯になったり二三日熱で寝込んだり、原因不明の骨折とかが一カ月くらい続いた。

さすがにあの二人を疑ったんだが。

骨折が治ってしばらくしてから、突然酷い眠気とだるさに襲われて、丸二日くらい殆ど眠りっぱなしの状態に陥ってから、それ以来突然身体が軽くなって、快活な気分になった。

いろんな事がしたいと思い始めて、衝動的にバイトやりまくったり、風俗行ったり、毎日走ったり、資格勉強したり、すごく元気。

しかも、あれから一度も風邪ひいてないんだよな……

少し経って、忘れてた石鹸の事を思い出して、これも何かあるのかなと思って、おそるおそる洗面台で使った。

するとボロッ……って、消しゴムのカスみたいに手の垢がボロボロ出る、トンデモ仕様の石鹸で、勢いで風呂場直行。

勢いに任せて石鹸で身体擦ると、また出るわ出るわで、とうとう濁った油みたいなのまで出てきた。

しばらくその石鹸を使ってから、劇的に肌が綺麗になって、ニキビ肌だったのに今はつるつるになってる。

しかも、それから常に「清助って良い香りがするよな」とか言われる様になって、やたら友達が増えたりモテた。

今は必死に頑張って美容師になれたけど、それもあの二人のおかげなのかな。

でも、あの二人に出会うのが本当にオレで良かったのか。

そもそもアイツらは一体何だったのかは気になるよ。

あの後また同じ場所に行こうとしたんだけど、足が竦んで無理だった。

何故か、今行ったらもう二度と帰ってこれない気がしたから……

(了)

 

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