中編 怪談・実話系

霊感守護少女【ゆっくり朗読】2500

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十年来の友人に、翔子ちゃんというものすごく霊感の強い子がいる。

627 :本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 13:25:14.24 ID:GNkVFYKo0

どのくらい強いかというと、幼い頃から予言めいたことを口にしていて、

それが口コミで広がり、わざわざ遠方から翔子ちゃんを訪ねてくる人がいたくらい。

その人達の用件は主に、行方不明になった我が子を探してくれてというもの。

翔子ちゃんは写真を見ただけで、その人物がどこにいるのかがわかる。そして実際に当たっている。

ただし、その人物が亡くなっている場合のみだけど。

幼かった翔子ちゃんは深く考えずに、「コンクリートの下に埋まってるよ~」なんて答えていたらしい。

やがて成長すると、自分がどれだけ残酷な回答をしていたか気付き、人探しは断るようにした。

それから周りには能力が消えたフリをし続けてきたらしい。本当はいつもうじゃうじゃ霊の存在を感じていたけれど。

そんな翔子ちゃんと私は、中学で出会った。

最初はすげー美少女がいるなーという印象だった。

ちなみに翔子ちゃんはイギリスとのクオーターで、佐々木希と北川景子を足して二で割ったような顔をしている。

あんまりに美少女だったから高校の時、芸能界入りを勧めたら、某大手プロダクションのオーディションにあっさり受かりやがった(笑)

だけど本人にやる気がなかったせいか、半年くらいで辞めてしまった。

それからは普通の高校生として、翔子ちゃんはよく私と遊んでくれた。

学校帰りにはいつも二人で買い食いしてた。

ある時、どこかの施設の外階段に座って二人でお菓子食べてたら、上から降りてきたおばあさんに話しかけられたことがあった。

おばあさんは足が悪そうだった。

「人がいっぱいおるけど、今日何かあるんですか?」

おばあさんが言った。下の道路はたくさんの人で溢れている。お祭があるのだ。

こういう時、人見知りの私はいつも翔子ちゃんに話を任せてしまう。

しかしその時の翔子ちゃんは違った。

そっぽを向いて、おばあさんと話す気などまるでなし。

仕方なく私が答えることにした。

祭があることを教えると、おばあさんは納得した。

「だからこんなに人がおるんだね~」

おばあさんはにこにこしていて、足を引きずりながらゆっくり階段を下りていった。

その間、翔子ちゃんはずっと黙っていた。

そしておばあさんの姿が視界から消えると、ようやく口を開いた翔子ちゃん。

「……今の人、とっくに亡くなってるよ」

驚いた。だってしっかり姿見えていたし、私は会話までしている。

「嘘でしょ?」

私は半笑いで訊いた。しかし翔子ちゃんは真顔だった。

「嘘だと思うなら階段下りていってみなよ。もう姿消えてるはずだから」

半信半疑で階段を下りるも、すでにおばあさんの姿はなかった。

一階まで下りて探してみたけど、どこにもいない。

その階段というのが螺旋階段に近い作りになっていて、確か階段を使うためには、一階、五階、七階から入るしかないはずだった。

五階から一階までの間に建物の中に入ることもできない作り。

そして私達が座っていたのが、五階辺り。

そこから一階まで、足をひきずっていたおばあさんが短時間で下りられるわけないのだった。

翔子ちゃんのもとへ戻ると、彼女はやっぱりねという顔をしてポッキーを食べていた。

「たぶん大丈夫だよ。人が多いから気になって出てきただけみたいだから。害のない霊だよ」

「じゃあなんで翔子ちゃんはおばあさんと話さなかったの?」

「あたしに能力があると知ったら、害のない霊でも憑いて来ちゃうことあるから」

「私、普通におばあさんと会話しちゃってたんだけど……」

「平気平気」

これが私が初めて霊を見た瞬間だった。

霊ってもっと怖くて、怨念深い感じで出てくるとものだと思っていたから、なんだか拍子抜けした。

すごくナチュラルに出てくるものなんだ……

「亡くなって霊の姿になっても足をひきずってるなんて、可哀想だね」

「いやいや実際あたしが普段見てる奴らはあんなもんじゃないから。もっとグロいよ」

あんな優しそうなおばあさんの霊を見ただけでも、やっぱりちょっと怖いなと思っていた自分が恥ずかしくなった。

そして改めて、翔子ちゃんが置かれている環境の特殊性を知った。

その後の私は霊を見ることなく、無事に高校を卒業した。

卒業後、翔子ちゃんは事務職に就き、私は実家に住みながらフリーターをしていた。

お互い仕事とアルバイトに追われ、翔子ちゃんとはあまり会えなくなった。

しかし、たまにメールや電話でやりとりは続いていた。

翔子ちゃんが仕事を辞め、夜の仕事を始めたと聞いたのは、高校を卒業してから一年程経った頃だった。

夜の仕事を始めたきっかけは、父親のリストラだったそうだ。

さらに翔子ちゃんの家には早くに結婚して出戻って来た妹さんと、翔子ちゃん似でイケメンなのに、なぜかひきこもりの弟さんがいた。

翔子ちゃんは家族を支えるため、必死に働いていた。

なんだか実家に寄生してふらふらアルバイトをしている自分が恥ずかしくなった。

就職活動を始めた私は、しかしなかなか面接に受かることが出来ず、最終的に販売系の仕事で、準社員として働くことになった。

仕事場となった店舗は、数年前に殺人事件があった現場。

この事件、当時は結構ニュースとして話題になった。

仕事は販売系と書いたけれど、実際はちょっと違う。

今でも検索すればすぐ事件を特定されてしまうので、実は職種ははっきりとは書けない。
曰くつきの職場ということで、いざ働き始めてみると色々な話を耳にした。

前の店長が失踪したとか、社員がみんな病気になるとか。

しかし私は特に何の変化もなかったので、気にせず働いていた。

そして働き始めて一年が経った頃のこと……

その日は朝から雨が降り続いていた。客は数人しか来ず、開店休業状態。午後には完全に客足が途絶えた。

店長と社員さんは配達に出てしまったため、店番は私一人。

雨のせいか辺りは薄暗く、なんだか気味が悪かった。

レジで手仕事をしながら時間を潰していると、足音が聞こえた。

気付かぬうちに客が入ってきたのかと思い、とりあえずブックオフ風に店全体に響き渡るよう、「いらっしゃいませー」と声をかけた。

それから客の相手をしようと店内を探したのだが、誰もいない。

気のせいだったのかと思ってレジに戻り、仕事を始めるとまた足音。

だがやはり客の姿はない。

こんなことを何度か繰り返していると、さすがに怖くなってきた。

そして何度目かの足音。今度ははっきりと背後から聞こえた。

始めはヒタヒタヒタ……くらいだったのが、次第に小走りになり、すぐにダダダダダッという足音が近づいてくるのがわかった。

やばいやばいやばい……恐怖に硬直していると、視界に見慣れたジャンパーの色が入った。

店長が配達から帰って来たのだ。

ほっとした瞬間、足音が消えた。

おそるおそる振り返ってみる。誰もいなかった。

「どうかした?」

何も知らない店長が、不思議そうな顔をして訊く。

私は平静を装って、「なんでもありません」と言った。しかし声が震えていたと思う。

その後、店長は何か問題を起こしたとかで左遷され、社員さんも次々と辞めていき、店のメンツは様変わりした。

わたしは店舗で一番の古株になった。

新しい店長は大学出たてでまだ右も左もわからない状態。

その店長とほぼ同時に入って来たのが、アルバイトの加藤くんだった。

加藤くんは最近までニートでひきこもりに近い生活をしていたとかで、なんだか挙動不審。

店に出して客の相手をさせることはまず無理だろうということで、加藤くんの仕事は主に、配達の助手や事務的なことが中心だった。

しかしいざ働いてみると、加藤くんは案外面白い人だった。

私の知らないアニメや漫画をよく教えてくれた。

やがてみんなと打ち解け明るくなった加藤くんは、レジ操作なんかも覚えて接客も出来るようになった。

 

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ある時、配達でみんな出払ってしまい、店には私と加藤くんの二人きりということがあった。

加藤くんは事務所の中にこもって、何かやっている。

その日は客が多く、レジが混雑してきた。

私一人では回すのが難しくなってきたので、加藤くんに応援を頼もうと、客が途絶えた瞬間を見計らって事務所のドアの外から呼びかけた。

「加藤くーん、ちょっと出てきてもらっていいー?」

事務所の中からは返事がない。

事務所のドアは上三分の一くらいが曇りガラスになっていて、外から中の様子がぼんやりと窺える。

スタッフジャンパーを着た人影が中で動いていたので、加藤くんが確実に中にいることはわかった。

聞こえてないのかと思い、ドアを開けて直接話すことにした。

ガチャガチャ……加藤くん、内側から鍵かけてやがる。

この忙しい時に何やってるんだか……

怒りに任せてしばらくドアノブをガチャガチャやりながら、大声で中の加藤くんに呼びかけていた。

「加藤くん?何やってるの?ちょっとレジ手伝ってほしいんだけど」

その時、背後から声がした。

「あのぉ~宮下さん?何やってんすか?」

加藤くんだった。あれ?事務所の中にいるはずじゃ……

加藤くんは店の裏で掃除をしていたのだという。

じゃあ今、事務所の中にいる人は誰?
そう思った時、いくらやっても開かなかったドアが、あっさりと開いた。

中には……誰もいなかった。

確かにスタッフジャンパーを着た人影が動くのを私は見た。だから加藤くんが中にいると思ったのだ。

しかし加藤くんはずっと店の裏にいた。

事務所には窓がなく、出入りするにはこのドアを使うしかない。

じゃあ私が見た事務所の中の、スタッフジャンパーを着た人はどこへ行ってしまったのだろう。

背筋に冷たいものが走った。

その後は客の相手に忙しく、真相を突き止める暇が無かったので、このことはうやむやになってしまった。

加藤くんが何か嘘をついているようには見えなかったし、深く考えると怖いので考えないようにした。

それから数日後、出勤すると店の裏口に花が供えられていた。

数年前に起こった事件……その日は被害者の命日だった。

毎年この日になると、遺族が夜のうちにひっそりと花を供えに来ている。

事務所の中には小さな仏壇がある。毎年、花はその仏壇に挙げていた。

それからしばらくして花は枯れてしまうが、スタッフの誰もその枯れた花を始末しない。
なんとなく、触れたくないとみんな思っているようだ。

仕方なく私が手を伸ばした。その時だった。

「捨てるな!!!」

加藤くんが怒鳴った。いつもボソボソと話す加藤くんの、初めて聞いた怒鳴り声。

驚いた私は、咄嗟に花から手を引っ込めた。

何か気に入らないことでもしただろうか……あの挙動不審な加藤くんが、こんなにも怒りを露にするなんて。

「え……ごめんね。どうしたの?」

私は加藤くんに謝った。

しかし、「ん?何のことっすか?」。加藤くんはきょとんとしている。

「今、怒鳴ったよね?」

「いえ、何も言ってないですけど」

加藤くんは自分が怒鳴ったことを忘れているようだった。それとも私の聞き間違いだったのか……

念のため花はもうしばらくそのままにしておくことにした。

そんな出来事があってからも、私は変わらずその店で働き続けた。

店長と付き合い始め、職場恋愛に浮かれていたのだ。

いつもスタッフが帰った後、店長と二人残ってレジ閉めしたり、店のことを話したり、楽しかった。

ある日、閉店時間になっても配達から店長がなかなか帰ってこず、閉店後も私は一人、仕事をしながら彼の帰りを待っていた。

そういうことは今まで何度かあった。

彼が戻ってくるまで、一人は怖いので、大抵は店の電話を使って友達と話ながら待つことにしていた。

その日は久しぶりに翔子ちゃんに電話を掛けてみることにした。

「今、まだ職場にいて一人で暇なんだよー。話付き合ってよ」

翔子ちゃんは快くOKしてくれ、しばらくは高校時代の話などして盛りあがっていた。

しかし、次第に翔子ちゃんの口数が少なくなり、声のトーンも暗くなった。

心配になった私が訊いてみると、「洋子ちゃん、今、職場にいるんだよね……?」

「うん、そうだよ」

「今すぐそこから離れて!早く!」

翔子ちゃんはもうすごい剣幕で、私にすぐ帰るよう言ってきた。

幸い、店の鍵は任されていたので、私はさっさと身支度をして店を後にした。

何が何だかわからぬまま家に帰りつき、彼には用事があるので先に帰ったことを伝えた。

そして翔子ちゃんに理由を聞こうと電話に手を伸ばした時、翔子ちゃんのほうから着信があった。

「さっきはどうしたの?」

私が何か言おうとするとのを遮り、翔子ちゃんが言った。

「あんたの職場やばいよ。店で電話してた時、すごいノイズが入ってたし、洋子ちゃんの声も変な風に聞こえた。別人みたいな声になってた」

それから翔子ちゃんは、このままその職場で働いていると良くないことが起こるから、すぐに仕事を辞めたほうがいいと言ってきた。

私は迷った。翔子ちゃんの言うことなら信じられる。

だけど、すぐに辞めたら周りに迷惑がかかるし、次の仕事を探すのもこんな田舎では難しい。

迷った末、どうにも決めかねて、次の日も仕事に行くことにした。

翌朝、家を出ると目の前に翔子ちゃんがいた。

久しぶりの再会だった。

だけど、なぜこんな朝っぱらから訪ねて来る?

翔子ちゃんは会って早々、玄関の前で土下座をしてきた。

「お願いだからもうあそこへは行かないで」

翔子ちゃんは泣いていた。思えば、翔子ちゃんが泣いたところを見たのはその時が初めてだった。

私はまずそのことに驚き、かなりうろたえた。

結局、私は翔子ちゃんの剣幕に負け、その日は仕事を休むことにした。

そして結局一日中、翔子ちゃんに説得され、そのまま仕事を辞めることになった。

翔子ちゃんの紹介で新しい職場もすんなり決まり、仕事に慣れて来た頃、私はあの店で一緒に働いていた人と偶然再会した。

その人も、もうあの店は辞めたらしい。話を聞くと、私が仕事を辞めてからも、やはり色々とあったらしい。

みんな体を壊したり、ノイローゼになったり、事故に遭っていたり……

翔子ちゃんは私がこんな目に遭わないように、仕事を辞めるよう説得してきたのだった。

そんなことがあってから数年が経ち、現在、私は職場の先輩に紹介された人と結婚し、新居に移った。

先日、その新居に翔子ちゃんが遊びに来てくれた。

夫となった人に会わせると、翔子ちゃんはとても喜んでくれた。

「もう大丈夫だね、洋子ちゃん。これからはこの人が洋子ちゃんを守ってくれるよ」

私はこの時にはもう悟っていた。

なぜ可愛くて男子からも人気のある翔子ちゃんが、私のような地味な子と一緒にいるのか。

なぜ頭の良い翔子ちゃんが、わざわざレベルを落としてまで私と同じ高校に進学したのか。

なぜモデルになりたいと言っていたくせに、せっかく入れた芸能事務所を辞めたのか。

昔から、私が一人で出かけようとすると、翔子ちゃんはよくついて来たがった。

ビジュアル系なんて興味ないくせに、ライブにまでついて来たし、買い物だって美容院だって、わざわざ私の趣味に合わせてくっついて来ていた。

全部、私を守るためだったのだ。

中学で初めて会った時、翔子ちゃんは私の背後に憑いている者の存在を気にしていた。

そして、その者が引き寄せる数々の悪い者から、翔子ちゃんはずっと私を守ってくれていたのだ。

翔子ちゃん曰く、今の旦那と一緒にいれば、私はもう大丈夫らしい。

肩の荷が下りたように、翔子ちゃんは晴れ晴れとした顔をしていた。

そして今、翔子ちゃんは変わらず夜の仕事を続けながら、きちんとした指導者について除霊の勉強をしている。

一人でも多くの人を救うために。

その勉強はものすごく辛いものらしい。

今まで無意識だった能力を意識して使おうとすると、よく分からないのだが、力が暴走するらしい。

そのせいで、見たくないものが部屋に横たわっていたり、色々な者が寄ってくる影響で、体を壊して何度も病院に運ばれたりしている。

それでも彼女は頑張り続けている。

私はもう一生、彼女には頭が上がらないだろう。

翔子ちゃんと出会わせてくれたことを、神様に感謝したい。

以上、嘘っぽいと感じるところもあると思いますが、すべて実際に起こったことです。

(了)

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