短編 人形にまつわる怖い話

量子的人形論【ゆっくり朗読】

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怖い話ネタや怪異ネタで比較的よく目にするのが、人の意思、認識が物理現象に介入するといったお話です。

538 :490:2007/04/26(木) 19:14:47

量子力学の世界に、『観測問題』という問題があります。

素粒子を扱う非常にミクロの世界では、観測者が観測対象に全く影響を与えず観測を行うことは出来ない、という事実に基づいたものです。

観測という自由意志による行動が、物理状態に影響を与えるということを示唆していて、解決は示されていません。

ここからさらに発展して、人の意思や認識が物の存在やふるまいをつくりだしていないか、という危惧も指摘されています。

素粒子のふるまいを説明するために別の新しい素粒子を考案すると、
暫く後になってそれが見つかってしまうことが多々あり、
あたかも科学者の要請に応じて物質が姿を現すかのような有様となっていることへの、自問自答に似た危惧です。

シミュレーションで有名な『複雑系』の立場はもう少し積極的で、
世界の記述の仕方で世界の在り方が変わるという考え方があるようです。
視点を重視する考え方、『唯識論』に近い考え方です。

いずれにせよ、
人の意思や認識といった心の問題と、物質の存在やふるまいといった物理現象は、
明確に区分されるべき個々に独立した事象である、
とは言い難くなっているのです。

勿論これは、誰かが思ったとおりにかくも世界は成る、といった単純なものではありません。

量子力学で扱われるような現象は、一般にミクロのスケールに限定されると言われ、
例外的に特殊な事例を除けば、マクロなスケールでは起こらないとされているのです。

これについて私見ですが、観測者が増えるほど、またその現象の影響する領域が増えるほど、
現象はその共有する認識を基盤とするようになるのではないか、と考えます。
言うなれば、常識的な線に落ち着こうとするわけです。

しかし、人の心と物理現象が、必ずしも断絶した二元的な事象でないというのは面白いと思います。

そして人形者的視点で言えば、もし人形に怪異が起こるとしたのなら、
それはその怪異を受け入れる心理的余地のある人形者の元で起こると言えるのです。
人間扱いしたり、挨拶したりする人形者はヒット率が高くなるのです。

さて、ここまでは心が物に作用する話ですが、今度は逆に物が心に作用する話を考えてみます。

物が心に特定の作用を引き起こし、その心が周囲の現象に影響を及ぼすのなら、
呪いの品、或いは幸福のお守りといった物が成立するのではないかと考えるからです。

人間の脳の中は、運動を司る部分の周囲に言語を司る部分があるそうです。
つまり、言語と運動は密接に関係しており、また認識も密接に関係していると考えられているのです。

例えば、靴というものを認識するということは、それを寸分違わず模写できるといった能力ではなく、
足に履いて使うものであり、それがあれば足を痛めないで外を歩くことができると連想できることである、
と考えられているのです。(アフォーダンス:行為の可能性などと表現されます)

いわば、物の認識という過程は、その認識の先にある行為や、それによって獲得される結果の連想も含むものなのです。

そして、こういった物の認識の過程を高度に記号化したものが、言葉でありシンボルではないかと思うのです。

呪術や魔術の世界はこれに特に注意を払っており、焦点具、言霊、象徴図形など、
その体系毎に管理されているようです。

また、儀式魔術における魔術武器なども、同質のものではないかと考えます。
いわば、それを用いることで特定の心理状態を作り出すことが期待されているのです。

しかし、ここまで極端な例を挙げなくても、
私たちはかなり小さな頃から、もっとありふれたシンボルに慣れ親しんでいます。
それは他ならぬ人間の表情です。

赤ん坊や小さな子供というのは、周囲の大人の表情に非常に大きな注意を払っているようです。
変な表情をすると、それをそっくりそのまま真似て返すことはよくあります。

お陰で私たちは、非常に微妙な表情のであっても、そのニュアンスを感じ取ることができるようになり、
表情を発した相手の心理に共感をおぼえることができるようになっているのです。
これは相手が人形であっても同じかもしれません。

同じような素材、メイク技法、笑顔なら笑顔というジャンルであっても、
出来上がったものは手がけた作家によって結構違ってしまう、
というのはよく目にすることだと思います。

おそらく、殆ど無意識のうちにその作家の知っている表情を投影してしまい、
これが形容し難い差となって出てくるのだと思われます。

そこでもしこの作家が、無意識に持つネガティブな心理、或いはポジティブな心理を人形に投影してしまったら?

その人形は、こういった心理記号の影響に敏感な人にとって、とてもいわく付きの物品となるかもしれないのです。

そして、いわくをどんどん獲得するにつれ、
人形周辺の健全な認識が崩壊していき、非健全な認識を受け入れてしまう超いわくつきの物品となるのです。

因みにこの、はじまりの投影で変なものを入れてしまうのは、
職業プロよりも趣味人の方が可能性が高いように思えます。

人によっては直感的に当たり前のことを長々書いてきました。

まとめるとこんな感じです。

  1. 心が物に影響することは否定されない。むしろ消極的にだが肯定される部分もある。
  2. 物に影響を与える心は、シンボルなどによって喚起される。
  3. そのシンボルとして表情は有力、媒体として人形は適任。
  4. 変な作家 > 変な心理 > 変な人形 > 敏感な人形者 > 怪異現象 伝染るパターン。

多少なりとも皆様のネタになればよいのですが。
それでは本当に長々と失礼しました。名無しに戻ります。

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