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おでん屋の倅

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自分が幼稚園児の頃は今と違って、神社や寺の境内駐車場で、周囲の子供たちが何十人も年齢問わず遊んでいた時代だった。

その中には知的障害児童が少なからずいたんだけど、誰も差別や区別せず仲良く遊んだ。

区画整理事業がまだない時代で、砂利道の細い道と間口の狭い家屋が軒を連ねて、町内の人のプライベートは筒抜けで、身内の様な付き合いしてた時代だった。

遊びの集団の中に、おでん屋を細々とやっている、A君という知的障害児持ちの母子家庭がいた。

A君の母親は、「自分の息子と遊んでくれてありがと」と、売れ残りのおでんを神社に持ってくる優しい人間であった。

時がたち、いつしか最年長は十五歳くらいのA君だけになり、小学生連中と以前の様にビー玉とか、かくれんぼをして楽しい時間を過ごしていたが、ある日の事、いつものように神社に行こうとしたら母親が

「A君と遊ぶな、今日はどこにも行くな」と鬼の剣幕で外出を阻止した。

子供の自分は意味がわからなかったが、数日たったある日、A君のお店に町内の人達が集まって中を覗いてた。

自分も気になって、大人の間をかいくぐって薄いガラス越しに見たら、A君の母親が汚い土間に土下座して大号泣してた。

その前には怒鳴りつける町内の夫婦。

その足で帰宅し、母に「A君の母親が泣いとった」と伝えたら母が言うには

「A君が女の子を襲った、今度は二度目だ」と。

ガキだったから『襲った』の意味は、叩く、蹴る、髪の毛を引っ張った程度に想像し、

「そんなの自分もやっとるわい」と反発したが、母は怒り狂って「遊ぶな」の一点張りだった。

その日を境にA君の姿は神社や寺から消えた。

一週間後、A君の葬儀が速やかに行われ、小さいおでん屋の前に白黒の布が一日だけ人目をはばかるように掛かっていた。

後日、母からA君は間違って台所の床に置いてある猫いらずを食べて死んだって……と聞かされたが子供の自分でも

「(店に入ると台所まで丸見え)年中置いてある猫いらず食うバカいるのかよ!!」

と理解不能だったが、今なら理解できる……

(了)

 

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