たまーに記憶の空白が訪れる。
正確に言うと、
『気づいたら、いつの間にか数時間経過していた。そして、ついさっきまで自分が何をしていたのかが判らない』
……というヤツなんだけど。
まぁこの程度のことなんかよくある話だし、仕事中とか車の運転中とかになったことはないので、大して気に止めていなかった。
二ヶ月くらい前の休日。
ヒマだしゲーセンでもいくべーと、家を出たところまでは覚えていたんだが、気が付くと駅近くのスタバでコーヒーすすってた。
で、家を出たのが十一時頃、我に返った時刻が十四時半ぐらいだった。
丁度仕事関係でごたごたが続いていた時期でもあったし、『疲れてんなー、俺』ぐらいにしか思わなかった。
翌日、会社へ出勤。
同僚の女の子から、
「昨日の昼頃、駅前のスタバにいたでしょ?」
「あー、いたかも」
「一緒にいたお友達結構いい男じゃん。今度紹介してね~」
「は?」
「冗談、冗談。でもちょっと本気(笑)長身・ロンゲで中性的って、ちょっと私的にツボだから」
誰それ?長身?ロンゲ?そんな友人に心当たりは有りません。
「声かけてくれれば良かったのに」
「いやー、思い出話で盛り上がってるトコだったから、邪魔しちゃわるいかと」
詳しく訊くと、どうやら俺とそいつは、近所の川でザリガニ釣りをしたときのことやら、駄菓子屋でくじを当てるためにした無駄な努力などについて、盛り上がっていたらしい。
同僚が嘘をついているとは思えないが(理由がない)、俺には全くそいつに心当たりはない。
その場はなんとかお茶を濁して終わりにしたのだが、どうも釈然としない。
で、今年のゴールデンウィーク
連休らしい連休も無かったので、実家に帰らず街をぶらぶらしていたら、また三時間ほど記憶が飛んだ。
今度は行きつけのゲームショップに入ったところから、駅前の噴水で一服していた所までの記憶がない。
数日後、大学時代からの腐れ縁の友人からの電話。
『そーいえばさー。お前この間の五月五日に駅前に居ただろ?』
「居たけど?」
『いやー、そん時のお前のツレな、すらっとした長身でロングヘアだったから、俺思わずデルモの彼女でもできたんかー!とかびっくりしちまったけど、よく見たら男だったから安心しちゃったよ(笑)』
「………………;」
風貌等を訊くと、どうやら先の人物と同一のようだ。
でも、俺には全く心当たりがないんです。
小学校時代のアルバム引っぱり出してきて、仲の良かった子とかを思い出してみたけど、該当者が思い当たらない。
お前は誰なんだょぅ。
(了)