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短編 心霊ちょっといい話

カタクリの華とお爺さん

更新日:

春の晴れた日のこと。友人宅に遊びに行き、ドアチャイムを押した。

188: 2014/03/09(日) 00:11:21.96 ID:xKfi8Xf90.net

友人は在宅のはずだったが、応答がなくシンとしている。

玄関先を離れると、庭におじいさんがいるのが見えた。

大きなブリキ製のジョウロに、ホースで水を注ぎ込んでいる。

庭には簡易な造りの台がいくつも並べられており、その上にはシクラメンの鉢植えがずらり。100鉢ほどありそう。

立ち去ろうとしていたのだが、目が合ったのであいさつをした。

「こんにちは。保治さんはおでかけ中ですか?」

おじいさんはそれには答えず、ブリキ製のジョウロを手渡してきた。

「向こうから……」と、台の端を指さすおじいさん。

なぜか鉢植えの世話を手伝うことになった。

足つきの陶器の鉢だったり、黒いビニール製のポット苗だったり、シクラメンの花も桃、白、紫とさまざま。

たまにシクラメンに似た、だけど葉っぱが違う、別の花がまじっていた。

「全部シクラメンかと思ってました、これカタクリの花ですよね」

返事はない。おじいさんはとても寡黙な方のようだ。

「きれいに咲きましたね」

と言うと、無言でうなづいていた。

 

 

 

……という夢をみたんだ。

どこかほほえましい内容だったので、その友人に

「こんな夢みたよ、保治さんいなかったけど」とメールを送った。

夢に出てきたのは、友人が以前ひとりで住んでいた家だった。

持ち家だと聞いていたが、家族は他県へ移住しており、その後友人も引っ越してしまった。

今は空き家になっている。

「出窓に置いてたシクラメンの鉢植えが、今日一輪咲いてた。なんか偶然」

友人から、花の写真が添付された返信がきた。

次の日、もう一通メールが届いた。

「じいさんが生きてた頃、自分は覚えてないけど、あの家の庭にカタクリが植えてあったって叔母が言ってる」

夢に出てきたおじいさんの風貌を聞かれたので

「頭頂部不毛、細身長身、すこぶる寡黙。全体的に肌色だったから、ひょっとして全裸だったかも」と答えた。

「それ全裸じゃなくてラクダの上下。水やり手伝ってくれてありがとう」

と言われた。

単なる夢と偶然と言ってしまえばそれまでだが、何だか嬉しかった。

(了)

 

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