短編 洒落にならない怖い話

監視カメラの女【ゆっくり朗読】3200

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ダムドファイルより引用。記憶を頼りにしてますので、多少アレンジが入ってると思います。

2008/09/11 12:48「怖い話投稿:ホラーテラー」

とある所に工場がある。浅野目さんはそこで警備員として働き始めた。

警備員室にはモニターが多数あり、工場の各場所に設置された監視カメラの映像が映されるようになっていた。

警備員はそれで工場内を二十四時間いつでも監視する事が出来た。

職場には古株の先輩;鑓水さんがいて、まだ若い浅野目さんとは随分歳が離れている。

そんな職場に慣れ始めたある日、浅野目さんはその日独りで夜勤する事になっていた。

その日は、早いシフトの鑓水さんとも少し勤務時間が被っており、いろいろ話をしていた。

ふと、鑓水さんは浅野目さんの顔を見て

「……似ているなぁ」と呟く。

「誰にですか?」と浅野目さんが尋ねると、鑓水さんが

「昔、工場で働いていた男、海鋒にじゃよ」

浅野目さんは、自分に似ているという事もあり、海鋒さんについて気になった。

続けて鑓水さんが語り出した。

鑓水:「浅野目、お前に似ていると言った海鋒にはなぁ、付き合ってる華子がいたんじゃよ。この工場で働いていた女性でな。まぁ、いわゆる職場恋愛じゃな」

浅野目:「どんな人だったんですか?」

鑓水:「華子はとても綺麗でなぁ、わしら工場で働く男共の憧れの的じゃった。艶やかな長い黒髪が美しくて、それを華子も自慢げにしておった。なんでも海鋒が長い黒髪が好きらしくて、華子は、海鋒のためにそうしたみたいじゃった。二人は周りも羨むぐらいの仲じゃった、あの事が起こるまでは……」

浅野目:「……あの事?」

鑓水:「……華子が工場の機械に巻き込まれて死んだんじゃ。見つかった時は、首と胴体がバラバラじゃった。大事にしていた長い黒髪が災いしてな……亡くなる直前には、海鋒の誕生日が近い事もあって、プレゼントを用意していたみたいじゃったのに、本当にかわいそうじゃ」

浅野目さんはとんでもない事を聞いてしまったと内心では思った。

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そして、鑓水さんが上がる時間になった。

鑓水さんが帰り際に、「そういえば、今頃じゃったかな、海鋒の誕生日って」と言って、先に上がった。

浅野目さんは、独りで夜勤していたが特に何事もなく時計の針が進む。

深夜二時を過ぎた頃、浅野目さんは、ふと工場の機械を映している監視カメラのモニターに人影が映るのを見た。

泥棒かと思い、良く見てみると髪の長い女性のようだ。長い髪で顔が隠れて見えない。

……のそっ、のそっ。

その人影が歩き出して、モニターから消えた。

……のそっ、のそっ。

工場の出入り口のカメラのモニターにその女が映る。そして、女は出入り口を出た。

……のそっ、のそっ。

今度は廊下の監視カメラが女をとらえる。

女は廊下を歩いている。

ここで、浅野目さんは肝心な事に気付いてしまった。

工場内、工場の出入り口、廊下……

そう、女が警備員室にどんどん近付いている事に。

浅野目さんはパニックに陥る。

しかし、女はどんどん近付いてくる。次のカメラ、次のカメラと映るモニターを変えながら着実に。

そして、どのモニターにも映らなくなった。

しばしの静寂が部屋をつつむ……

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

浅野目さんは耳を塞いで、丸くなり、黙ってやり過ごす事しか出来なかった。

ドンドンドン……

……警備員室のドアを叩く音が止んだ。

浅野目さんは冷静さを取り戻した後、ドアを開けて外を確認してみた。

……外には誰も居なかった、ただポツンと白い箱が置いてあるだけで。

帰り際の鑓水さんの言葉が、ふと甦る。

浅野目さんは、ゴクリと唾を飲んだ後、その白い箱をゆっくりと開けた。

そこには、髪の長い女の生首が入っていた。

(了)

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