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邪悪なエンジェルさま

更新日:

中学生の時

2003/05/31 16:14

例に漏れずウチの学校でも、コックリさんの亜流だと思うんですが『エンジェルさま』というのが大流行して、私も仲良しの友人と三~四人で集まっては休み時間にやってました。

エンジェルさまは、五十音と『はい・いいえ』のある紙を用意して、硬貨じゃなく鉛筆を向かい合って座った人間二人で持って(指相撲みたいに)やる降霊ごっこです。

流行すぎて、おかしな体験をする人が増えてきました。

授業が始まっても鉛筆を掴んだ手が離れずに、ゴリゴリとひたすら円を書き続けて先生に叱られたり、紙にくっつけたままにしなくちゃいけないはずの鉛筆が浮かんで、見学していた子の手の甲を突き刺す事件があったり……

でも、自分達のグループじゃなかったし、クラスの恋愛事情なんてくだらない事しか聞かずにはしゃいでいた私達は、その日も怖がる事なくエンジェルさまをはじめました。

鉛筆を握るのが私と正代、見学&質問するのが栄子と千代美。

最初はこの中に好きな人がいる子がいるかとか他愛のない質問をしていたんですが、上記の事件が起きて時間が経ってなかったのもあり、千代美が

「この間珠江ちゃんや喜久子ちゃん達のところにいらっしゃったエンジェルさまはあなたですか?」

と聞きました。

答えは『はい』。

ここで四人とも顔を見合わせてしまいました。怖いというより「えっ?」という感じで。

次にもう一度千代美が、「あなたは悪いエンジェルさまですか?」と聞きました。

答えは『いいえ』

私もみんなもほっとしました。

なんだかいつもより手が疲れるので早く終わりにしたいな~とも思っていたので、ここで『はい』と答えられてしまったら長引きそうで嫌でしたし。

次に珠江が千代美の質問を継いだ形で質問しました。

「あなたは良いエンジェルさまですか?」

答えは『いいえ』

この瞬間、さーっと血の気が引いていくのを感じました。

と同時に「きゃっ!」と叫んで、一緒に鉛筆を握っていた正代が恐怖で鉛筆を離してしまったのです。

すぐ後に私も鉛筆を離し、「急に離さないでよー!」とどきどきしながら正代に怒りました。

エンジェルさまも終わらせる時には決まりがあり、それをするまで鉛筆から手を離してはいけない事になってたからです。

その約束を破ってしまった事と、さっきの最後の答えが怖くて、四人で大げさに面白い話をして大声で笑ってました。

そのうちに正代がすくっと立ち上がって、「水飲んでくる」と言いました。

さっきまで大笑いしていたテンションから急に素に戻ったような、奇妙な印象を受けましたが、私も他の友人も「あっそう~」と返事だけして、また話に戻りました。

十分くらい経ったでしょうか。

珠江が「正代遅くない?」と言いました。

水飲み場は教室のすぐ外です。

ちょっと水飲んで帰ってくるなら三分もかからないはずなのに、まだ正代は帰ってきません。

「トイレ寄ってきてるんじゃない?」

と千代美が言ったんですが、さっきの事もあるし、なんだか気になったので、三人で様子を見に行こうと教室の扉を引きました。

すると、目の前の水のみ場で、正代が蛇口に口をつける姿勢で腰を屈めていました。

「ああ、なんだ、まだ水飲んでたんだ」と少し安心して、正代の隣りに行って自分も水を飲もうとした時です。

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正代の顔を見た私は恐怖で凍りつきました。

正代は口元に笑みを浮かべたまま、心底幸せそうな顔で水を飲んでいたんです……白目で。

「正代っ!」と私は勇気を振り絞って正代の肩を掴み、蛇口から顔を上げさせました。

けれど正代は白目のまま無言で、ぐいぐいまた水を飲もうと顔を蛇口に近づけます。

おかしいと気付いた千代美と珠江も手伝って、三人がかりで蛇口から正代を引き剥がそうとするのですが、もの凄い力でなかなか離れません。

その間も

「正代!なにやってるの!?」

「手、はなしなって!」

と皆で叫び続け、私達は半泣きになっていたんですが、突然正代が

「おみずぅーーーーーーー!!!!」と恐ろしく甲高い声で叫んだと同時に、蛇口を掴んでいた手が離れました。

あの時の声はほんとに、本当に怖かったです。

正代の声じゃないみたいでした。

その直後、正代は少しだけ気を失ってたのですが、(というかぐったりして何も反応してくれなかった……)正気になった時に話を聞いてみると、なんだかむしょうに喉が渇いて、水飲み場に言って水を飲み始めたら、それがすごくおいしく感じたんだそうです。

で、自分でも驚くほどごくごくと飲んでいて、だんだん苦しくなってきたのに水は美味しくて、飲むのを止めなきゃと思っているのに、身体が動かなくって水を飲み続けてて……

その後は、私達に蛇口から引き剥がされるまで記憶がないそうです。

それ以来、エンジェルさんをする事は二度となかったんですが、今あの時の事を思い出して書いているだけで、心臓がドキドキして怖くなってきます……

文章にしてみるとそうでもないかもしれませんが、理由もなにもわからないのでほんのりと怖い体験でした。

(了)

 

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