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短編 怪談

自転車とマンホール

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私は今日も絵画コンテストの作品製作のため、学校の美術室にこもりきっていた。

来年になれば受験勉強が始まってしまう。

最後のチャンス。

だから「コンコン」と警備員がたずねてくるまで、時計が10時を越している事にまったく気づかなかったのだ。

自宅からの連絡で探しに来てくれた警備員に礼をし、私は荷物を抱えて美術室を飛び出した。

真っ暗闇の学校内はとても不気味で、私の足音だけが反響していやに綺麗に聞こえる。

裏口から自転車置き場に行き、カギの掛かっていない自転車に私は乗り込むと、自宅の方へとペダルを漕ぎ出した。

昨日の月夜とはうってかわって、今日は雲に隠れた月がぼんやりと照らすのみ。

少々田舎にある学校だったため街灯もまばらで、ライト無しではまったく見えないなんて所もあり、前輪が作り出す光だけが前へ前へと広がる。

時折電柱の影から私を見てるような影もあったが、ドキリとした後にゴミ箱と気づき、ふぅーと息をなでおろす。

そんな矢先……

『ガギギギギギッッッッ!』

と突然チェーンに強烈な衝撃が加わった。

まるで何か硬いものが巻き込まれて暴れているような感触。

同時にペダルを踏み込めなくなり、私はブレーキをかける間もなく横に倒れこんだ。

幸い怪我はしなかったものの、自転車のチェーンは

無理やり引きちぎられたかのようにズタズタになっていて、走れないことは明らかでした。

「あーあ……」

深い溜息の後、私は自転車のカゴにあった荷物を背負って自転車を一旦道の脇に寄せ、あと10分ほどで着く自宅の方へと歩き出すのだった。

帰路の途中で私は気がついた。

行き止まりへ続く分かれ道にある大きめのマンホール。

小さい頃から私はそのマンホールが気になって仕方なかった。

回りにはほとんどマンホールは無く、まるで異端者のようにある鉄の板。

中からゴゥゴゥと無気味な音を響かせては私の童心に恐怖を植え付けたそれ。

自転車通学を始めてからは素通りしていた、それ。

急に寒気を覚えた私は、重い荷物を支える足に力を込めて一気に走りぬけようと走り出す。

が、私の体がちょうどマンホールを越えたとき、無気味な音が背後から聞こえてきた。

『ギギギ……ガギギギ……ギャギャギャギャギャギャギャギャ』

私は振り向くことも出来ずに音が近づいてくるのを背中で聞いていた。

金属の塊がコンクリートの上を引きずられるような音は、黒板をひっかくように体中の神経を総毛立ちさせ、私思わず両手で耳を塞ぎ叫んだ。

「やめろ、やめてくれぇ……!」

その時私が横目で見たのは、赤い髪の毛のような束に引きずられ、マンホールの中へとグシャグシャになって引きずり込まれていく私の自転車だった。

私は今も自転車通学を続けている……

(了)

 

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