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短編 洒落にならない怖い話

異臭

投稿日:

二十二歳の時の出来事。当時俺は石神井公園に住んでいた。

38 名無し:2006/01/09(月) 01:43:36

七月も終わろうかという良く晴れた日曜の朝、大泉学園にいる悪友がいきなり青ざめた顔で俺の部屋に飛び込んで来た。

そして「今すぐ一緒にアパートまで来てくれ」と懇願するではないか。

こちらの問い掛けには一切答えずに、掴んだ俺の手首を強く握り締めて来た。

何だか担がれている気もしたが結局強引さに負けアパートまで行ってみた。

そこは木造二階建、共同玄関のありふれた作りだった。

一体やつは何をびびっているのか、俺の背中に張り付いたまま動こうとしない。

かまわず玄関に一歩入った瞬間、嫌な腐敗臭が鼻から脳味噌に抜けた。

それまでの人生で一度も体験したことがないなんとも形容し難い臭いだったが、俺の本能が「これはヤバイ」と叫んでいた。

ハッキリいって、もう目の前の急な階段を登るのは嫌だった。

しかし振り向くと悪友のすがるような目がこちらを見返して来た。

しょうがないので度胸を決め階段を昇りきると、右手にある悪友の部屋のドアを開けた。

部屋の中は普段生活している状態そのままだった。

ただ例の臭いはますますその濃度を増し躯全体が包み込まれる様だった……

俺と悪友は部屋へ飛び込むと、急いでドアを閉めた。

俺はたまらず問いただした。

「おい、何なんだこの臭いは?」

「……」

「もういいかげん教えてくれてもいいだろう?」

相変わらず怯えた顔の悪友は黙って壁を指差した。

「隣の部屋を見れば分かる」

「他人の部屋を勝手に覗いちゃダメだろう」

「いいから」

言われてみれば階段の方が部屋の中より臭いが強かったが……

再び意を決した俺は、背中に悪友を従えたまま音を殺してそろりそろりと廊下を進んだ。

それにしてもなんて酷い臭いなんだ。

おまけに静かだ。静か過ぎる。

やっとの思いでドアの前までたどり着いた。

お互い目配せをしノブに手をかけようとしたその時、微かにドアが開いているのがわかった。

俺は隙間に目を寄せ中を覗いた。閉めきったカーテン、明かりが点いたままの白熱球、部屋の真ん中には布団が敷きっ放しだ。

でも隙間が細すぎてそれ以上は見えない。

俺はそっとドアを押した。

布団の上に白いTシャツ姿の若い男が寝ていた。ピクリとも動かない。

顔はまるで土色だ。

文章にすると長いがこれらの光景を一瞬で理解した。

もちろん男は死んでいた。

死してなお己の存在を主張するかの様に異臭を放っていたのだ。

俺と悪友は逃げる様にそのアパートを飛び出すと鷺ノ宮に向かった。

そこにはもう一人の親友がいて、何かというとそこを根城にして遊び呆けていたからだ。

事の顛末はこうだ。

大泉学園の悪友が、ある時隣の部屋から変な臭いがしているのに気付いた。

最初は我慢していたが、日に日に酷くなるので日曜日の朝六時過ぎに注意しようと隣の部屋のドアを叩いたそうだ。

一向に返事がないのでノブを回したらドアが開いてしまった。

そして死体に遭遇し、あわてて俺のアパートまで飛んで来たと……

その後俺達三人はパチンコやボウリングをしながら一週間程鷺ノ宮のアパートで自堕落な生活を送った。

やがて悪友は荷物を取りに大泉学園のアパートに帰ると言い出した。

正直俺はあの臭いが記憶から離れず、もう一度あそこに行くのはごめんだった。

そこで適当な理由を付けて一人石神井公園のアパートに帰った。

仕方なく残った二人で荷物を取りに戻ったそうだが、あの強烈な臭いは変わらず残っていたみたいだ……

(了)

 

呪胎怪談 [ 吉澤有貴 ]

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