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中編 稲川淳二

死の旅館【稲川淳二】 

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あれはねぇ、何年前になるのかなぁ、網走に流氷の取材に行こうという話しがありましてね。

先にカメラクルーは行っているんですよ。私とスタッフは、後から夜行列車に乗って行く……

で、駅に着いた所から撮影が始まりますよって言うんですね。

汽車の中はね、私とスタッフ、あとは履物は脱いでいるんだけど、カーテンが閉まっていて、もう寝てるのかなぁ、ともかく三人しかいないんですよ。

ガタガタン、ガタガタン、ピーーーッ!汽笛を鳴らしながら、列車は進んでいくんですよね……

時々、踏み切りの遮断機の音がカンカンカンカンカンと通り過ぎていく……

まだ、起きているんでしょうね、遠くに人家の窓の明かりが時々闇に浮かんで見えるんですよ……なんとも寂しかったなぁ。

やること無いんで、ベットに腰掛けてスタッフとワンカップを飲みながらね、なんだかんだと話していたの。

しばらくしたら、列車の連結のドアが「ガタン」と開いて、ふっと見ると若い娘が二人横を通ったんですね。

向こうも、私達を見て……私も一応芸能人だから、「あっ!稲川さんですか?」って言うから、「そうだよ、どこ行くの?」「私達、流氷を見に行くんです」って。

そしたら、連れのスタッフが、「あ、本当?僕達も流氷の取材に行くんだよ。

良かったらさぁ、ここで話していかない?暇でさぁ」って言ったら、「いいんですか?」って聞くから「いいよ」って。

そしたら、二人もお菓子やら、ジュースを出して、なんだかんだと話が盛り上がったんです。

そうこう話しているうちに、女の子の一人が、「稲川さん、本当は私達二人じゃなくて、四人で流氷見に行くことになっていたんです……それが二人になっちゃって」と言うんですよ。

私「ん?」と思ったの「なっちゃった」って言うのは何かな?って。

「あの~、稲川さん。私達の友達、幽霊に殺されたんです……」

「えぇ?……幽霊に殺された!?」

そこで、詳しく話を聞いてみると、もともと彼女達四人は、旅行好きな娘達で、最初は一人一人で旅行を楽しんでいたらしいんだけど、たまたま旅行中に知り合って、偶然にも奈良や京都の娘達だったから、

「じゃ、一緒に旅行しようよ」ってことになったらしいんですね。

で、その内の一人でみゆき(仮名)が、日本海側の北国のある旅館で、安くて良さそうな所があるからそこへ行かない?ってガリ版刷りのパンフレットを持ってきた。

当時は、旅行会社とかでなくて、こういう手作りのパンフレットのところが安くて、結構穴場があったりして、流行だったらしいんですよ。

それが、その時から半年ぐらい前だったって言ってたなぁ。

最初は四人で行こうという話しになったんだけど、私と話している二人が、仕事の都合でいけなくなっちゃった。

そしたら「じゃ、私達二人で行ってくるわ」ということになった。

で、みゆきと夏子(仮名)の二人で行ったらしいんですね……

その旅館は、最寄の駅からタクシーに乗って、かなり走るんだけど日本海に面した山の上に建っているそうです。

こじんまりしてるけど、日本風のなかなか雰囲気の良いたたずまいで、大きな立派な板の看板がある歴史のありそうな旅館だったと言うんですよ。

旅館に着くと、和服姿の女将さんと、もう一人中年のおばさんが迎えてくれた。

この中年のおばさんというのが、女将さんのお姉さんらしいんですね。

「まぁまぁ、よくいらっしゃいました。遠いところお疲れになったでしょう」ニコニコして、大変人の良さそうな、感じの良い人。

「こちらになります、どうぞ……」と部屋に案内された。

部屋は和室で、縁側があって、その向こうには手入れのされた庭が見える。

「わぁ、ここいいところだねぇ」とみゆき。

「本当。気持ちいいね」

あまり人に知られていない旅館なのか、他には客がなかったといいます。

さて、旅館に着いたことを家に連絡しようと思ったんだけど、今電話が故障で使えないという。

見たらテレビも無い。

「電話使えないんだ……あら、ここテレビも無いよ」と夏子。

「どうする?」

「じゃ、後で町から連絡しよう」

と話していたら、「どうぞお風呂が沸きましたので、ご順でお入り下さい。なにせ小さなお風呂ですから、一人ずつお願いします」という。

「じゃ、私先に入ってくるね」と夏子が風呂道具を持って立ち上がった。

お風呂は別棟になっていたそうです。

長い屋根の下、板敷きの廊下がずっとあって、そこをひたひたと渡って行く。

その時、ふと視線を感じたものだから、立ち止まって振り返って見ると、お勝手の格子窓が見えた。

で、よく見てみると窓の格子と格子の間から片方の目が、じーっとこっちを覗いてる。

その目が異様に気味悪い。

「わぁ、ヤダ!」

と思ったけど、田舎の旅館だから、準備のこととかもあって、こちらの様子伺っているのかなと思って、「ま、いいかっ」とお風呂場に向かった。

お風呂場について、戸を開けようとしたその瞬間、「ギャ~~~ッッ!!」という悲鳴が上がったからびっくりした。

紛れも無いみゆきの悲鳴だから、慌ててとって返した。

バンッと部屋の扉を開けて飛び込むと、みゆきが部屋の隅にうずくまってガタガタ震えている。

「みゆき、どうしたのよ!?」と聞くと、「変わろう、この旅館おかしいよ、ここ嫌だよ、ねぇ夏子、ここ変わろう」って半泣きで訴える。

「どうしたの?何があったのよ?」と夏子が聞くが、「ねぇ夏子お願い、ここ変わろう、他の旅館行こう」とパニック状態になっている。

「ちょっと何言っているのよ、今来たばかりじゃない、しっかりしてよ!」と言っても、「嫌だよ、ここへんだよ、お願い変わろう」としか言わない。

そうこうしているうちに、「どうかしましたか?」と女将さんが顔を出した。

夏子は、「何でもないんです。この子疲れていて、お騒がせしてすみません」ってとにかく引き取ってもらった。

みゆきを落ち着かせて、どうしたの?と聞くと、「……もう一人のおばさんいたでしょ」

「うん……」

「私が縁側から庭を眺めていたら、そのおばさんが、あの高台の方を通っていったんだけど……その時おばさんが、すーって透けたんだよ!そしてまた元に戻ったの!……あれ、普通じゃないよ、幽霊だよ!ねぇ夏子、絶対おかしいよ!だからここ変わろう!!」と言う。

夏子は、「透けたって?……何言ってんのよ!だっておばさん二人とも足あったじゃない。みゆきは、疲れてるんだよ。見間違いだよ」と説得した。

「……そうかな?でも、本当に透けて見えたんだけどな……」

夏子はみゆきが落ち着くのを待って「じゃ、お風呂入ってくるね」と再び風呂場に向かった。

夏子がお風呂から上がると、みゆきは大分落ち着きを取り戻している。

「みゆきもお風呂に入っておいでよ、さっぱりするから。その間に私町に出て、二人の家に連絡したり、雑誌とか買ってきてあげる」

と言ったら、みゆきも、「じゃ、私もお風呂入ってくる」って。

夏子は旅館を出て、坂を下った途中のガソリンスタンドでタクシーを呼んでもらって町に出た。

夏は日が沈むのが遅いですから、家に連絡もしてぶらぶらしているうちに、結構時間がたってた。

「いけない!もうこんな時間……」

夏子はタクシーに乗り込み、旅館の名前と住所を告げると、タクシーの運転手は、「そんな所に旅館あったけなぁ……?」と言う。

「ありますよ……坂の上のガソリンスタンドまで行ってくれれば、分かりますから」

「あっそう、じゃ、ともかく行ってみようか……」と、ブーと走り出した。

しばらく走ると運転手が、

「……あそこ親戚でも来て、再開したのかなぁ?……いやね、思い出したよ。確かにあったよ旅館が一軒……でも、あそこ随分前に閉館したはずなんだけどなぁ、やってるの?」
「やってますよ……だっておじさん、私達そこに泊まっているんだから」

「ふ~ん、やってるんだ……そうかい?」

更に行くと見覚えのあるガソリンスタンドが見えてきて、更に走ると、キュッとタクシーが止まった。

「はいよ……ここだよ」

「……!?」

見ると、鬱蒼とした雑草が一面に伸びて、ぼろぼろの朽ち果てた建物があるだけ。

「おじさん、ここじゃないよ」

「だって、あんたの言う住所はここだよ……他に旅館は無いし……」

「……だって、私が来たときは、もっと綺麗でちゃんとした建物だったよ」

「でも、この辺ここしか旅館は無いんだよ。旅館の看板見てみな……」

見ると崩れかかった大きな板の看板があって、確かに自分達の泊まっている旅館名が書いてある。

「あれ~、もっと立派な看板だったのに、変だよ……見間違いだったのかな?」

すると運転手さんが、「ここは一本道で狭いから、俺はずっと先に行ってUターンして戻ってくるからさ、もし違っていたらまた乗せてあげるよ。待っていてあげるから」
って言ってくれた。

「うん、そうしたらお願いね」

って夏子はここまでの料金を払って旅館に向かった。

もう、西日が山裾に隠れようとしている。

あちこち雑草が伸び、何年も手入れされてないのが一目で分かる。

「おかしいなぁ、こんなんじゃなかったのになぁ……」

と思いながら、ガラガラと旅館の扉を開けて中に入った。

中は日暮れで薄暗いのに、電気が付いていない。

部屋に行くと、誰もいない。

「……ただいまぁ、みゆき、今帰ってきたよ。どこに居るの?」

声を掛けるけど、返事がない。

「ねぇ、みゆき、どこ?」

って言ったら後ろから、「お帰りなさいませ」

うわっ、と思って振り向くと、女将さんが立ってた。

「お連れ様は、お食事です」

「えっ、この部屋じゃないんですか?」

「お食事はあちらです、どうぞ……」と歩き出す。

「はい、すみません」と後についていった。

暗い廊下をついていって、右側の襖を開けて「どうぞ」

と……中に入ると、薄暗い部屋の中、何も乗っていない箱膳が二つ置いてあって、その一つにみゆきが背を向けて座っている。

「みゆき行って来たよ、遅くなっちゃてごめんね」

と荷物をみゆきの横に置いたけど、背を向けたまま返事もしない。

「なによ、怒ってんの?」

……返事なし。

「もう、嫌だからね、そういうの……ねぇ、みゆきってば……」

肩に手を置くと、みゆきはそのままずーっと前のめりに倒れこんだ。

「何やってんのよ、みゆき、脅かさないでよ、怒るよ」

って顔を覗き込むと、目が開いたままになってる。

「!!……みゆきっ!どうしたの、みゆき!ねぇ、しっかりして!」

あわててみゆきを抱き起こした。

肩をゆすると、カクカクと頭が揺れるが、反応しない。

「女将さん、みゆきの様子がおかしいの!ねぇ、女将さん!!」

「……」

「ちょっと、みゆきしっかりしてよ……女将さん、この娘死んでるみたい!どうしょう?!」って言っているうちに気付いた。

普通お客がこんな事態だったら、旅館の従業員として慌てるはず、それが、女将さんぜんぜん普通にしている。

えっ?と思って、女将さんを見ると、女将さんの顔がつーっと寄って来て、

「……今度は、あんたの番だよ!」って言う。

夏子は怖くなって「キャー!」と叫びながら女将さんの横をすり抜けて、玄関の方へ逃げ出した。

そうすると「待ちなさいよ、待ちなさい!」と女将さんが追ってくる。

お勝手からはもう一人のおばさんが出てきて、「待つんだよ~!」と、追いかけてくる。

「助けて~!!」

靴も履かず、玄関を飛び出すと、丁度タクシーが坂から降りてくるところだった。

「おじさん、助けてー!」

タクシーに向かって駆け寄ると、タクシーは慌ててスピードを上げて走り出すんだ。

「おじさん、待って!乗せてお願い、助けてー!」

タクシーはドアを開けたものの、止まろうとしない、スピードを上げたり、下げたりしながら夏子の来るのを待っている。

夏子は必死で走って、どうにかタクシーへ飛び乗った。

タクシーは夏子が乗ると、急いで扉を閉めて、ヴォーッと猛スピードで走り出した。

運転手が夏子に、「どうした?何があった?」と聞くが、夏子は「おじさん、おじさん」と泣きじゃくるばかり。

「どうしたんだ、何があったんだ!?」

「おじさん、どうしょう?友達が死んじゃった!」と泣きじゃくる。

「何だって!……で、どうする?」

「警察に行かなきゃいけないかも知れない」

「分かった!……さっきな、あんたの後ろからさ、大きな人魂が二つ追いかけてきたの、俺見えたんだよ!……だから車止められなかったんだ、ごめんな……」って言った。

「おじさん、あそこなんなの!?」

「俺、おかしいと思ったんだよ、確かに昔あそこで姉妹が旅館やっていたんだよ……けどな、十年くらい前に、強盗が入って、女将は部屋で、姉の方は台所で殴り殺されていたんだよ……犯人今だに捕まってなくて、それ以来あそこの旅館は閉鎖されていたはずなんだよ……」

「……じゃ、私達が会ったおばさん達は??」

「……わからねぇよ……」

……ガタガタン、ガタガタン……

「結局、座敷で死んでいたみゆきは、駆けつけた警察官によって発見されたんです」

「死因はショック死、当然夏子の話は信用してくれませんでした。逆に警察は何でこんなところに来たのか不審がり、夏子はさんざん尋問されたそうです」

「稲川さん、夏子はしばらく入院して、それ以来旅行はやめてしまったんです……だから流氷、本当は四人で来るはずだったんですよ……」

こんな話をね、夜汽車の中で聞かされましたよ……

殴り殺された姉妹の怨霊は、今も旅館を続けているんですね……

そして、そこに迷い込んでしまった旅人を仲間にしようとしてるんですかね。

ガタガタン、ガタガタン、ピーーーッ、カンカンカンカンって……

私はね、この北に向かう汽車が異様に寂しく、怖かったのを覚えています……

(了)

 

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