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中編 稲川淳二

故郷のクラス会【稲川淳二】

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平田君っていう、富山の出身なんですけどね、東京の大学出てそのまま東京で就職しちゃった。

で、会社入って二年ぐらいたったころにね、会社から自分のアパート帰ったら、クラス会の便りがきていたんです。

まぁ、しばらく故郷帰ってないから、今年こそは、お盆に帰ろうと思っていたからね、いいなぁ、クラス会と思った。たまには故郷の友人とも話したい。

で、出席することにしたんですね。

平田君、東京で結構リッチな生活してたんですね、社会人二年生なのに、中古とはいえ、一応、自分の自動車を持ってる。

そうだ、車で帰ろうって思って、富山ですからね、結構距離はありますが、どうにかなるだろうと。

で、ちょうどお盆の時期だから、道が混んじゃうっていうんで、夜中のうちから出て、まぁ、ゆっくり行けばいいやって、一人故郷に向かったわけですよ。

出たタイミンがよかったのか、そんなに混まずに、順調に進んだ。

途中で仮眠なんか取りながら、走っていると、やがて富山県、高速を降りて、山道に入っていって、昼も過ぎて夕方、まだ陽のあるうちに、峠に差し掛かった。

その峠を越えれば、自分の町なんですね。

小ちゃな田舎町だけど、懐かしい。

あーもうすぐだなぁと、ブーッと車で急な山道を上って、あとはカーブの多い細い道があるんだけど、それさえ下ってしまえばいいわけだ。

そこは、「若草山」というんですよ。

木々の間から、もう沈む太陽が見える。

もう少しすると、暗くなっちゃう。

でも、まだ陽があるから、ライトを点けなくても、どうにか走れた。

やはり故郷は懐かしい。

ましてやクラス会がありますからね、懐かしい友人の顔や、もしかしたら、女の子なんかも、綺麗になってるかも知れないし、平田君、東京に彼女がいるわけじゃないから、ほのかな期待もあったんですね。

で、ブーッと車のスピード上げて急いだ。

と、大分進んで行くと、もう薄暗い山道、前方に誰かが歩いてる。

へーっ!?こんな山道なんだろう?と思った。

近付いて行くと、若い女性なんですね、それも正装しているんだって。

スピード落として、脇をすり抜けるとき、やはり気になるから、ヒョイと見たら、なかなかの美人さん。

わーっ!って思ってね。

だけど、なんか、どこかで見た顔だなぁって思って、車を停めた。

そして、バックミラー見てみると、だんだん彼女が近付いて来る。

平田君、窓から顔を出して、「大丈夫ですか?乗って行きますか?」

って声を掛けた。

そしたら、彼女、ニコッとして頷くと、タッタッタッタッと、駆け寄って来る。

きちんと正装した若い女性、なかなか可愛らしい。

隣の助手席に乗せてね、「何処まで?」って聞いたら、平田君の町の名前いうんで、よくよく顔を見たら、「あれー?もしかしたら、加藤しのぶちゃん?」

って聞いたら、「ええ」って。

「俺だよ、平田だよ!」って言ったら、「あー、平田君!」

「なんだよぉ、久しぶりだなぁ!」ってね。

その加藤しのぶちゃんという女の子も、やっぱり東京の学校行って、東京で勤めたわけなんですがね、同じ東京に暮らしながら、会う機会がなかったわけですよね、お互い。

彼女もやっぱりクラス会に来たそうです。

ところが、車で来たけど、途中で故障しちゃったもんだから、しょうがない、歩いて来たって言う。

あっそっか!って、彼女乗っけて、ご機嫌で運転してね、彼女の実家まで送り届けて、「じゃ、明日クラス会で会おう」って。

彼女も「うん」なんて答えて。

彼女が降りるとき、長い髪が揺れて、とてもいい匂いがした。

平田君にしてみれば、こんなに嬉しいことないですよ。

偶然出会った娘が、クラスメイトで、あんなに可愛くなってて、また、明日も会える。

しかも、同じ東京に住んでるわけですから、これから先もね、会えるかも知れないし。

やったぁ!っと思って、やっぱ来て良かった!って思って、上機嫌で自分の実家に帰った。

実家に着いたら、両親が出迎えてくれて、「お前、たまには、顔出せ」とか怒られながら、食べきれない料理出されて、ガンガンお酒飲んで、食べて、いいなぁ、故郷…とか思ってね。

何しろ明日のこと考えると、嬉しくてしょうがないから、上機嫌で遅くまで飲んだんですね。

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で、翌日。

クラス会は、夕方からですから、一応、お墓参りして、それから、しっかりビシッと決めてね、クラス会に行ったわけですよ。

町に、小さな宴会場があるわけだ。

どんどん、みんな集まってきて、「おー、しばらくだな。どうしてる?」なんてね。

さんざん、いろんな話で盛り上がったり、笑ったり、飲んで食べて、いい感じ。

ところが、平田君にしてみると、しばらくぶりの友人も嬉しいけど、昨日再会を約束した加藤しのぶちゃんが気になるわけですよ。

いない……

そしたら向こうから、幼馴染みが来たから、「よう!」とか声かけてね。

幼馴染みも、「久しぶりだなぁ、たまには顔出せよ」

なんて言って、ひとしきり挨拶した後に、平田君が、「あのさぁ、俺、昨日、峠の所でさぁ」

「うん?」

「ほら、若草山の峠だけど、あそこでさぁ、加藤しのぶちゃんと偶然会ってさぁ、車に乗っけたんだよ」

「……」

「そんで、加藤しのぶちゃんも、今日のクラス会に出席するって言ってたんだけど、見なかった?」って聞いた。

そしたら、地元にずっと住んでるその幼馴染みが、「お前、それ本当か?」って言う。

「何で?本当だよ」

「本当に、お前、加藤しのぶに会ったの?」

「会ったよ、若草山の峠を加藤しのぶちゃん歩いていたから声かけて、俺、一緒に帰って彼女の家に送っていったんだから」

そしたら、幼馴染みが、「あー、そうか…お前、東京に行ってて知らなかったろ…加藤しのぶなぁ、身体、悪くしてさぁ、こっちに帰ってきたんだよ」

「……」

「そんでさぁ、二年ぐらい前かなぁ、死んだよ」って言うんだ。

「うそつけ!」

「いや、本当だよ」って、「だってお前、昨日、俺たしかに、加藤しのぶちゃんを若草山の道で見つけて、車に乗っけて、しゃべりながら帰って来たんだぜ!」

そしたら、「加藤しのぶのお墓ってさぁ、その若草山にあるんだよなぁ」

って言いながら、平田君の肩に手を伸ばして、何かを摘んで取った。

で、ん?って見たら、それは長ーい女の髪の毛だったそうですよ。

平田君は翌日、若草山に眠る加藤しのぶちゃんの墓を訪ねてね、お花を供えてから、東京に戻ったそうです。

不思議な体験だったけど、加藤しのぶちゃんに会えて、良かったって、平田君、言ってましたね。

何かちょっといい話ですよねぇ。

(了)

 

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