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中編 稲川淳二

赤い半纏 【稲川淳二】 

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この話は、随分昔の話になるんですけど……

私がね、夜中、日本放送でオールナイトニッポンの二部をやっていたときね、受験生の皆さんが、いつも勉強ばかりじゃ辛いだろう、何か、目の覚める様な話はないかなぁと思っていたんですよ。

私は怖い話を、いつもスタッフ相手に、何気なく話していたんですけどね、そんなときスタッフの一人が「稲川さん、その話をラジオでしたらどうですかね?」って言ったの。

「じゃ、やってみようか」って、そんなノリで始めたんですよね。

そしたら、すごい反響だった。あっちこっちからハガキやら手紙が来てね。

若い人が多いのかなぁと思ったんだけど、結構年配の方なんかもいたりしてね。

怖い話はみんな好きなんだなぁと思った。

あるとき、私が局で手紙の整理をしていたら、投書を見ていたディレクターが、「うわ~、なんだこれ、気持ち悪りぃ、怖いな~」って言うんですよ。

そしたら、「何ですか~」って別のスタッフが覗きに来た。

読んでいたスタッフも、「これ凄いなぁ、怖いですよ……うぇ、気持ち悪りぃ~」って、私が手紙の返事書く手を休めて、顔を上げたら、「稲川さん、これ読んでみなよ、怖いよー」っていうから、「どれ?」って読んでみた。

貰ったその手紙というのが、あの「赤い半纏」なんですよ

この人はね、手紙をくれたときに五十歳を過ぎていた。

几帳面な字でね、お話はこの人の女学校時代のお話というから、時代的に戦争に入ったか、入る直前くらいの話なんですよね。

きっと、良いところのお嬢さんなんでしょうね……

この女性が、女学生のころ、親元はなれて、地方から出てきたものだから、寄宿舎に入ったらしいんですよね。

その寄宿舎というのが、昔、小学校だか、分教所を改築した建物だったようですよ。

そこに入った。

自分の他に新入生は何人かいて、先輩の女学生もいる。

周りは当時の田舎のことですからね、何も無い、そんな場所ですよ。

そんなある日の休日のことです。

眼が覚めた。

空は青いし、風も心地よい。もう季節は初夏のころです。

でも田舎のことですからね、やることも無ければ、行く所も無い。

さて、トイレでも行こうかなぁ……

で、トントントントンと、下に降りてトイレに向かった。

トイレは個室が、いくつか並んでる。

特に選ぶつもりは無かったけど、ある個室に、パタンと入った。

さぁ、用をたそうかなぁと思ったら、遠くのほうで、

「赤~い半纏、着せましょか……」と声がした。

あぁ、どこか近所のおばあちゃんが、孫でも負ぶって、子守唄を唄っているんだなぁと思った。

もう昼間です。空も青くて、吹く風も心地よい。

しばらくすると、また、「赤~い半纏、着せましょか……」

どうやら、声は近づいてきている。

あぁ、孫をおんぶして、こちらに近づいてきてるんだなぁ、と思った。

なにせ、田舎の畑の真ん中に建っている寄宿舎ですから、「あぁ、のどかなもんだなぁ……」と思った。

するとその時、「赤~い半纏、着せましょかぁ~!」すぐ近くで声がした。

……あれ?変だなぁ……と思った。

最初の声から、今の声、大分遠くから聞こえてきたはずなのに、今度はやけに近くに聞こえる。

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そんなに早く近づいてくるかなぁ?と思った。

変だなぁと思ったけど、こっちは用をたしているから、まぁいいかと、そのまま続けた。

さぁ、そろそろ出ようかなぁと思ったその時……

隣の個室がありますよね、その、すぐ後ろ、背中の壁越しに、

『赤~い半纏、着せましょかぁぁ!!』

うわっ!と思った。

ビックリして、すぐにトイレを飛び出して、逃げ帰った。

だって、ありえない、そんなに早く移動できるはずないし、外にいたのに隣の個室にいるはずがない。

ただ、これは言わないでおこう、言ったらまずいんじゃないかと思ったから、誰にも言わなかった。

そんなある日、一緒に入居した女学生の一人が、「実は、私、おトイレでね……」

聞いてみると、彼女もまったく同じ体験をしている。

自分も、「……実は私も同じ体験をしている」と打ち明けた。

いったいアレはなんなんだろう?

怖くなったから、先輩に相談した。

そしたら、「あ、あそこはダメ!あそこのトイレは入っちゃダメなの。

先輩からも言われているけど、もう、入っちゃだめよ」と言われた。

「分かりました……でも、あそこ何なんですか?怖いですよね」とあれこれ話し合った。

すると先輩が、「これは、黙っていないで、一応学校に言おう」という事になって、学校へ言った。

学校の方としては、大事な娘さんを預かっていますからね、何か間違いが起きてはいけない、ということで、直ぐに警察へ通報したんですね。

警察は直ぐに来て、事情を聞いたり、下見をしたりして、

「分かりました、悪質ないたずらとは思いますが、何かあってはいけないので、こちらで対処しますから、安心してください」

と言うだけど、どこか、その表情が普通でない。

なんか、変だなと思った。

日がたって警察がやってきた

何でその日にやって来たかは分からないけど、婦人警察官を連れて来ている。

どういうことかと言うと、婦人警官をその個室に入れて、そういう反応が起こるかどうか、その時に犯人をつかまえるというんですよ。

でも、コレよく考えると、おかしい。

だって、犯人がこの日に都合よく来るとは限らない。

犯人を見つけるなら、普通は聞き込みを行うとかするはずですよ。

なのに、いきなり来て、反応があったら捕まえますって、どこかおかしい。

でも、警察は真剣なんです。なんかおかしいなぁ、と思った。

で、何が起こったかというと……

婦人警官が個室に入った。

それを囲むように、警察官が隠れている。

あとは、多分そうであろうと言うことなんです。想像なんです、直接見たわけではありませんから。

婦人警官は個室に入って、一応しゃがむ格好をするわけです。

青い空、風も心地よい、気持ちのいい日ですよ。それも、昼間です。

と、しばらくすると遠くのほうで、「赤~い半纏、着せましょか……」と聞こえる。

ん、出たな……

婦人警官は思った。

黙っていると、「赤~い半纏、着せましょかぁ……赤~い半纏、着せましょかぁ……」声は近づいてきている。

来たな……

しばらくすると、「赤~い半纏、着せましょかぁ!」直ぐそこ、近くで声がする。

これだなと、思った。

で、その後ですよ、自分の直ぐ後ろ、自分が背中を向けている、その後ろから、『赤~い半纏、着せましょかぁぁぁ!!』

来た!!

この婦人警官は、このような事件のおとり捜査を買って出るだけあって気が強いですから、「あぁ!着せられるモンなら、着せてみなさい!!」と、怒鳴った!

その時、近くに待機していた警察官には、その歌は聞こえていない。

「ドゥッ!……ドゥッ!……」という鈍い音が聞こえた。

ん!……みんなに緊張が走った。

「ああぁ!着せられるモンなら、着せてみなさい!!」と言う声が聞こえたものだから、近くによって行った。

しばらく様子を見ていると、トイレの戸の下から、シャァァァァ……と、真っ赤な血が流れだしているもんだから、

「!!……突っ込め~っ!」

と言って、バン!と戸を開けた!!

そのとたん、「うわっっ!!」とみんな驚いた。

しゃがんでいる婦人警官……その首筋に、グサッと、くさび形の木の破片が打ち込まれ、そこから、パァァァァァァーッと血が吹いてる。

そしてそれは、みるみるうちに、婦人警官の制服を「赤い半纏」の様に染めていったというんですよねぇ……

これが、赤い半纏のはじめなんですよ

よく巷に、「赤いちゃんちゃんこ」という話しがありますよ。

でも、あれは違うんだ。

あれは、うちのマネジャーが、この話を出版社に、「えぇ、赤いちゃんちゃんこです」って間違えて言っちゃったもんですから「赤いちゃんちゃんこ」になってしまったんですよ。

あるどこかの大学の女性の教授がね、講演で、「昔の古典があります」って。

「例えば赤い半纏の話」っていうから、あぁ、面白いなぁと思って、私、黙って聞いてましたよ。

そしたら、「あか~い、はんてん、きせましょかぁ~」というから、「チョット待ってよ」と思いました。

と、いうのは、あの話し、手紙で貰ったから節はないんですよ。

あの「あか~い、はんてん、きせましょかぁ~」は、私が勝手に節を付けたメロディなんだ。

だから、古典だと言うけど、それは違うんだ。

ひょっとして、節は違うのかもしれない。

でも、この話しをラジオでやったとき、あのご婦人から苦情がこなかったから多分コレでいいんだろうなぁと思った。

ただ、不思議なことに、あの後、このご婦人から手紙は来なかったなぁ。

今ご健在なら、相当高齢な方ですよね。

これが「赤い半纏」なんです。

(了)

 

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