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短編 ほんのり怖い話

廃屋探検

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大学時代、バイト代を貯めては、地方の廃墟に遠征したり、野宿したりしてた。

元々興味こそあれ、仕切るのはほとんどがその友達。

面倒だったり、金の都合がつかない時は断ってたんだが、2回生の秋ごろ、どうしても行きたい廃屋があると言われた。

金は俺がほとんど出す、ってしつこいので、なんとか親に仕送りを前倒ししてもらって一緒に行った。

気分が乗ればそのまま廃屋に泊り込みなので、移動はレンタカー。

免許持ってるのはこいつだけなんで俺はひたすら盛り上げ役に徹した。

目的の廃墟に着いて、車で周りを散策。

山というか林みたいなところで、人家はまるでない。

林に囲まれた草むらの端に、ポツーンと廃墟がひとつだけある。

すでに噂になっているのか、近所のガキの仕業か、廃墟まで人が踏み込んだ通り道ができている。

錆びた古い空き缶や、色の変わったコンビニ袋、よく分からん木材やらが散乱。

俺の地元にある廃墟周りもこんなもんだな、別に普通だと思いながらずんずん奥へ。

草だかゴミだかよく分からん柔らかいものを踏みながら、家の玄関?付近に到着した。

廃屋は元々建売の一軒屋という風情。

骨組みはまだしっかりしてるが、窓とドアは、枠ごとどっかいってる。

夜中に懐中電灯で照らすと、家の形をした生き物がぽっかりと口を開けてるような、そんな感じ。

極度のビビリとまではいかないが、それなりに重い空気を感じてじっと外から眺めてた。

かすかに虫の鳴き声が響くだけで車の音なんかしない。

耳鳴りがしそうなほど、今いる場所が狭苦しく感じてきた。

どうしたものか、と友達を目で追うと、何の前触れもなく友達が中に入っていった。>

おいおい、と思わず声かけると「だってチャイムないんだもん」とか訳分からんことを言う。

建売の住宅だけあって、部屋数は大したことない。玄関らしきドア(ないけど)越えると、廊下がまっすぐ。

左手にトイレと風呂。トイレの洗面台は鏡の破片らしきガラスが散乱してて、先客の存在を感じた。

風呂場は白いタイルのせいか綺麗目に見えたが、浴槽にガラクタというかゴミがお湯のかわりにこんもり入っている。

シャワーのホースが壁にきっちりとかかったままなのが妙に印象的だった。

埃と泥まみれの畳が敷かれた和室が二部屋、廊下の突き当たりにリビングだかダイニングだか広めの部屋。

台所のシンクや家具は一切なく、カウンターらしきものからダイニングキッチンってやつかな、と思った。

点々とゴミが散らばるのみで、広いというより侘しいという表現がしっくりくる。

その部屋の壁に2階へ行く階段。手すりのようなものがあってもよさそうなものだが、壊されている。

幅も狭いし床抜けたらいやだしソーっと登ると、友達が鼻で笑ったのがイラっとした。別にビビってはいない。

2階の間取りは6畳程度の部屋が3つ。1階よりゴミやガラクタは少ないが、いかんせん泥や埃で痛んでいる。

この家に人が生活したことがあるのかは疑問だが、合板のはげた安っぽいタンスと、カーペットが敷かれた部屋があった。

他の部屋は家具もなくて見るべきところがなく、自然とそこを物色しはじめた。

床を照らすと、木で編みこんだバスケット?みたいな箱が転がっていた。

ピクニックにサンドイッチとかいれるああいうものを想像してもらうと分かると思う。

太めの木で真四角に作られた、大き目のやつ。

ガラクタとは違う、とってつけたように転がったそれが妙に不気味に感じた。

友達はその部屋に入ると急にテンションをあげて「なんかねーかな」とつぶやきはじめた。

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タンスの一番上の引き出しをつかんで、覗き込んでは閉める。

俺も隣で懐中電灯照らして見てたけど、何もない。

一番下の段にガラス瓶かなんかが1個あるだけ。興ざめである。

続いて俺が床にあるバスケットをに手を伸ばそうとした瞬間、友達が「チョオ」とか叫んで急に蹴りをかました。

こともあろうにバスケットを蹴り飛ばし、なぜかドヤ顔。俺ポカーン。

窓があった空間へバスケットがキリキリと回転しながら外へ消えていくのは何ともシュールだった。

あぶねーよ、って言うと「すまん、つい」とか言う。何がついだ。

撤収ムードになって車に戻る時、ふっと廃屋を振り返ってさっきの部屋を見てみた。

奴が蹴り飛ばしたバスケットが飛んでったのはどの方向だろう、と思ったが、車とは全然違う方向。

結構軽そうに飛んでったし、音もしなかったし、どうせ空っぽなんだろうと思った。

この廃屋は泊り込むほどの価値もないと友達が判断し、日帰りで終了。

前にも書いたが、この友達は当時霊感があることを俺に黙っていた。

芋焼酎にしようか、麦焼酎にしようか、どうでもいいことを真剣に悩んでる友達が、ふと俺を見て「そういや木で編んだ箱蹴り飛ばした廃屋あったよね。あそこビビったわー」と言い出した。

霊感カミングアウトした後、居酒屋の席での話である。

「部屋に入った瞬間、あの中から目がこっち覗いてんだよね。片目だけ。
タンスの方調べて、最後に開けようと思ったんだ。んで、いざと振り返ったらその隙間から指がずぶずぶ出たり入ったりしてんの。目も相変わらずこっち見てる。
いかにも出してくれーって感じだから、お前が開けようとするの見て、やべっと思って蹴った。とんでけーって」

奴はこれ見て思い出したわ、って言って枝豆の入ってる木で編みこんだ皿を指さした。

食べこぼした枝豆ちゃんをテーブルの上に見つけて、デコピンしながらとんでけーとか言ってる友達がなんだかたくましく見えた。

(了)

 

赤いヤッケの男 山の霊異記 [ 安曇 潤平 ]

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