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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

疑惑の兄者

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うちの兄は鬱病になって、大学を何とか卒業したはいいが、現在家で一日中ぼーっとしている。

何を考えてるのか良く分からないし、動きもすごく遅くてはっきり言って気持ち悪い。

……というか怖い。

そんな兄と両親と暮らしている。

ことが起こったのはある深夜のこと。

いつも俺が夜のバイトを終えて帰ってきた時には、すでに両親と兄は寝ている。

その夜も例外ではなく、みんな寝静まっていて、俺もそのまま床に就いた。

ちなみに兄と両親は同じ部屋で寝ていて、俺はその隣の部屋で寝ていて、仕切りの障子は開け放してある。

で、しばらくうつらうつらしていると誰かが起き出しトイレに行った。

足音で兄だと分かった。

まあそんなことは良くあるし気にもしていなかった。

そしてしばらくすると兄が帰ってきて、俺は薄目を開け、なんとなく兄の動きを見ていた。

兄は寝室に入りゆっくりと床に向かう……

と思った瞬間、物凄い速さで音もなくこちらへ迫ってきた。

兄の顔がぴったりと俺の目の前で静止し、俺が「あっ」と思った瞬間にはもう動けなかった。

それと同時に聴覚への刺激があった。

兄の声だ。

何かをぶつぶつと、聞き取れないほど小さな声で言っている……

それはお経だか呪文だか、なんの抑揚もない不気味な調子で、とてつもない恐怖を感じた。

なんだか分からないがそのまま聞いていると気が狂いそうな感覚に襲われたのだ。

このままじゃヤバイ!! そう思った。

体を動かそうとするが、まるで体に筋肉がないかのように、まったく動かない。

声を出そうとしても蚊の鳴くような声で「あー」だか「うー」だかしか出ない。

焦りながらもう一度体を動かそうとすると開放されるかのように体が動き声も出た。

兄はもう俺のそばにいなくて、布団に入るところ。

半分狂ったようになりながら「兄ちゃん、今何かしただろ」と繰り返す。

兄は「何も……」と言うだけ。

恐怖に襲われながらも、すぐに寝入ってしまってその日はなにもなし。

あれから一週間たつがあのときのあの声が今でも忘れられない、まるで俺を呪い殺そうとするような、ジワジワと生気を奪われそうな不気味な声だった。

あの日から兄の無表情の裏に物凄い殺意が潜んでいるような気がしてならない。

最近は寝ても寝ても疲れが取れないし、なんかノイローゼ気味。

車に乗っていても気がついたらぼーっとしていて、一日に一回は急ブレーキを踏んでしまう。

なんだかこのままじゃ本当にいつか死んでしまいそうで……

考えすぎだろうか……

(了)

[出典:http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1182759124]

 

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