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短編 ほんのり怖い話

銅像のお返し

更新日:

俺はあまり霊というものを信じているとはいえません。

453 :あなたのうしろに名無しさんが……:2001/02/21(水) 15:15

なぜかというと、見たことがないからです。

じゃあこんな所くるなと言われそうですが、興味はあるのです。

それは俺が不思議な体験、というより、偶然のタイミングに出くわすことが何回かあったからです。

俺が二十五歳になるまでに、知り合いが何人か亡くなりました。

この年でなくなる知り合いと言うことは、少なくとも老衰というパターンはありません。

事故と言うのが一番多いのですが、その原因が事故だろうがなんだろうが、その後で、

「ひょっとして、あれが原因なんじゃないのか」

といわれる偶然のタイミングに見舞われることが何回かありました。

それを人によってはただの偶然だと無視するし、又ある人は心霊体験だともいうのでしょう。

俺が高校生の頃でした。

バイクに乗って走り回るのが楽しい頃で、毎日ろくに学校にも行かず夜皆で集まって乗り回していました。

グループ内では意味もなく、根性試しが何回となく繰り返されます。

それは誰がいかに速く走れるかだったり、壁に向かってぎりぎりまでブレーキを踏まずにいれるかだったり、けんかの強いのはだれなのかだったり……

その中にはもちろん肝試しもありました。

その時も皆で近くにある有名スポットへ肝試しに行くことになりました。

その心霊スポットには銅像が建っていて、それが動いて見えたりすると事故に遭うとかいう、全国どこにでもあるようなスポットでした。

でも実際仲間内でも事故ったという人間もいて、なかなか評判の場所でした。

今思えばバイク乗りたての高校生が深夜心霊スポットに行ってビビれば事故る確率は高くなるのですが、

まあそれなりに信憑性も感じて事あるごとによく行っていました。

その日は動いているようには見えず、その銅像の前でダラダラしていたのですが、誰かが友人小板橋に、

「おい小板橋、銅像の膝にヘッチン(でこぴんのようなもの)せえや」

と言い出しました。

この銅像にはもうひとつ言い伝えがあって、銅像にやったことはみな自分に返ってくるというものです。

目を触れば目を病気するとか、色々噂がありました。

小板橋はグループの中でも運転は一番にうまかったのですが、心のやさしい奴で少し怖がりな所がありました。

嫌そうでしたがそこはお約束、これをやらないと「根性ないやつ」と言われてしまいます。

小板橋は仕方なく銅像の膝にヘッチンしました。

しかし怖がりながらやったせいか、ヘッチンは軽くかすっただけです。

皆大笑いして「根性なし」を連呼しました。

「もっかいやれ」と皆にせっつかれて、小板橋はもう一度ヘッチンをしました。

今度は大きな鈍い音がしました。

指を強く打ちすぎてうなる小板橋を見て、又皆大笑いです。

「早速呪われてる」だの「もうお返しされてる」だの言いたい放題です。

「くそーっっ!!」小板橋はもうやけくそで、銅像の乗っているコンクリートの台に、相撲でぶつかるように抱きつきました。

でも別段怖いこともおこらず、帰る事になりました。

俺達はバイクにまたがって、一五台くらいで連なって帰りました。

たまたま前を小板橋が走っていました。

大きな道路の急カーブにさしかかったときです。

みな体を右に倒してコーナーを曲がります。

小板橋も右側を倒し始めました。どんどん倒します。

しかし軽く倒せばいいはずなのに、小板橋はぎりぎりまで倒していくのです。

道路に右ひざがかすったかと思うと、小板橋はそのまますべるように転倒しました。

なんてことはない急カーブです。転ぶほどの所ではありません。

ましてや小板橋はグループの中でも一番の運転テクを誇っていました。

最初小板橋が倒しすぎていくときは、わざとふざけているのかと思いました。

しかし現実に、小板橋は膝を抱えてうずくまっています。

皆で駆け寄りましたが、白いものが傷口から見えました。骨です。

「わー救急車呼べ!!」

「小板橋大丈夫かー!!」

皆が叫ぶなか、友人島崎が、「あの銅像の呪いや!」

と叫びました。

「こんな時になに言うてんねん!」

「しゃーかて、見ろや小板橋の膝!!骨の見えてる傷の下に、もう少し浅い傷ついてるやん!!一回目の失敗したヘッチンのぶんやん!!」

皆ぞっとしました。しかし、当の小板橋が

「アホなこと言っとらんとはよ病院つれてけ!!」

と叫んでので、皆われに帰って病院へ向かいました。

その後、そんなことも忘れていたのですが、ふとその事件を思い出す日が来ました。

皆高校を卒業し、それぞれの道を歩みだしていました。

そして意外なことに、小板橋は極道の道を選びました。

俺達の学校でその道を選ぶ奴は決して珍しくはありませんでしたが、心根のやさしい小板橋がその道を選んだのは正直意外でした。

そして、その噂は回って来たのです。

小板橋が勝手にクスリを持ち出し売上を搾取して、今やばい状態だということを。

小板橋がその世界に入ってから、近所で会うことも無くなりました。

今どこに住んでいるのかも知りません。

あれからもう十数年もたった今、たまに地元に帰って昔の友人と飲むことがあっても、だれも小板橋の消息を知らないと言うのです。

他の友人で同じ世界に入った奴らとは連絡が取れたり出来ているのに、まったく取れなのは小板橋だけです。

この十数年の間、誰一人とっていないのです。

その日も地元の奴らと飲んでいました。

酒がまわってきたころ、あのときのメンバーだった島崎がぽつぽつとあの日の話をし始めました。

俺はそれを止めました。島崎の言いたいことは分かっていたからです。

あの日小板橋は最後にやけくそになって、銅像の乗っているコンクリートの台に抱きつきました。

もしそれが小板橋の身に返ってきて、今もコンクリートを抱いていたら……

そう思うと、たまらない気持ちになります。

(了)

 

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