短編 ほんとにあった怖い話

汚部屋【ゆっくり朗読】1600

投稿日:

Sponsord Link

数年前のこと、俺は就職で都会に引っ越した。

615 :本当にあった怖い名無し:2021/08/29(日) 20:44:58.63 ID:uYGpsM7U0.net

生まれてから大学までずっと地方住みだったんではじめての都会暮らしにワクワクしてた。

部屋は会社の借り上げ物件の中から選んだ。

いくつかある中でそこに決めたのは周辺に緑が多かったのと風呂と便所が別だったから
こうして新生活がスタートした。

最初の1年目はよかった、仕事は忙しくなかったし、なんせ色んなことが新鮮だった。

二年目もまだ普通だったと思う、仕事は忙しくなったけど充実してたし、新鮮味はすでになかったけどオタクなので楽しみがあった。

三年目、唐突に雲行きが怪しくなってくる。

不幸とか不運とかそんなんじゃないんだけど、まず仕事がめちゃくちゃ忙しくなった、うちはそれなりに大きい会社なんだけど俺のいる部門は特に業績がよくて、働けば働くほど成果がでるからみんな働きまくって、今思うと集団でランナーズハイみたいになってた。

そうなると部屋にも帰らなくなる、帰っても寝るだけとか着替えるだけ。

念のため書いておくとうちの会社はブラック企業じゃない、むしろホワイト。

当然、会社からは休みを取るよう勧告もきてたけど「うるせー、もっと働かせろ」って勝手にみんな働いてた、もうほんと異常だったと思う。

そんな生活がだいぶ続いて、自分でもやばくね?って思ったのは部屋がすっかり汚部屋になり果てたころだった。

寝る場所(布団はとっくにゴミの下だったんで座イスを倒して寝る場所にしてた)以外は足の踏み場のないゴミの山。

言い訳になるけど、実家も大学の時すんでたところもゴミの分別に厳しくなかったのでゴミの分別がまずできなかった。

だしたはずのゴミ袋がそのまま残されてるって経験をはじめてしたよ。

なんとか生ごみだけはだしたけどそれ以外は分別し直す時間も気力もなくて放置。

この頃にはさすがに会社からもストップがかかってて業務の見直しがはじまってた。

だから毎日、部屋には帰れるようになってたんだけど、そうなるとどうなると思う?
ゴミが増えるんだよ、生活してるんだから当たり前なんだけど。

それでも生ごみさえ出しとけば匂いも酷くないし、別にいいかって気にせず生活してた。
別に誰か客がくるわけでもないしな。

彼女はいないし、仲のいい同僚はいたけど互いの家を行き来するような仲じゃなかったし
あとまだ忙しいといえば忙しかった、本格的な業務改善はこれからって段階で、量こそへったけどそれでも仕事は忙しかった。

毎日、汚部屋に帰るようになってからしばらくしてその異変は起きた。

夜中にナニカが部屋を横切ってくんだよ。

俺は小さいころからたまに変なものを見たり感じたりすることがあった。

怖い思いも何度かしてるんだけど、そのナニカは別格だった。

なんていうのかな「あ、これだめなやつだ」ってすぐわかった。

ナニカはまずカタチがない。

もやもやとしたものが大きくなったり小さくなったりしながらウゾウゾしてる。

雲とかガスとか靄みたいかと思えば固まって実態っぽくなったりもする。

生き物とか動物みたいな気配もあるけど、人間っぽさを感じる時もあるし、無機物みたいに思えたりもする。

色も黒かとおもえば灰色だったり紫とか赤とかがぐちゃぐちゃに混ざり合ってるようにも見える。

おばけとか霊とかじゃなくて、もうほんとナニカとしかいいようがない。

そんなナニカが俺の部屋の窓からトイレの方へ抜けていくんだ、毎晩。

時間はきまって日付がかわった後すぐくらい。

最初に遭遇した時は「なんかやべーのがいた」って心臓がバクバクした。

次にそれが毎晩のことだとわかって「うそだろ」って泣きたくなった。

いつからだ?いつからあんなのが通るようになったんだ?

幸い、ナニカは俺にかまうことなく素通りしていく。

でもそれがいつまでそうなるかはわからない、そもそもなんであんなのが通るようになったのかもわからない。

住みはじめから2年目までは確かにいなかった。

ということは家に帰らなくなった頃だろう。

思い当たる節はぜんぜんない、というか近所の事情なんていっさいわからない。

大きな事故や事件なんてもんがなかった、とかそれくらいだ。

わからない、わからない、こわい、わからない、なんでおれがこんな目に
俺はナニカがいなくなる時間までゲーセンやパチンコで過ごすようになった。

なんていうか、なにかをする気力がなかったんだ。

会社は忙しかったけど不要の残業は禁止されてたし、他に行く当てもないし、かといってあのナニカが通る部屋へ戻るのも嫌だし。

いまにして思えばだいぶ参ってたんだと思う。

そんな生活が続いていたところへ、実家の姉から遊びにいってもいいかという連絡がきた。

姉も俺とおなじオタクなんだけど俺と違ってめちゃくちゃ行動派。

有言即実行、行動力の塊みたいな人。

特別仲が良いというわけではないがオタクな部分が共通してるので気心のしれた相手だ。
なんで姉ならいいかとOKした、たぶん両親や妹なら断ってたと思う。

姉の目的は日曜のイベントだが、金土とこっち在住の友達とも遊ぶ予定とのこと、木曜に仕事が終わってから夜行バスで出発し金曜の朝に着くということだった。

俺はなんとなく金曜の午前に半休をとった。

なんていうか朝のうちに姉とあっておいて直接説明した方が面倒がないと思ったのだ。

こうして、姉が来た。

姉は迎えいった俺を「わざわざ休まなくてもよかったのに、ありがとね」と労わってくれた。

俺はあれこれ電話やメールで説明するのが面倒だったことと、休みがあまりまくってるから別にいいといった。

最寄り駅から部屋までは15分かからないくらいの1本道、他愛もない話をしながら部屋へ着いて

「は???え???」

ドアを開けた瞬間、めちゃくちゃ驚かれた。

そりゃ弟の部屋が足の踏み場のない汚部屋だったら驚くよな。

言い訳すると、姉がくるということでいちおう、今までよりはきれいにしたつもりだった、自分なりに。

「え?ぼくちゃん、これどうしたん?なんで???」

「あー、仕事が忙しくて」

「いやいや、忙しいにしたって限度があるでしょ」

姉はそれから健康に悪いとかちゃんと寝れているのかとか借りてる部屋なんだから綺麗にしなきゃとか、なんていうか、直接俺を責めるわけじゃないけれど耳にいたいことをあれこれ気にしだした。

姉に悪気がないことはわかっていたし、俺の自業自得なんだけど、図星だからこそイライラしはじめた。

俺だって別に汚そうと思って汚したわけじゃない、こんな部屋にしたくてしたんじゃない。

精いっぱい仕事をして、毎日をがんばって生きてただけだ、なのになんで俺がこんな目に
グルグルとそんな考えが積もりに積もって気が付くと俺はキレていた。

「うるせー!勝手にきて文句いうな、今からホテルでもなんでもとればいいだろ!」

俺はそういって万札1枚と部屋の合鍵を置いて出勤した。

会社についていつものように業務をこなしてたら、だんだんと冷静になってきた。

姉はあれからどうしたのだろう。

姉は真面目な性格なので、ホテルにいくとは思えない、友達と遊ぶ予定があるといっていたからそれは守るにしても、他の時間は部屋の片づけをしたりするんじゃないだろうか、いや絶対にそうするだろう。

やばい、俺はナニカについてはいっさい話していない。

もっとも、姉は俺とちがって霊感はゼロらしいのでナニカをみることもないのかもしれないが。

でもあの異常性は霊感のあるなしで変わるともちょっと思えなかった。

俺は定時とはいわないがいつもよりだいぶ早い時間、22時頃に仕事を切り上げた。

そうして部屋に戻ると

「おかえり、遅くまでおつかれさま」

姉はいた。

部屋はほぼ片付いていた。

俺はだいぶ混乱した。

正直、1日や2日で片付く部屋じゃなかったはずだ。

なのに姉は最後の仕上げとばかりにフローリングを水拭きしている。

「ゴミ、今日だせるやつはだしたけどだせなかったやつはベランダにだしてあるよ」

そういわれベランダを見ると20近いゴミ袋の山ができていた。

「あと、あの1万で掃除機買ったから」

確かに見慣れない掃除機が1つあった、電気屋は駅前にある。

姉は、友達と遊ぶ約束を断って1日がかりで部屋を片付けてくれた。

俺はなんにもいえなかった、ゴメンもありがとうもいえなかった。

そんな俺を気にすることなく、姉は夕飯がまだだというので近くのコンビニまで買い出しに行こうという。

俺もまだだったので一緒に行くことになった。

「さすが都会、ごみの分別細かすぎるわ」

「納豆のパックって乾くと匂いがなくなるんだね、片付けちょっと楽だった」

コンビニで夕飯や必要品を買い込んで、姉のゴミ奮闘記を聞きながら戻る。

家の鍵を開けたところで俺は唐突に思い出した。

そうだ、ナニカのでる時間だ。

時計を見る、時間はまさに日付がかわる少し前。

このままだとナニカと鉢合わせしてしまう、説明をする時間もない。

というか場所も悪い、玄関はちょうどナニカの進行方向の真ん中にある。

俺は姉に買い忘れがあるからコンビニへ戻ろうといった。

しかし姉は「弟だけいっといでよ」とさっさと部屋にはいってしまった。

俺は慌てて姉を追ってはいり、ナニカが通る時間だと伝えた。

「え、なにそれ。まじで?!」

姉は霊感はないが幽霊は信じている、というかむしろ怖い話とか大好きだ。

そうこうしているうちに日付がかわった。

ナニカの通る時間だ。

こうなると綺麗に片付いた部屋が心細くなってくる。

乱雑にモノが積み重なっていた汚部屋はあれはあれで隠れ場所がたくさんあるようで安心できた。

だが今、部屋の中はスッキリして部屋の隅々まで明るい。

俺と姉はじっと身動きもとれず、固まっていた。

10分、20分…それ以上

「なんもでないじゃん」

「あれ?」

「もう!」

ナニカはでなかった。

プリプリと怒る姉、ポカーンと何が起こったか混乱している俺。

姉は怒りながら夕飯を食べ、明日の準備をし、風呂に入ると、さっさと寝てしまった。

どういうこと?なんで?なんででない?

あんなに毎晩毎晩通ってたのに、なんで今日はでないんだ?

俺は混乱したまま、数か月ぶりに部屋の布団で寝た。

次の日、ゴミだししながらふと思った、そうかゴミが邪魔をして入れなかったのかもしれない、と。

ならゴミ袋がなくなっても何かでバリケードを作れば入ってこないのかも、と俺はナニカ対策を考え始めた。

けれどこれは無駄に終わる。

この日を境にナニカはでなくなった。

姉が帰り、ゴミ袋がなくなってもでなかった。

俺はしばらくの間は警戒したけど、結局ナニカが現れることはなかった。

数年たった今でも、ナニカは現れないし、できればもう二度と現れて欲しくない。

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, ほんとにあった怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.