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病院の怪談Ⅰ

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小学生の時か中学生の時かの話。

うちの父ちゃんが最初に心筋梗塞で倒れたときに入院していた、近所の大きな病院に見舞いに行ったときのこと。

うちの父ちゃんが入院していたのは一番上の階で、重篤患者(病状が非常に重いこと)が入るところだったらしい。

ほんで、見舞いに何回か通っていたんだけど、一度、休日か土曜日か、覚えていないけど、病院にひとけのない時に行ったことがある。

父ちゃんにジュースもらって、一時間ばかり話して帰った。病室は5階で、古びたエレベータに乗る。

重苦しい音がして、3階で停まった。自分は3階のボタンを押していなかったので、誰か乗るのかな?と思っていたら扉が開いた。

そのフロアは真っ暗で、非常灯の緑色の灯りがぼんやりと灯っているのが強烈に印象に残っている。

それよりなにより、エレベータを待っていたのは人間じゃなくて、救急ストレッチャーだった(金属製のキャスター付きのベッドのような担架のような、救急で入った人を運ぶやつ)

その上には、人と同じくらいの大きさの、中身が入った真っ黒いビニール袋。昔のごみ袋みたいなね。

何が起きたのかよく分からないまま、

「あれ?だれもいらっしゃいませんか?」

と、あたりを見渡しても誰もいない。返事もない。

そのストレッチャーをもう一度チラっと見たら、ふと急に恐ろしくなって『閉』ボタンを乱打して扉を閉め、家へ帰った。

……なんてことがあった。

父ちゃんはその病院にいたころ、明け方に小用を足しに出て、あっち側の人とお手洗いをともにしたそうな。

父ちゃんがお手洗いをともにしたあちら側の人。

会釈を交わしたりして、普通の人と変わらないのにいいしれない違和感があって、それが『影がない』ことだったそうな。

顔色も悪かったけど、「病人なんざみんな顔色悪いからなあ」といって笑っていたっけ。

今は病院に出入りする仕事してるけど、看護師さんとかが笑い話みたいに「〇〇さんが出るね」って話を普通にしてる。

病院ってやっぱり、そういう事もあるんだね。

(了)

 

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