短編 ほんのり怖い話

白装束の女#1058

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初めて変な経験をしたのが四、五歳。もう三十年以上前の話をしてみる。

423: 本当にあった怖い名無し 2012/04/21(土) 22:19:17.11 ID:HVtSpQnT0

父親は離婚のためいなくて、六畳一間のアパートに母親と二人暮しだった。

風呂がなく、毎晩近所の銭湯に行ってた。

いつもの通る道には、その町では割と有名な大きな柳の木がある。

ある日の帰り、その木の根元に、白装束の女の人が立っていた。

じっと俺のほうを見ているのだが、怖いとかそういう気持ちはなかった。

母親が突然俺の手を握って

「まーくん、走って帰ろうか」と突然走り出した。

俺の記憶はそこまで。

最近になって母親にその話をした。

「多分俺には幽霊が見えてたんだわ」と話すと、母親は顔が真顔になった。

そのときの出来事は母親にも鮮明に残ってたようだ。というかリアルタイムで現在も苦しめられてると。

あの時、走ってアパートに戻ったのだが、ドアを開けて中に入ったら、電気のついてない部屋の中に、柳の木の下に居た、白装束の女が待ち構えていたのだ。

柳の木の下に立っていた白装束の女性は母親にも見えていたらしいのだが、この世の者ではないことが即座にわかったらしく走って帰ったらしかった。

部屋の中の白装束の女を見た途端、母親は気を失った。

その間の俺は、近くに祖母が住んでいたので、祖母の家に行ったらしく「ママ死んだ!」って祖母に伝えたらしい。

そして慌てて祖母は学生だった叔母に俺を託し、アパートへ走った。

母親はアパートには姿がなかったらしく、二週間後の三月二十日に帰ってきたらしい。

母親と祖母は色々とその間のことを話したらしいのだが、祖母から強烈な話を聞かされることになる。

祖母が十歳にも満たない頃、同じ柳の木の下で白装束の女を見ていた。

しかも、その女は走って追いかけてくるのでひたすら走って逃げ回ったと。

川を泳いで渡り、山の中を走り、やっと姿が見えなくなって家に戻ったら、二週間が経過していたらしい。

祖母は二、三時間くらいの感覚だったらしいし、その間食事どころか排泄さえもしていない。

母親がいなくなって二週間、母親もまったく同じ体験をしていたようだ。

母親はそれから毎月二十日の未明に必ず、「白装束の女」に追いかけられる夢を見ることとなった。

祖母も昔の経験以来、毎月二十日に必ず同じ夢を見ていたのだが、母親がその夢を見て以来、ぱったりと見なくなってしまったらしい。

母親はその後再婚して、俺も一緒に住んでる土地もはるか遠くに移ってしまった。

祖母も十五年前くらいに死んだので、実家はなくなったが、墓だけはあるので1,2年に一回は墓参りに行く。

今年も三月末に、女房と六歳になる娘を連れて墓参りに行った。

母親は体調が悪いとのことで一緒には行かなかった。

そのときに、気持ち的にはできるだけあの柳の木を見たくないと思っていたが、どうしても通ることになった。

俺はなるべく視界に柳の木を入れないようにしていた。

柳を木を通り過ぎたところで、後部座席に乗る娘が言った。

「あの女の人何してるんかね。あんな白い薄い服を着て寒くないのかな」

俺は、「え?」とバックミラーを見たら、ちょうど柳の木が見えていた。

しかし俺の目には何も見えない。

娘はさらに言う。

「わぁ。走って追いかけてくるよ~あぶなーい」

俺はアクセルを踏み込み速度を上げた。

女房が「誰もいないよ?娘ちゃん何言ってるの~」と言うと「もういないよ~」と娘。

すごく嫌な予感がしたのだが、娘は行方不明にするわけにはいかない。

祖母や母親のときとは状況が違うので、何もない。大丈夫と言い聞かせた。

そして今朝のことだ。

寝ていた俺の携帯が鳴って目が覚めた。

母親からだ。母親は興奮気味に言う。

「今日は夢見の日だから、覚悟して寝たのだけど、夢は見なかったのよ。ただね……、あの女が何なのか少しだけわかったのよ」

聞くと、女は血縁のある者らしい。いわゆるご先祖様というのかな。

ひどく苦しい目に合わされたようで、姉に恨み言を言いながら絶命したらしい。

根拠は何もないがそういうイメージが頭に浮かんだらしい。

「夢を見なかったからだけど、嫁ちゃんや孫ちゃんが心配。どうも女が気にいらないようだから。嫁ちゃんは大丈夫?孫ちゃんは?なにも変わり事ない?」

「あるわけないだろ!」と電話を切った。

そして体を起こしてコーヒーを飲んでいたら、娘が泣きながら起きてきた。

女房があやしながら「どうしたの~?怖い夢でも見たのかな」と言うと「白い服来た女の人が追いかけてきて怖かったの~」と泣きじゃくった。

(了)

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